「ドキドキが止まらない」ミッション:インポッシブル フォールアウト とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキドキが止まらない
エンディングのパーカッションも、その気持ちをわかってくれているように、鳴り響く。
やっと、映画館が明るくなった時に「ふうっ」とため息が出る。ああ、現世に戻ってこれたようだ。私だけじゃないらしい。他の席からも「ふうっ」とため息が聞こえた。
映画の販促で次から次に配信されていたアクションの数々。
そして、今回のキーとなるレーンの予言。いつものメンバーのあの表情。
鑑賞後に予告を見ると、予告が見どころの総てという映画が多いけれど、この映画では、予告はチラ見せでしかない。ヘイロジャンプのシーンでさえ!!!
それぐらい内容の濃い作品。
こんな息をのむようなアクションが、絶景の中で行われる。
神の御座所とも言いたいくらいの気高さの中で行われているのは、命を奪おうとするものと、それを阻止せんとするものの闘い。
逢魔が時のヘイロジャンプ。
たくさんの車や人がいる中でのチェイス。ああ、パリやロンドンの街並みを堪能する暇すらない。
無宗教ながら祈ってしまう。神様、トム様とスタントマン・スタッフをお守りください。トム様がご無事なのはわかっていても、なおも祈ってしまうほどの緊迫感。
そして、こんなアクションをしながら演技しているトム様。だから、映画の中でアクションが浮かない。
そんな、アクションばかりが目立つようにしている販促だが、軸となるストーリーもあったかい。
今回はイーサンの心と、そのイーサンを支える人々の物語になっていて、イーサンファンを喜ばせてくれる。
「ジュリアの話をやりたい」とはトム様の希望だそうだ(監督インタビュー記事から)。そして、ある意味、イーサンの集大成になった。
ジュリアに対するイーサンの想い。イルサに投影しているイーサンの願い。
ベンジーが、あるミッションの後で、イーサンの”お褒めの言葉”を超嬉しがるのも、IIIを思い出すと、こちらまで小躍りしたくなってくる。
ルーサーも、Iから好い奴なんだけれど、今回は特にしみじみ来る。
しかも今回の締めは”あの”作品の締めと極めて似ているが、決めてくれるのは…。
だから、余計にブラントがいないのが寂しい。
イーサンの心の支え、ジュリアの強さ。
もう一つのありかたで強い女を見せてくれるイルサ。
かつ、シリーズファンにとってうれしいところも満載。
お約束の”裏切り”も出だしは「またか」と失笑してしまうが、切り返しがいい。
また、毎回出てくるパーティ、水関連、だましのテクニック等々、「あのオマージュ?」といったエピソードが今度はこう来たかというのがうれしい。語り尽くしたい衝動に駆られる。
欲を言えば、
敵が…。レーン一人じゃない…。肉弾戦はすごかったけれど…。『ゴーストプロトコル』のブラントの時の方が、得体が知れず、物語を引っ張った。
でも、レーンの声って、内なる悪魔が心の中にささやいてくるようで、ぞくぞくする。
もう少し練りこんでほしいシーンもある。
大根役者に見えてしまうシーンもあるのはご愛敬。
トム様とボールドウィン氏の場面て『ロック・オブ・エイジス』を思い出してしまうのもご愛敬(私だけか)。
また、パリで「マックス」とくれば、それ関連のエピソードも期待してしまったが、まあしかたない。頭の中で勝手にスピンオフとする。
なんて、他にも、ジュリアって看護師じゃなかったっけ?とか、幾つもつっこみどころ満載、ちょいギャグも満載だが、
とにかく初見ではついていくのに精いっぱい。
あの、絶景を堪能する暇すらない。
これは、何度も観ないと、映画の全容を堪能しきれない。
ストップモーションが欲しいよ。
今までも、独特の色使いで楽しませてくれたシリーズだが、
今回は空高く自然や風景を満喫しつつ、室内は茶系で落ち着いて魅せてくれる。それぞれのシーンが、ポスターになるほど美しい。
しかし、こんな人間業ではないシーンを可能にしてしまう人たちがいるんだ。
今回、トム様も怪我されたけれど、他にもスタントウーマンが亡くなられたと聞く。合掌。
命がけだったり、新しい機材を開発したりとか限界を超えてこの映画を作ってくださる方々。それらの方が最高のパフォーマンスができるようにおぜん立てしてくださる方々。この映画作りそのものが、ミッションインポッシブルを、ポッシブルに変えていく。チームMI。
生きていく勇気をもらえる映画をありがとう。
こんな風に、映画が好きで好きで好きで仕方なくって、次々と不可能を可能にしちゃう映画製作メンバーに囲まれて、充実しきっているトム様。アイディアだけじゃなくて、彼らをその気にさせて、作り上げちゃうリーダーシップが凄い。
そんな仲間との日々が続きますように、お祈りします。
次は、首都高でチェイスしてくれないかな?
って、日本がマヒしますね。否、セットでいいからさ。
追記
USAの核に対する認識は、相変わらず。
広島や長崎、第5福竜丸の原爆の資料館を訪問してほしい。
けれど、一番解りやすい危機なのだろうな。