鈴木家の嘘

劇場公開日:2018年11月16日

解説・あらすじ

長男の死によって巻き起こる家族の混乱と再生を、ユーモアを交えてあたたかく描いたドラマ。鈴木家の長男・浩一が突然亡くなった。そのショックで記憶を失ってしまった母・悠子のため、父・幸男と長女・富美が嘘をつく。それはひきこもりだった浩一が部屋の扉を開き、家を離れ、世界に飛び出していったという、母の笑顔を守るためのやさしい嘘だった。監督、脚本は橋口亮輔、石井裕也、大森立嗣などの数多くの作品で助監督を務め、本作が劇場映画初監督作となる野尻克己。父・幸男役を岸部一徳、母・悠子役を原日出子、長男・浩一役を加瀬亮、長女・富美役を木竜麻生がそれぞれ演じるほか、岸本加世子や大森南朋らが脇を固める。2018年・第31回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品され、同部門の作品賞を受賞した。

2018年製作/133分/PG12/日本
配給:松竹ブロードキャスティング、ビターズ・エンド
劇場公開日:2018年11月16日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

インタビュー

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11
  • 画像12
  • 画像13
  • 画像14
  • 画像15
  • 画像16

(C)松竹ブロードキャスティング

映画レビュー

4.0 車の窓にみえる家族の再生

2025年11月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

悲しい

どうして車の窓をなおさないのか?
それはきっと浩一と一緒に傷ついていたいのだ。痛みを共有したいのだ。綺麗に直して、何事もなかったかのように、平気なように、したくないのだ。忘れたくないのだ。
と思ったそのとき、「ひょっとして!?」と気になって、エンディングの皆で車でイヴに会いに行くシーンをもう一度観てみると、、、やはり車の窓が直っていた。
なんとも見事な心象表現。思わず唸る。

俳優陣の演技に圧倒される
・突如車から飛び降りて発狂しながら逃げる浩一(加瀬)と、それをみて無力感にむせび泣く父(岸部)。
・地獄の現場に居合わせた富美の吐露を聞いた時の父親の表情(岸部)。
・富美(木竜)が新体操の練習の途中に、その情景を思い出し感情が爆発するシーン。
・兄の手紙の原案を書いたあと、無表情のままデリートしていく富美(木竜)。
・息子の現場を目撃し、半狂乱になりながらロープを切ろうとする母、悠子のシーン(原)。
・入水しながら兄への想いと悔恨を叫ぶ富美(木竜)。
・明るくて優しい叔父(大森南朋)。いいわー。温かさが滲み出ている。
・キツイこと言うけど家族に寄り添う叔母(岸本)も。雨にびしょ濡れになりながら悠子に傘を差しだすシーンなんてほんと。
・そして「大切な人を突然亡くした会」の参加者たち。同じ境遇だからこそ生まれる、馴れ合いではない温かさが確かにあった。

そんな中でも、なんといっても富美を演じた木竜麻生の演技に尽きる。
引きこもって、親の愛や注意を引こうとする兄。さらにその自死によってそれが強固なものになってしまったことへの怒りが湧き上がってくる過程の演技。
そして、兄に対して暴言を吐いたことへの悔恨の演技。根底にある兄への愛--。
静けさの中に生々しい感情を滲ませる演技、木竜麻生。こんな俳優がいたんだ。(要チェックだ。)

↓下記は印象に残った富美の台詞。

「違うよ。お兄ちゃんの命の値段だよ。
 ----お父さんさ。よくお兄ちゃんの部屋に入れるよね。
 そっか。お父さん見てないもんね、お兄ちゃんの最期。
 そこだよ。そこでお兄ちゃん死んでたんだよ。
 私は思い出すんだよ。毎日、毎日、毎日!
 もう元になんか戻れないよ!」

「(お兄ちゃんは)わかってたんでしょ?
 お母さんが一番最初に見つけるって。
 わかっててやったんでしょ? 酷いよ。

 でもお兄ちゃん。
お母さんは後を追わなかったよ。死ななかったよ。
 生きたの。強かったの!

 お母さん、お兄ちゃんが死んだこと覚えてない。
 アルゼンチンで生きてると思ってる。
ねえ、くやしい?
 大好きなお母さんに悲しんでもらえなくて悲しい?
ざまあみろ!
 わたしは、お母さんにお兄ちゃんが自殺したこと絶対言わないから!

 ねえ?なんで私に保険金なんか残したの? ねえ、なんで?
 許して欲しいってこと?それとも忘れないでくれってこと?
 お兄ちゃんは私のことが嫌いだもんね! 残酷だね。

 いいよ。
 私はお兄ちゃんのこと許さないから。
 私はお兄ちゃんのこと許さない。
 ぜんぶぜんぶ、忘れてやる。ぜんぶ忘れてやる!
 それで、、、それでもう、お兄ちゃんの思い通りになんか絶対にさせない!
 絶対にさせないから! 」

「謝りたい、、、。
 お兄ちゃんに謝りたいの!
 わたし、お兄ちゃんに会いたいの!」

自死は残された家族に対して地獄だ。

※「浩一は鬱じゃない。鬱で死んだんじゃない。」息子が鬱と認めたくない体裁重視な害父なのかな?と思ったが、 あとから浩一が「俺は病気じゃない!」と言っていた場面があったのでその言葉を守ったのだな、と気付いた。父の深い愛を感じた。
※直接的でなく、間接的に家族の慟哭を訴えてくる。コメディ要素を入れたからこそ、余計に悲しみが迫ってくる。脚本と演出が素晴らしい。
※イヴは見られずか!

