「社会派映画としては未熟だが・・・」デイアンドナイト kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
社会派映画としては未熟だが・・・
人間の二面性、善と悪、そして贖罪というテーマが重くのしかかってくる内容でした。仮にこれを社会派作品として成り立たせるには、地方都市における報道機関などの独裁的存在や政治家、警察との癒着まで掘り下げなければならなかっただろうし、そこまで踏み込んでしまったら詰め込み過ぎ感でいっぱいになってしまうと思われる。しかし、大人になるにつれ善と悪の違いは徐々に判ってくるものだし、社会経験の少ない若者にとっては入門書となるような映画だったかもしれません。悪に手を染めるという点だけなら『ギャングース』の方が良かった。
映画館に出かける前に、『万引き家族』のレビューを眺めていたら、「万引きという行為を推奨するかのような・・・云々」といった記事を偶然読んでしまいました。多分、そこまで言う方ならこの映画は観ることができないのでしょうね。車の窃盗団なんて高級車を狙うんじゃなくて、平均的な社会人が乗るハイブリットカーを狙ったりしてるし、許しがたいものがありました。テーマとしての“善と悪”はハッキリしすぎていたのです。“正義”という言葉は主人公・阿部進之介にも「大切な人を守ること」だと語らせているし、わかりやすいものでした。それよりは映画の中で田中哲司のふりかざす正義をもっと主張すれば、正義についても意見を飛び交わすことができたのでしょう。
それらよりも重く感じられたのが復讐と贖罪。安藤政信が悪に手を染めてまでして養護施設を守るのも重い贖罪があったから。阿部に復讐を勧めるでもなく、淡々と犯罪を経験させる不思議な性格だとも感じた。そんな不気味な性格のまま施設を運営するから奈々ちゃんは空を緑色にしてしまうんやろ!と突っ込んでみたくなるほどでした。
そんな分かり易さの中、安藤の死の原因だけが謎のまま。どう考えても「君の父親を殺したのは俺なんだ」と告白して、「いやーー」と奈々が彼を突き飛ばしてしまった雰囲気なのだが、実際はどうだったのか。阿部がそのまま彼女の犯した罪をも背負って服役するかのような想像が成り立ってしまうのだが、そうなったらそうなったで、出所してから奈々と恋人関係にまで発展しそうだ。
個人的には、昼間は市の職員、夜は不法外国人労働者の集金人という小西真奈美が良かったです(笑)