劇場公開日 2019年6月14日

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「自由に、自分らしく生きる幸せ」ガラスの城の約束 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自由に、自分らしく生きる幸せ

2019年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

ヒトは自由を欲する
だが必ずしも 自由 = 幸福 と言えるのだろうか…

「人間は自由の刑に処せられている」

20世紀を代表する思想家、
ジャン=ポール・サルトルの言葉ですが
【実存主義】という、氏を代表する指針があります。

在るものをありのままに受け入れ
目の前にある事象を他人に任せるのではなく
進んで自らが引き受ける

…といった思想だったと思います、端的にですが。

ここからは概説書を引用して
わたしの言葉に代えさせて頂きますが…

「子供が大人になったら自立して生きなさい。
 そして責任を他人になすりつけたりせず
 自分の間違いを素直に認めなさい。」

それと同時に、

「自分はどこに向かって生きて行くのか?
 という人生最大の問題を自己責任で
 取り組まねばならない」

…と、サルトルは【実存主義】のなかで
「人間は自由の刑に処せられている」
という言葉で表現しています。

これほどの重荷があるでしょうか…

前置きが長くなりましたが
本作『ガラスの城の約束』は
いわゆる《反面教師モノ》と言ってしまえば
それまでなんですが…

どうしようもない父親のはずなのに
彼のくちをついて出る言葉には説得力がある!
それはなぜか?
言っている言葉が事実だと当の本人が
信じて疑わなかったからです!
そのときだけは…

その「自分を信じるオレを信じろ!」の精神?が
子供たちに浸透してき、転じて
「オレが信じるお前を信じろ!」とばかりに
感性と才能を育み、子供たちが自信を持ち得ることに
繋がったに違いない。まさに反面教師!

実行力・持続力がないだけで
言葉と精神に偽りのない愛を感じていたからこそ
子供たちも完全には嫌いになれない…

「信じたい、でも…」「嫌い、でも…」
この二律背反が、家族のバランスが
常に揺らいでいるので、ときに笑い合い
ときにケンカもしたりする。

そうして時が経ち子供たちも大人へと
成長するにつれ、親離れをより強く促す。
これまさに反面教師!

「あの頃は酷いもんだったよ!でもさぁ…」と
年月を経て、時間が辛い思い出に
“補正”をかけてくれる。
美談になったり笑い話になったりと
語り合える家族の存在が、強い絆の証を
今になって感じられたら
結果、人生は幸福であったと思っても、いいよね?

あと父親とジャネットが言っていた「悪魔」が
なにを象徴していたのか考えてみました。

幸福を得るために、自由に生きようとしたとき
つい世間の目が気になって自分の信じた道を
まっすぐ歩けなくなる
萎縮してしまう、邪魔してしまう、
そんな〈他人の目を内面化してしまう心〉を
言っていたのかなと思いました!

“ 型破り ”で “ 形無し ” な父親が
“ 型にハマる ” 生き方をするなと
自虐的・可逆的に教えてくれた作品ですね。

最近の洋画って最後に現実パート、
実録ドキュメント部分をインサート
するのが流行りなのかしら?

ナオミ・ワッツの母親役が画家だったこともあり
作中にゴッホ、ピカソ、クリムト
抽象主義、リアリズム、MOMAとか
美術系のアイテムがわたしの気を惹きました。

わたし家族モノには弱いのよね…
つい感情が高ぶって
色々と長々と語ってしまう…
わたしも一度でいいから
親と真剣にぶつかって
ケンカしてみたかったな…

野々原 ポコタ