鈴木家の嘘のレビュー・感想・評価
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車の窓にみえる家族の再生
どうして車の窓をなおさないのか?
それはきっと浩一と一緒に傷ついていたいのだ。痛みを共有したいのだ。綺麗に直して、何事もなかったかのように、平気なように、したくないのだ。忘れたくないのだ。
と思ったそのとき、「ひょっとして!?」と気になって、エンディングの皆で車でイヴに会いに行くシーンをもう一度観てみると、、、やはり車の窓が直っていた。
なんとも見事な心象表現。思わず唸る。
俳優陣の演技に圧倒される
・突如車から飛び降りて発狂しながら逃げる浩一(加瀬)と、それをみて無力感にむせび泣く父(岸部)。
・地獄の現場に居合わせた富美の吐露を聞いた時の父親の表情(岸部)。
・富美(木竜)が新体操の練習の途中に、その情景を思い出し感情が爆発するシーン。
・兄の手紙の原案を書いたあと、無表情のままデリートしていく富美(木竜)。
・息子の現場を目撃し、半狂乱になりながらロープを切ろうとする母、悠子のシーン(原)。
・入水しながら兄への想いと悔恨を叫ぶ富美(木竜)。
・明るくて優しい叔父(大森南朋)。いいわー。温かさが滲み出ている。
・キツイこと言うけど家族に寄り添う叔母(岸本)も。雨にびしょ濡れになりながら悠子に傘を差しだすシーンなんてほんと。
・そして「大切な人を突然亡くした会」の参加者たち。同じ境遇だからこそ生まれる、馴れ合いではない温かさが確かにあった。
そんな中でも、なんといっても富美を演じた木竜麻生の演技に尽きる。
引きこもって、親の愛や注意を引こうとする兄。さらにその自死によってそれが強固なものになってしまったことへの怒りが湧き上がってくる過程の演技。
そして、兄に対して暴言を吐いたことへの悔恨の演技。根底にある兄への愛--。
静けさの中に生々しい感情を滲ませる演技、木竜麻生。こんな俳優がいたんだ。(要チェックだ。)
↓下記は印象に残った富美の台詞。
「違うよ。お兄ちゃんの命の値段だよ。
----お父さんさ。よくお兄ちゃんの部屋に入れるよね。
そっか。お父さん見てないもんね、お兄ちゃんの最期。
そこだよ。そこでお兄ちゃん死んでたんだよ。
私は思い出すんだよ。毎日、毎日、毎日!
もう元になんか戻れないよ!」
「(お兄ちゃんは)わかってたんでしょ?
お母さんが一番最初に見つけるって。
わかっててやったんでしょ? 酷いよ。
でもお兄ちゃん。
お母さんは後を追わなかったよ。死ななかったよ。
生きたの。強かったの!
お母さん、お兄ちゃんが死んだこと覚えてない。
アルゼンチンで生きてると思ってる。
ねえ、くやしい?
大好きなお母さんに悲しんでもらえなくて悲しい?
ざまあみろ!
わたしは、お母さんにお兄ちゃんが自殺したこと絶対言わないから!
ねえ?なんで私に保険金なんか残したの? ねえ、なんで?
許して欲しいってこと?それとも忘れないでくれってこと?
お兄ちゃんは私のことが嫌いだもんね! 残酷だね。
いいよ。
私はお兄ちゃんのこと許さないから。
私はお兄ちゃんのこと許さない。
ぜんぶぜんぶ、忘れてやる。ぜんぶ忘れてやる!
それで、、、それでもう、お兄ちゃんの思い通りになんか絶対にさせない!
絶対にさせないから! 」
「謝りたい、、、。
お兄ちゃんに謝りたいの!
わたし、お兄ちゃんに会いたいの!」
自死は残された家族に対して地獄だ。
※「浩一は鬱じゃない。鬱で死んだんじゃない。」息子が鬱と認めたくない体裁重視な害父なのかな?と思ったが、 あとから浩一が「俺は病気じゃない!」と言っていた場面があったのでその言葉を守ったのだな、と気付いた。父の深い愛を感じた。
※直接的でなく、間接的に家族の慟哭を訴えてくる。コメディ要素を入れたからこそ、余計に悲しみが迫ってくる。脚本と演出が素晴らしい。
※イヴは見られずか!
