劇場公開日 2018年9月1日

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「インパクトのある傑作」寝ても覚めても ジョーカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5インパクトのある傑作

2018年9月18日
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鑑賞方法:映画館

またもや素晴らしい邦画が2018年に現れてしまった。この映画を映画館で見ることができてよかった。

もちろんストーリーの展開も衝撃的かつエモーショナルな仕上がりになっており、原作の力もあるだろう。しかし、監督やキャストの力でここまでの傑作にしたということは間違っていないはず。麦の現れた瞬間の演出と音楽、そして東出昌大の演技が完璧に合わさったからこそできたシーンは必然だったかもしれないが映画の奇跡を見た気がした。登場人物の視線の先がカメラとなっている撮影方法も特徴的だが、主人公の朝子の心情描写が直接的には描かれておらず、セリフにも表れていないため、こういうカットが重要になってくるし、このような方法で心情を描くのは素晴らしい。

日本列島全体を麦と亮平を象徴する演出も素晴らしい。二人の男性の間で揺れ動く主人公の気持ちがよく表されている。

そしてなにより、自分が感動したのは“運命”だ。人間の選択が人生において重要な役割を果たすのはもちろんだが、時に、人間には成し得ない外部からの力が加わりそれがその人の運命となり人生にレールを敷くのだ。朝子の人生において、もちろん選択はするが重要なところは全て偶然が重なって起きているだろう。『15時17分、パリ行き』の時の感動を味わった。

タイトルにもなっている“寝ても覚めても”というのはどういうことなのだろうか。寝ている時に見ている夢と、麦(バク)はなにか関係があるのだろうか。そこら辺を考えるのも面白い。

今年は自分の中で邦画が豊作だが本作もまた劇場で体験してほしい異様さ、そして美しさを秘めている。

こうき