「未だなく変わることの無い現実」ウインド・リバー 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
未だなく変わることの無い現実
テイラー・シェリダン監督・脚本のスリラー作品。
劇場に間に合わなかった作品で、忘れた頃にサブスクで巡り合うの嬉しいですね。
周りを厳寒の雪に囲まれた町を舞台に、ゆっくりと静かに進む物語。
ネイティブ・アメリカンとを取り巻く、米社会の闇を描いていました。
シェリダン脚本の「ボーダーライン」もそうだけど、やはりテーマに重さを感じますね。
エリザベス・オルセンは寒いだけの世界に華を添えてましたし、やはりジェレミー・レナーの存在感が大きいですね。
ここが閉ざされた厳しい世界である事を、その無骨な表情で伝えていました。
ネイティブアメリカンの少女の死によって始まる捜査。
ゆっくりと真実に近づいていくのですが、近づけば近づくほど物悲しさが増していくんですね。
中盤以降は緊張感が増して展開も早くなるので、緩急をうまく使っていたと思います。
そして起こるべきして起こった銃撃戦。
ここではハンターの本領も発揮して、恐ろしい戦闘力を見せます。もうハンターというよりスナイパーですね。
迎えたラストの背中には、少しだけ希望が見えた気がしました。
しかしエンドロールで流れる
「インディアンの失踪者の統計調査はなく、その数も不明のまま。」
この一文は本当に苦しかったです。
未だなく変わることの無い現実を突きつけられた、悲しさが残る作品でした。
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