右へ左へ揺れながらも力強く前に進んでいく家族の肖像
冒頭は怖いくらい深刻だ。なぜこんなことになったのか。何が原因なのか。どうしてこんな情け容赦のない事態が人生に起こり得るのか。あらゆる意味で観る者に動揺をもたらす場面だ。そこで見せる部分と、見せない部分とが、のちの構成に大きく反映されるとは思いもしなかった。かと思えば、冒頭の深刻さを抜けると今度は岸部一徳の飄々とした佇まいと、長男の不在にまつわる「嘘」をめぐって、映画はスラップスティックにも近いコメディの様相へと振り切れる瞬間がある。誰もが”答え”を求めて、すがるようにして右へ左へと振り子を揺らす。時にその演出が煩わしく、もどかしく感じられたのも事実だが、本作を観終わって感じるのは、その余白を経て大きな蛇行を描くように心の旅路を見つめたからこそ、この映画は他にはない深遠なものを、逃げることなく、ごまかすことなく、掴み取ったのではないかということだ。本作でデビューした野尻監督の今後が楽しみだ。
若き才能とベテラン勢の理想的な融合。木竜麻生の主演作を切望
野尻克己の劇場映画監督デビュー作ながら驚くべき完成度。自身の体験を投影した脚本は、緻密な構成で悲劇と喜劇を二本分観たかのような別格の満足感をもたらす。
引きこもりの長男が自死し、残された家族の喪失感と後悔で切なくさせ、短期の記憶をなくした母のために無理筋な嘘をつくドタバタで穏やかに笑わせる。演出の絶妙なバランス感覚。地球のほぼ裏側のアルゼンチンという突拍子のなさ、ラテンの陽気さもいい味だ。
岸部一徳、原日出子、大森南朋ら演技派がそれぞれ持ち味を発揮しているが、とりわけ長女役の木竜麻生が素晴らしい。グリーフケアの集まりで手紙を読むシーンでの神がかった感情表現は涙なしには見られない。新体操の経験者であり、素敵なパフォーマンスでも魅せる。彼女が本格的に動ける年齢のうちに、そのスキルを活かした主演映画を観たいと切に願う。
野尻克己監督はこれが初監督作品らしい。 いろいろな監督の助監督をやった人らしい。 この映画で野尻監督、木竜麻生 、原日出子らは国内外の多くの映画賞を受賞した。
動画配信で映画「鈴木家の嘘」を見た。
2018年製作/133分/PG12/日本
配給:松竹ブロードキャスティング、ビターズ・エンド
劇場公開日:2018年11月16日
岸部一徳(鈴木幸男)
原日出子(鈴木悠子)
木竜麻生(鈴木富美)
加瀬亮(鈴木浩一)
岸本加世子(鈴木君子)
大森南朋(吉野博)
宇野祥平(北別府さん)
大学を出てから3年間引き籠っていた鈴木浩一が首吊り自殺で命を絶った。
買物から帰った母親、悠子は首を吊った浩一を発見、パニックになる。
悠子は浩一の首のロープを切ろうと包丁を持ち出したが、
ロープは切れず、自分の手首を傷つけた。
結局、仰向けに倒れこんだ悠子はショックで気を失い倒れてしまう。
2か月近く気を失っていた悠子が突然目を覚ます。
悠子は不思議そうに「浩一は?」と尋ねた。
悠子はショックのあまり浩一が死んだという記憶を失っていた。
長女の富美はとっさに
「お兄ちゃんは引きこもりをやめてアルゼンチンに行った」
と言ってしまった。
アルゼンチンは悠子の弟・博が住んでいる。
浩一はそこで仕事を手伝っているということにした。
ショックから記憶が戻らない悠子のために家族全員を巻き込んだアリバイ作りが始まった。
幸男はなぜか助手席の窓が割れたままのJZX91トヨタ・チェイサーに乗っていた。
窓が割れている理由は後で判る。
幸男はソープランドに行く。
妻がたいへんなときに風俗店に行くのかい!
