「土地に縛られるか、土地と生きるか」ウインド・リバー 幸ぴこリンさんの映画レビュー(感想・評価)
土地に縛られるか、土地と生きるか
雪深く広大な先住民保留地でその土地に縛られながら生きるか、その土地を世界と受け止めて生きる事を選び、己の感情と闘うか。悟りに近い究極の選択に取り巻かれある者は自暴自棄になりヤク漬けとなり、ある者はその土地だからこそ起きた事件の悲しみと向き合い、またある者はその生活に耐えられず言い訳に罪を犯す。『ボーダーライン』に続き、アメリカの闇がまたひとつ見てとれる作品。日本に住む自分にとって一切シンパシーを得られない環境にも関わらず、手にも背中にも汗をかいて鼓動が早まる臨場感はシェリダン監督の作品でしか最近は味わえないのではなかろうか。一発一発の銃声が重く、雪にまみれた真っ白な銀世界で足を取られながら歩くシーンにすら本気で心配の念を抱いてしまう。
若くフレッシュで、別段有能ではないが感情豊かで人々の気持ちに寄り添うFBIのジェーン(オルセン)が凄く良い演技をしていた。度々涙を堪えてきた彼女がラストに見せる咽び泣きにはこっちの涙腺も糸が切れるよね。悲しくて虚しく、胸糞悪いストーリーだが、ジェレミー・レナー演じる主人公の生々しい父親像と、同じ悲しみを味わう友人に対する教えの台詞数々に救われる。
こういうクライムサスペンスを映画館で観て楽しめるかな、とオープニングロールの瞬間不安に思ったけれども、終わってみると劇場で観にこれて良かったと真逆に感じられた。
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