「観て、損はしない作品。」ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
観て、損はしない作品。
2018年7月14日に“TOHOシネマズ新宿”のスクリーン3にてオールナイトの最終回、2D字幕版を鑑賞。
世界中で愛され続ける『スター・ウォーズ』シリーズの最新作にして、『ローグ・ワン』以来のスピンオフとなった本作『ハン・ソロ』が『エピソード8/最後のジェダイ』の公開から、8ヶ月後と間を置かずに封切られ、やっと観ることが出来ました。
銀河帝国による独裁支配が始まってから、10年が経過した時代において、銀河一のパイロットを志す青年ハン(オールデン・エアエンライク)はある日、戦場となった惑星で帝国軍の奴隷となっていたウーキー族のチューバッカ(ヨーナス・オルタモ)を助け、ギャングの為に働くベケット(ウディ・ハレルソン)の仲間に加わり、旅に出る(荒筋)。
ジョージ・ルーカス監督が最後に作った『エピソード3/シスの復讐』製作時に同作でウーキー族とチューバッカが出ることが明らかとなった段階から、「少年のハンが出てくる」等の噂が囁かれ、未だに実現しない実写のテレビシリーズの構想をルーカスが発表した時にも「密輸業者になりたてのハンを描いたエピソードが作られるかもしれない」と言われていて、『エピソード7/フォースの覚醒』では年老いたハン(ハリソン・フォード)が描かれたので、青年時代が実写で描かれるのは当然かもしれず、噂が現実になったので、そういう情報に胸をときめかせた事があったので、そこまで期待をした訳では無いのですが、どのようになるのかを楽しみにしていました。全てに満足は出来なかったのですが、楽しい作品に仕上がっていたので良かったと思います。
このシリーズは大好きですが、これまでのハン・ソロには強い思い入れがある訳ではなく、自分の印象としては“シリーズのなかの一つの時代の中心人物”という感覚しか持っておらず、カッコ良くて好きなキャラの一人ではあり、話に出てくるだけで嬉しくなりますが、雰囲気がハリソン・フォードに似ていれば、誰が演じても問題は無いという気持ちで捉えているので、今回、抜擢されたオールデン・エアエンライクのハンは特報やスチル画像を見ただけで「バッチリじゃないか」と思い、違和感を抱くことは無く、ランド・カルリジアン役のドナルド・グローヴァーはビリー・ディー・ウィリアムズとは違う顔立ち(“死の標的”等で知られるトム・ライトを思い出させます)ですが、イメージしていた通りで悪くなく、出てくるだけで愉快なキャラという印象を変えることの無い描かれ方を気に入っています。
不思議な事にシリーズを愛してやまない自分なのに、今回はディズニー傘下になってからの『スター・ウォーズ』シリーズのなかで、最も鑑賞前のテンションが上がらない一作でした。近年のシリーズでは『ローグ・ワン』が一番良く、本流である『フォースの覚醒』や『最後のジェダイ』よりもスピンオフの方が上回っているのだから、今回も普通なら、『ローグ・ワン』並みの期待度とテンションの高さで観に行っても良い筈ですが、最初に起用されていたフィル・ロードとクリストファー・ミラー監督を撮影途中でクビにして、ベテランのロン・ハワード監督に任せたり、興行的な失敗の知らせなどのネガティブな情報に惑わされ、「こんなにテンションが下がる知らせが相次いでるのに、上げた状態で観に行くなんて難しいよ」という気持ちが強く、批判の多かった『最後のジェダイ』に満足し、二回も劇場で同作を観てから、そんなに月日が経過していない状況で公開されたので、「“最後のジェダイ”と、どっちが上になるかな」と比較するような思いがあったり、普通なら、「冬と夏に劇場で“スター・ウォーズ”の新作が観られる奇跡が起きてるんだから、それだけでも喜ぶべきだ」と真っ先に思って、テンションの低さを吹き飛ばす事が出来そうなのに、そのような事すら思えなかったので、観賞後の現在においては、「もっとテンションを上げられずに観られなかったのは失敗」と思っています。
満足の度合いは『最後のジェダイ』の方が上でした。その理由は本編が始まってからの最初の30分間がハマれず、冒頭から、スピーダーで疾走し、それだけで掴み所がバッチリな筈なのに、画面の色調が暗め(暗すぎなせいか、逆にタイトルのロゴの黄色い文字は印象的です)で人物の表情が見えづらく、緊張感溢れるシーンなのに、それが響かない上にベケットの仲間のヴァル(タンディ・ニュートン)とリオのキャラに魅力を感じず、二人がフェードアウトするまで楽しめず、相棒として伝説を作り上げることになるチューバッカとの出会いのシーンでも、ハンがウーキー語を話せるという驚きの設定が明らかになる件なのに、その30分のなかのシーンだった為か、グッと来ることがありません。過去作では、このようにハマれないところがあるのは一度も無かったので、これは残念です。
「愛機のミレニアム・ファルコン号との出会い」、「ケッセルが遂に舞台となる」など、シリーズのファンなら一度は気になり、想像したシーンやイベントが描かれているのに、振り返ってみると、盛り上がりが少ない印象があります。ハン、チューバッカ、ランドを除く新しいキャラが、そんなに面白味のあるキャラになっておらず、“L3-37(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)”という女性型ドロイドを登場させて、『ローグ・ワン』のK-2SOに続くドロイド革命に挑んでいるのに、大した事をやっておらず、居ても居なくても変わらないキャラで、一つの点を除き、どちらかというと要らないキャラにしか見えず、ハンにとって最初の大切な人物なキーラ(エミリア・クラーク)や悪役のドライデン(ポール・ベタニー)にしても、似たような印象しか抱けず、ハン、チューイ、ランド以外に存在感の大きなキャラが出てくる訳でも無いのに、存在感と魅力に欠けているのが勿体無いです。
ファルコンが初登場するシーン、ハンとランドの出会いの切っ掛けとなるカードゲームのサバックでの勝負、ファルコン内のチェス、懐かしの音楽の再使用やR2-D2タイプのドロイドが脇で幾つか出てきたり、ラストの意外なゲスト・キャラの登場など見所はありますが、それはファン・サービスでしか無く、他に大きな見所が殆ど無いので、見終わった直後は「凄く面白かった」と思っても、振り返ると、特に何かあった訳じゃない事に気づくので、どう述べて良いのかが分からなくなります。
「また劇場で“スター・ウォーズ”の新作を夏に観られた」ということを大きな喜びにしたいと思います。観て、損するような作品ではなかったのが最大の良いところでしょう。