コメントする (0件)
共感した! 3件)
momokichi

4.0 右へ左へ揺れながらも力強く前に進んでいく家族の肖像

2018年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

冒頭は怖いくらい深刻だ。なぜこんなことになったのか。何が原因なのか。どうしてこんな情け容赦のない事態が人生に起こり得るのか。あらゆる意味で観る者に動揺をもたらす場面だ。そこで見せる部分と、見せない部分とが、のちの構成に大きく反映されるとは思いもしなかった。かと思えば、冒頭の深刻さを抜けると今度は岸部一徳の飄々とした佇まいと、長男の不在にまつわる「嘘」をめぐって、映画はスラップスティックにも近いコメディの様相へと振り切れる瞬間がある。誰もが”答え”を求めて、すがるようにして右へ左へと振り子を揺らす。時にその演出が煩わしく、もどかしく感じられたのも事実だが、本作を観終わって感じるのは、その余白を経て大きな蛇行を描くように心の旅路を見つめたからこそ、この映画は他にはない深遠なものを、逃げることなく、ごまかすことなく、掴み取ったのではないかということだ。本作でデビューした野尻監督の今後が楽しみだ。

コメントする (0件)
共感した! 6件)
牛津厚信

5.0 若き才能とベテラン勢の理想的な融合。木竜麻生の主演作を切望

2018年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

幸せ

野尻克己の劇場映画監督デビュー作ながら驚くべき完成度。自身の体験を投影した脚本は、緻密な構成で悲劇と喜劇を二本分観たかのような別格の満足感をもたらす。

引きこもりの長男が自死し、残された家族の喪失感と後悔で切なくさせ、短期の記憶をなくした母のために無理筋な嘘をつくドタバタで穏やかに笑わせる。演出の絶妙なバランス感覚。地球のほぼ裏側のアルゼンチンという突拍子のなさ、ラテンの陽気さもいい味だ。

岸部一徳、原日出子、大森南朋ら演技派がそれぞれ持ち味を発揮しているが、とりわけ長女役の木竜麻生が素晴らしい。グリーフケアの集まりで手紙を読むシーンでの神がかった感情表現は涙なしには見られない。新体操の経験者であり、素敵なパフォーマンスでも魅せる。彼女が本格的に動ける年齢のうちに、そのスキルを活かした主演映画を観たいと切に願う。

コメントする (0件)
共感した! 12件)
高森郁哉

5.0 野尻克己監督はこれが初監督作品らしい。 いろいろな監督の助監督をやった人らしい。 この映画で野尻監督、木竜麻生 、原日出子らは国内外の多くの映画賞を受賞した。

2025年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

悲しい

動画配信で映画「鈴木家の嘘」を見た。

2018年製作/133分/PG12/日本
配給:松竹ブロードキャスティング、ビターズ・エンド
劇場公開日:2018年11月16日

岸部一徳(鈴木幸男)
原日出子(鈴木悠子)
木竜麻生(鈴木富美)
加瀬亮(鈴木浩一)
岸本加世子(鈴木君子)
大森南朋(吉野博)
宇野祥平(北別府さん)

大学を出てから3年間引き籠っていた鈴木浩一が首吊り自殺で命を絶った。

買物から帰った母親、悠子は首を吊った浩一を発見、パニックになる。

悠子は浩一の首のロープを切ろうと包丁を持ち出したが、
ロープは切れず、自分の手首を傷つけた。

結局、仰向けに倒れこんだ悠子はショックで気を失い倒れてしまう。

2か月近く気を失っていた悠子が突然目を覚ます。

悠子は不思議そうに「浩一は?」と尋ねた。

悠子はショックのあまり浩一が死んだという記憶を失っていた。

長女の富美はとっさに
「お兄ちゃんは引きこもりをやめてアルゼンチンに行った」

と言ってしまった。

アルゼンチンは悠子の弟・博が住んでいる。
浩一はそこで仕事を手伝っているということにした。

ショックから記憶が戻らない悠子のために家族全員を巻き込んだアリバイ作りが始まった。

幸男はなぜか助手席の窓が割れたままのJZX91トヨタ・チェイサーに乗っていた。
窓が割れている理由は後で判る。

幸男はソープランドに行く。

妻がたいへんなときに風俗店に行くのかい!

と突っ込んだのだが、
これにもちゃんと理由があったということは後で判る。

いろんな映画でいろんな脇役を演じている
宇野祥平が今回はけっこう重要な役かなと思った。

野尻克己監督はこれが初監督作品らしい。
いろいろな監督の助監督をやった人らしい。

この映画で野尻監督、木竜麻生 、原日出子らは国内外の多くの映画賞を受賞した。

満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。

因果関係はないと思うが、
この映画が撮られた4年後の2022年に原日出子の夫、渡辺博之は自殺している。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ドンチャック