と突っ込んだのだが、
これにもちゃんと理由があったということは後で判る。
いろんな映画でいろんな脇役を演じている
宇野祥平が今回はけっこう重要な役かなと思った。
野尻克己監督はこれが初監督作品らしい。
いろいろな監督の助監督をやった人らしい。
この映画で野尻監督、木竜麻生 、原日出子らは国内外の多くの映画賞を受賞した。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
因果関係はないと思うが、
この映画が撮られた4年後の2022年に原日出子の夫、渡辺博之は自殺している。
全然コメディじゃないよ
家族に自殺され残された者をコメディにする意味
コメディではないのかもしれない。
事実をなぞるとまるではたから見たらコメディのように見えるだけとか。
いやそんな事はないだろう。
まず私の持論から。
死体を見て慌てふためいて、取り乱して記憶喪失になるほどの母親を持つ子は、だいたいの場合自殺しない。
だいたいの場合 であって全員ではないが。
人は自分の幸福度を自分の尺度で測るわけで、ホームレスでもなく罪を犯したわけでもなく、衣食住足りていて死ぬ理由などない人、だけれども生きる理由がないと決めてしまった人は死に向かう。
私の知人だった人の中に数人、自殺した人がいる。
彼らはこの現世に自分を繋ぎとめる人間を持っていなかったように思う。
嫌いだなあ、というはっきりした言葉で言い表されるのではなく何かがあまり好まれないオーラを纏っていた。
自分の思う自分の人生と、違ってしまったと思うのか
ゲームのように、一旦クリアしてしまいたくなるのか。
生きるという事への執着が切れてしまう。
妹は確かに、彼にあんな言葉を言うべきではなかった。
死んでもらいたい訳ではなかったのなら。
人はその人の立場になってみなければ、到底わからない苦悩があるのだと、まだ幼い彼女はわからない。
まして、自分の言ってる事が正論であると信じて疑わないならば、言葉は鋭い刃物以上に相手に突き刺さり、
それが きょうだい しかも自分より下の場合、言われた側のなんとも言いようのない悔しさ混じりの憤りは、味わったものにしかわからない感情を生む。
と言った背景の中。
茶化してるように見え、え?って思うとその後すぐにそうではないのだというシーンを繋げる。
目を離すとすぐに死んでしまいそうになる息子とそれを追いかける父親はまるで トイストーリーのフォーキーとウッディだ。でもウッディーは何が何でも諦めずにフォーキーが持ち主にとって如何に重要であるかの生きる意味を説き続ける。
人間である父親は「もう駄目だ俺には無理だ」
って諦めてると言うのに。
(申し訳ない。我が家の車の中で見るDVDが今トイストーリーの1〜4を繰り返し再生されてるので、はからずも何度も何度も熟視する事になってしまっている)
(本当にトイストーリーは良く出来た物語です。
見れば見るほどその出来の良さに感服し、5を心から待ち望んでしまいます。)
大森南朋の役どころは目新しく、こんな演技するのねと思わせられたが、岸辺一徳や 岸本加世子、原日出子などの定番演技の中、私が知らなかった妹の木竜麻生だけが
最初から最後までずっと真剣であり続けているという役回りだ。
その筋を一本通す事でこの映画は成り立っていた。
暗いし重い、
イタコ
引きこもりの息子が首吊自死。母親は首吊の縄を切ろうとして錯乱し、自分の手首を切って意識不明になってしまう。後に目覚めた母親は息子が自殺した記憶を無くしていた。残された父と娘は、息子が海外で今も生きていると嘘を付く、というのがあらすじ。
内容は、他のレビューにもあるように残された家族が立ち直り、これからの人生へ向かうまでの道筋が描かれている。
前半は重苦しいテーマなので、自殺した兄や倒れた母親を目撃した娘のトラウマや、「なぜ自殺したのか」と問い続ける父親の姿が描写が丁寧で心が痛む。
