「ネタバレサイトを考える」寝ても覚めても いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ネタバレサイトを考える
かなり変わった風合いの作品であり、元々は鑑賞する予定もなかった。その理由は東出昌大の印象である。偏見は良くないのだが、体格として異様な程の長身と童顔、そして優等生の風味と、ヲタク気質を体よくアナウンスしているあざとさ。全方向、老若男女に愛されるキャラクターの俳優に胡散臭さをどうしても感じてしまうのだ。その優等生っぷりは、『桐島』での出演からかもしれない。
そんな作品なので観る事もないがあらすじだけは知っておこうと調べたのだが、またこのネタバレサイトも考えモノであるということが、今回鑑賞して相当思い知らされた。というのも、その某サイトでの解説が大変興味深く思わせる秀逸な文章力なのである。付合っていた男が急に目の前から消え、そして幾年かにまるでドッペルゲンガーのように顔かたちが同じの男が眼の前に現われそして付合う、しかし以前の男が急に現われ、元の鞘に戻ってしまう。と、ここまでは普通にあるラブストーリーなのだが、そこから又逃避行中に、やはり元彼から別れ、今彼に戻ろうと又考えが180度変容する、奇っ怪な構成なのである。
これは確かに面白いと思い、自分なりのイマジネーションを確かめるべく、高崎映画祭にて鑑賞した次第である。
そしてそのギャップの打ち拉がれた一番のポイントは、元彼と逃避行途中に休んだ宮城の海岸線沿いの防波堤の二人の印象である。主人公の女性は、東北大震災に対する思いが強く、ボランティア迄する程の入れ込み。片や元彼は、その間海外にいた性で日本の事情は知らないからその防波堤の思い入れもない。そのギャップに主人公は改めて一緒に手伝ってくれた今彼を思い出して本当に好きだった男は誰だったのかを理解するというシーンなのだが、これが件のネタバレサイトだともっとドラマティックに解説しているように思えて、主人公の気づきに共感性が持てる話になっていたが、しかし実際はかなり薄味のシーンなのである。ということは、自分の注目したポイントと、実際の映画のポイントが丸っきり違ってしまっている典型的な“ミスリード”を勝手に起こしてしまっていたのである。本作でのクライマックスは、戻った主人公と、裏切られた今の彼との、修復できない程の傷を果たして埋めるのかどうなのかの余韻を観客に投げかける作りなのである。そういう意味では後半というか、ストーリーの3/4を過ぎてのセンテンスの為の長い長いフリをどう感じるのかに好き嫌いがハッキリ分かれる作品なのだろう。
外野や第三者はどう見たって元の鞘には戻らない関係性を、当事者同士が乗り越える意思を貫くのかそれとも力尽きるのか、そんな人間の浅ましさを表現している部分では理解は出来るのだが、淡々とした作りに没入感が得られにくいのが残念ではある。
そもそも、自分がミスリードしていての鑑賞なのだから悪いのは鑑賞者である自分ということがダメなのだが・・・