「一面雪の映画は大体面白い」ウインド・リバー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
一面雪の映画は大体面白い
アメリカの闇をあぶり出すタイプの作品だということは知っていたし、ネイティブアメリカンの女性の遺体が発見されるという冒頭、そしてネイティブアメリカン居留地であるウィンドリバーという舞台。これはネイティブアメリカンと白人の対立に関するストーリーだろうと思っていた。
しかし表面的にはそのようなものはほとんどなく、自分の思い違いかなと感じた瞬間のラストでネイティブアメリカン女性の失踪についてのテキスト。あれ?やっぱりネイティブアメリカンは関係しているみたいだけどわからなかったなあ。という事で少しばかり調べてみた。
まずは、ネイティブアメリカンが僻地の居留地へ追いやられたという歴史。居留地の中は自治権のようなものが与えられ一見保護されているように思えるが要は連邦政府から放置されているのだ。
人がいなくなっても捜査はされない。アメリカのどこにいても受けられるはずの権利が受けられない。雪と静寂しかない土地に無理やり住まわせて、あとは知らんというわけだ。だから失踪者が増える。
アメリカでは居留地の現実を知り観客に衝撃が走ったようだが、日本人の自分にはあまりピンとこなくて、そういうものなのかと総スルーしてしまっていた。
適当に描いた死に化粧に二重で泣けるはずだったのに、知識不足でガツンとこなかったのは残念だったが、一つ賢くなったのでよしとしよう。
ここまでネイティブアメリカン居留地についてだけを書いたが、本作が素晴らしく巧妙な脚本なのはその事を無視してもサスペンス作品としてちゃんと面白いことにある。
一面雪の町で女性の遺体が発見され、それを捜査する。いや、捜査というよりは獲物を追い詰めるハンターの狩り。そして大事な人を亡くした人間の心のあり方を描く。
最高とまではいかないけれど中々見応えのあるサスペンスでした。
あとは、マイナス20度で全力疾走してはいけないと学んだ。これは有益。