「監督の慈悲を感じる。」ウインド・リバー こたーさんの映画レビュー(感想・評価)
監督の慈悲を感じる。
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アメリカの闇は深い。そう表現せざるを得ない。
ネイティブアメリカンが追いやられた、過酷な雪山の地。ここではいちアメリカ国民としての人権は存在しない。
冒頭から女性の必死な逃亡シーンで始まり、最後まで心に影を落とすようなシーンで終わる。殺人事件の捜査に、FBIの捜査官、地元のハンター、保安官だけで捜査しなくてはいけない、というところが既に異質。主人公を始め、ここに出てくる登場人物はどこか後ろ向きな面持ちだ。
この映画は徹底的に被害者や残された家族の様子、ネイティブアメリカンに与えられる理不尽な暴力を描いている。
救いがあるとすれば、犯人への罰がしっかり与えられたところ、残された家族への心ばかりの救済、外から来た捜査官が持っていた思いやりと正義の心、だろうか。
こうした結末にしたのは監督の慈悲のように感じる。とはいえ、現実では数えきれない、救えない事件が起こっていたことを考えると本当に心に来る。
強大な偏見や多数派に個人では勝てるはずもない。だがこの地で生きるには強者でなくては生き残れない。
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