「奇跡の1時間54分!”捨てられた子犬”に愛情を注ぐ」バンブルビー Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡の1時間54分!”捨てられた子犬”に愛情を注ぐ
ようやく"回帰した"と、胸を撫で下ろした。しかも奇跡の1時間54分!(笑)
そもそも永井豪とダイナミックプロの発明ともいっていい、"ロボットの変形・合体"がなければ、トランスフォーマーというキャラクターは生まれていない。しかもマジンガーZ・ゲッターロボ世代から言わせると、変形・合体は作品のクライマックスだけでいい。
とにかくマイケル・ベイ監督のトランスフォーマーは長尺で、2時間30分は当たりまえ(ときには3時間に迫る)。観る前に、体力を蓄えて臨むのが常識だ。3D化してからは目がチカチカするだけのVFXは、今回すっかり鳴りを潜めた。
登場するオートボットやディセプティコンの数と種類は豪華なのに、各々の特徴が描き分けできていなかった。
結局、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の手法しかないと悟ったのか、人気キャラクターの"バンブルビー"をタイトルロールに持ってきた。一つ一つのキャラクターを掘り下げないとシリーズは持たない。
中国のバブル資本が入ってからは、中国人ウケしてればいいと思っていたのかどうか、意味なくガチャガチャと変形を繰り返すだけ。前作は、米国内の興行収入がシリーズで初めて製作費を下回った。 ワンパターンすぎたでしょ。
結果として監督を降りたがっていたマイケル・ベイに代わり、監督が日本文化に造詣の深いトラヴィス・ナイトになったのは朗報だ。
トラヴィス・ナイト監督は、ナイキ創業者の息子で、パパの援助はあるものの、「KUBO クボ 二本の弦の秘密」(2016)で見せたクリエイティブは、日本生まれの"トランスフォーマー"をいい意味で再生してくれるかもしれない。
本作のバンブルビーの魅力は、"捨てられた子犬"に似ている。
宇宙からきたバンブルビーは、少女チャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)に拾われて、かくまわれる。大人に見つかると研究対象となってしまうとチャーリーが考えたからだ。
ディセプティコン(敵)に音声回路を壊され、喋れないことで鳴き声のようなビープ音でしかコミュニケーションが取れないというのも、ミソ。
バンブルビーは軍人で、上官の命令に忠実である。地球や人間の情報を持ち合わせていないので、知的な判断力があるにもかかわらず、とりあえず助けてくれたチャーリーの言うことを素直に聞いている。イタズラっぽい仕草や失敗は可愛く、まさに愛犬のようである。
ここでディセプティコンに騙された大人の捜索の手が伸びてくる。
実は、この展開はスティーブン・スピルバーグの「E.T.」(1982)そのものなのである。そう、「トランスフォーマー」シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーだ。
バンブルビーは主人チャーリーを守るために闘うわけだが、それぞれの仲間と家族がある2人は、最後には別れなければならない。「E.T.」と感動のツボが一緒なのである。いったん宇宙に帰して、もっとわざとらしく盛り上げてもよかったかも。
いずれにせよ、せっかく仕切り直したわけだから、次はオプティマス・プライムをやるんだろうなぁ。
(2019/3/22/ユナイテッドシネマ豊洲/ビスタ/字幕:岸田恵子)