「震災の日を境に変わってしまったこと」寝ても覚めても とえさんの映画レビュー(感想・評価)
震災の日を境に変わってしまったこと
面白かったなぁ
自分のこれまでの人生を振り返りながら観て、見終わった後には、いろいろと考えさせられた作品だった
大阪で暮らす大学生の朝子(唐田えりか)は、同じ大学の麦(東出昌大)と付き合っているが、ある日、その麦が出て行ったっきり帰ってこなくなってしまう
それから2年が経ち、東京で働く朝子は、麦とウリ二つの亮平(東出昌大(二役))と出会う
そして、まもなく、東日本大震災が起き…
この映画を観ていて、すごく考えてしまったのは、東日本大震災を境にして、私の中で、どう価値観が変わっただろうかということだった
大震災の日、私も亮平や朝子と同じように帰宅困難者だった
そして、テレビやネットで、たくさんの物や人が、波にさらわれ、失われていくのをリアルタイムで目撃し、永遠に続くものなどないことに気づいてしまった
永遠に続くものなどないと気づいてしまったあの日以来、私は「今」を大切に生きるようになったと思う
で、朝子だ
朝子は震災を境にして、二人の男性、麦と亮平と出会う
見た目は同じでも、中身は正反対の二人
その二人に対する心の移り変わりに、朝子の価値観の変化が出ているように思った
もちろん、そこには、20代という、最も精神的に成長する時の価値観の差というものもあるけれど、7年前と今との間には震災があって、そこから、明らかに違う人間になってしまったのだ
一番大きな変化は、これから、もしものことがあった時に、誰と一緒にいたいかということだと思う
私たちは、夢だけでは食べていけないし、「もしもの時はこの人と一緒にいたい」という安心感が、より大切になったのだ
そのことを朝子に気づかせた仙台だったんだと思う
この映画で良いなと思ったのは、朝子自身が、その心の変化に気づき、キチンと向き合おうとしたこと
周りの友人たちは、みんな7年前とは違うのに、自分だけは何も変わっていない
そのことも、朝子を目覚めさせた原因だっただろう
私たちは、何も変わらない日常を過ごしているようで、少しずつ変化しているのだ
だからこそ、過去でもなく、未来でもなく「今」を大切にすべきなのだと思う