「陸の孤島で人間の本性が露わに」ウインド・リバー REXさんの映画レビュー(感想・評価)
陸の孤島で人間の本性が露わに
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人間には「根」が必要だと誰がいったか。
この映画にはその「根」を無くした者が多く登場する。
娘を亡くし他の家族すら失った者、民族の生きた土地を奪われアイデンティティを無くしたもの、自分を見失い彷徨う者…。
極寒の僻地という陸の孤島は、そういった精神の分断も生むものなのだろうか。容易に無法地帯と化すことが、恐ろしかった。
雪や自然に閉ざされ押し込められた人間達の、行き場のない恐怖にも似た鬱憤が吐き出された形で少女を襲う。
しかし同じく娘を殺されたにも関わらず、その場所に生きることを従容として受けとめる主役のコリー。その姿はまるで動物のように淡々として力強く、自然的だ。
自然の猛威に間接的に殺された形となった少女の、最後まで諦めず生き延びようとした姿と、それに対比して少女を嬲りものにした男の軟弱さが際だつ。自分の犯した罪からも、人生からも逃げ出すその弱さ。コリーに制裁を加えられる姿はあまりに哀れ。
追悼の儀式を忘れたネイティブアメリカンの姿も、人生の痛みにもまして、失われた歴史の重みを感じさせ痛々しかった。
事件自体は単純だが、ひどく苦しい、苦い映画だった。どんな土地であれ、責任転嫁せず、自分を見失わず生きることのしんどさが重くのしかかった。
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