けど事態を動かすきっかけが、感情爆発・告白というのがありきたりで少しがっかりした。
保険金受け取りのイヴちゃんが誰なのか、住所や連絡先くらいは保険に記録されてると思うので、「イヴが誰なのか」というのが謎になっているのに困惑した。
とはいえ私にとっては内容が少し気持ち悪かった。「もういない人間」の人生を作り、他人の頭の中に望ましい架空の思い出を作る行為は、動機が何であろうと死者が何者であろうと、慰められた人にとっても死んだ本人にとっても褒められたものじゃない。
良くも悪くも死人に口なしという言葉が頭をよぎる。
シリアスがっつりコメディちょっぴりという配分は、あんまりこのしっとりした映画にあってなかった。
中途半端に感じてしまって、個人的に持った気持ち悪さを終盤まで捨てきれなかった。
自殺した息子の妹は、自殺したきっかけが自分にあるんじゃないかという罪悪感や怒りを兄に抱き、現場を発見した時の苦しみもあって、暴露したとも取れるのかもしれないが、死んだ人間を偽装することに悩んではいないだろう。
息子がいない席でハッピーバースデーを歌った母を見た時と、死んだ人間を生きているかのように偽装するのが重なり、始めたのは自分とはいえ馬鹿らしくなったのが、手紙の嘘を打ち明けた一番の理由だと思う。
みんなみんな「なぜ死んだのか」と自殺した息子の実像を拾おうとする。
結局最後まで息子の実体や何を思っていたのかという手がかりは得られない。そこが少なくとも死人への配慮なのかな。
死者を偲ぶというのは徹頭徹尾生きている人間のためのもので自己満足なんだと思った。
「私のせい」という自責を他人へ言うことは「あなたのせいじゃない」という救いを求めているように感じてしまう。
この映画は残された人の、もっと言うならこれからも生きていく人のための映画なので、間の悪い気分のときに見てしまったという気分。また違う時に見れば印象も違ってくると思う。
タイトルにある嘘こそが蛇足。
笑いもあり
後悔と無念
笑えるところもある
いい映画。家族再生がテーマ。
出ている役者は主要なキャストはとても良かった。
原日出子さんは秀逸だったし、木竜麻生も良かったな。
あと、岸部一徳は素晴らしかった。暗いテーマではあるけど、笑えるパートもあって、
大きいスコップ持って、バス待ってるの見たときは爆笑した。生前、引きこもり息子がソープ嬢に心を開いてて保険金残してた、ってエピソードがめっちゃいいと思います。イブちゃんから何を聞いたんだろう。
素晴らしい
イヴちゃんに会いたい!犬じゃないよ!
ひきこもりの長男・浩一(加瀬亮)が首吊り自殺にて死亡。それを目撃した母・悠子がショックで倒れ、息子が死んだことの記憶を失ってしまい、父幸男と長女富美が「アルゼンチンで働いている」と優しい嘘をついた。悲しくて重い家族なのに、ユーモアたっぷりに描き、明るく生きようとする姿が素敵。
実際に自殺した者の残された家族は辛いもの。自分も悲しくてやりきれない思いをしているのに、記憶をなくした母のために嘘をつきとおすことで悲しささえも忘れようとする。大切な人を亡くしたとき、数ヵ月後になってようやく泣き崩れてしまうことはよくあることだと思う。ましてや自殺となれば、新聞のおくやみ欄にも投稿しづらいし、ご近所さんのみならず、親戚にさえ真実を言えないことも多い。そういや、ご近所さんが全く登場しないことには違和感があった。重くなるからかな?
ゲバラTシャツ、ビデオメッセージ、手紙代筆の宇野祥平、吸血コウモリ、などなど色んな微笑ましい人物やアイテムが豊富な作品でもあったけど、飛び込み自殺の巻き添えを食ったら賠償請求できるとか、遺骨からダイヤモンドを作れるとかのネタもいっぱい。ちょっと気になったのは浩一の部屋にスネアドラムが2つ置いてあったけど、ドラマーだったのかな~音楽に打ち込んでほしかったな・・・
タイトルなし
優しい嘘
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