ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

劇場公開日:

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

解説

世界中の図書館員の憧れの的である世界屈指の知の殿堂、ニューヨーク公共図書館の舞台裏を、フレデリック・ワイズマン監督が捉えたドキュメンタリー。19世紀初頭の荘厳なボザール様式の建築物である本館と92の分館に6000万点のコレクションを誇るニューヨーク公共図書館は、地域住民や研究者たちへの徹底的なサービスでも知られている。2016年にアカデミー名誉賞を受賞したドキュメンタリーの巨匠ワイズマンが監督・録音・編集・製作を手がけ、資料や活動に誇りと愛情をもって働く司書やボランティアの姿をはじめ、観光客が決して立ち入れない舞台裏の様子を記録。同館が世界で最も有名である理由を示すことで、公共とは何か、そしてアメリカ社会を支える民主主義とは何かを浮かび上がらせていく。リチャード・ドーキンス博士、エルビス・コステロ、パティ・スミスら著名人も多数登場。第74回ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。

2017年製作/205分/アメリカ
原題または英題:Ex Libris: The New York Public Library
配給:ミモザフィルムズ、ムヴィオラ
劇場公開日:2019年5月18日

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(C)2017 EX LIBRIS Films LLC - All Rights Reserved

映画レビュー

3.5A Magnifying Glass on a Magnifying Glass

2021年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

Frederick Wiseman at almost 90 years old has the wisest mind after demonstrating his profession of finding the most profoundly relevant moments in the inner-goings of human institutions. Ex-Libris as a fly on the wall explores the conversation of slavery in America as people flock back to the library to dig up research. Some great guest speakers appear in the film. Slow but very interesting.

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Dan Knighton

5.0知的刺激にあふれている

2019年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

図書館はただ本を貸すだけの場所ではなく、いろんな可能性を持っていることがよくわかる。就職支援に起業セミナー、家にネット環境のない家庭にWiFIルータを貸し出し、シニアのダンス教室に演劇、音楽コンサートに作家のトークショー。全てのサービスが無料で、社会の重要なインフラとして機能している。 フレデリック・ワイズマンが移すのは、図書館に集う人と働く人。彼はミーティングを撮影するのが好きな人だが、本作のミーティングシーンはどれもエキサイティング。この図書館はNPOによる運営で、行政の支援金と民間の寄付で成り立っている。多彩なサービスを提供するため、いかに予算を募るのか、実践的な議論がなされる。さらにホームレス対策にも悩むシーンも興味深い。誰もを受け入れるが、一人が居座ることで他の人がサービスを受けられないのでは困る。ハーレムの分館での黒人の歴史についての議論も非常に印象的。3時間半のドキュメンタリーだが、全く飽きない。知的刺激に満ちた傑作。

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杉本穂高

4.0民社主義の本質すら垣間見えてくる図書館ドキュメント

2019年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

学生時代に勉強のために、また、社会人になってからは資料探しのために利用してきた図書館である。しかし、ニューヨーク公共図書館には、もっと広い利用価値がある。図書の検索を担当者が電話で直接請け負ってくれる。館内では著者のトークイベントや一流アーティストのコンサートが定期的に開催されている。仕事を探している人のために履歴書の書き方や面接の攻略法を教えてくれる。ハンディキャップを持った人たちにも同等のサービスが提供されている。つまり、図書館は本だけでなく、庶民が健全に生活するためのすべての方法が陳列された、文字通りの"公共"施設なのだ。このドキュメンタリーを見ると、民主主義の本質が垣間見えてくるほどだ。サービスの向上を目指して頻繁に行われるスタッフ会議の模様も含めて、情報がこれでもかと言うくらいギッシリ詰まった3時間超。しかし、それに付き合う価値は絶対にある。

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清藤秀人

公共ということ

2024年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 実家が昔は本屋さんだった事が影響しているのかも知れませんが、僕は子供のころから本が好きでした。なんて言うと、「文学少年」とか「勉強好き」の様に思われるかも知れませんが、いえいえご想像とはちょっと違うのです。僕は、活字の印刷された紙が綴じられた本と云う物体が好きなのです。大きかったり小さかったり、分厚かったり薄かったり。装丁のデザインも様々で、年月を経ると黄ばんで来る、あの物体が好きなのです。だから、すべて同じ内容であっても電子図書には全く興味がありません。  そんな僕にとって、図書館と言うのは黄金のお城の様な存在です。  本作は、図書館で働く人の憧れの場所と言われるニューヨーク公共図書館の日々の活動を記録した3時間半の長編ドキュメンタリーです。いやあ、びっくりしました。本好きにとって天国の様なこんな図書館があったなんて知りませんでした。今からでも住民票を移して、ここの家の子供になりたいと思ったほどです。  まず、荘厳な石造りの建物がカッコいいのです。その前に立つだけで「知の殿堂」のオーラを感じる事が出来ます。そして、内部は広々としていて、手入れもよく 行き届いています。  勿論、入れ物だけではありません。そこに収蔵されているもの、その運営、そこで働く人々が素晴らしいのです。ここは「図書館は本の倉庫ではない」と言い切り、「地域にどの様に貢献できるのか」をコンセプトの中心に据えているのです。そして、その「貢献」の範囲が我々の想像を遥かに超えているのに驚きます。  図書館内のホールを利用して音楽コンサートが開かれます。話題の本の著者を招待しての講演会が開かれます。ま、この辺までは、ありそうですね。ところが、この図書館は、職を求める人の為に、様々な公共施設に働く人をスピーカーとして招いて仕事の紹介、斡旋まで行っているのです。あるいは、貧しさ故にネット環境に触れられない市民の為に、Wifiルーターの貸し出しも行っています。さらには、パソコン講座も開いています。或いは、年配者の方々向けのダンス教室まであるのです。  これら上に挙げたすべてのサービスが基本的に無料なんですよ。ここは、恐らく「市民の知の向上」を助けることが図書館の使命であると恐らく考えており、それを妨げる貧困の救済までもを視野に入れているのです。すんごいなぁ~。  これらの活動はすべて、ニューヨーク市の援助と広い寄付で運営されています。細かい数字は明かされませんでしたが、年間数十億円規模の予算なのかなと思えました。この予算をどの様に定常的に確保し、どのように使うのが有効なのかについての図書館首脳部の会議の様子も繰り返し紹介されます。  この図書館の広範な活動を見て、公共サービスに関わる世界中の人々が「そりゃあ、お金があれば我々だって」と考えるのではないかと思います。でも、当館の活動のどこか一か所をヒントに、収益性を維持しつつ地域の人の顔が見えるサービスという切り口を開く事は可能なのではないかなとぼんやり思えました。そして、改めて気づいたのは、  「こうした、地域の人々の知と情報への貢献と云うのは、図書館だけでなく、まさしく映画館の仕事でもあり得るな」 と云う事でした。僕の地元の「あつぎのえいがかんkiki」では兼ねてよりその様な事が標榜されていましたが、言葉では理解出来ても具体的な像が僕は頭の中に描けずにいました。ところが、本作を観て、「そうか、これなんだな」と初めて腑に落ちた気がしました。なるほど、シネコンでは描きにくい活動です。だから、今や推進力を失った映画館が改めて口惜しく感じられたのでした。    2019/08/15 劇場鑑賞

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