サバービコン 仮面を被った街 : 特集
「アメリカのおしゃれな郊外生活」のはずだが……“何か、おかしい”
映画ファンこそ“笑える”G・クルーニー×コーエン兄弟の極上ブラックユーモア
【批評家絶賛】《人間不信エンターテインメント》【映画通GWの1本】
「グッドナイト&グッドラック」の“監督”ジョージ・クルーニーが、2度のアカデミー賞脚本賞に輝くコーエン兄弟の脚本を映画化し、さらにその作品にマット・デイモンら実力派が出演しているとなったら……映画ファンは、もうじっとしてはいられない。ひと癖もふた癖もあるドリームチーム作「サバービコン 仮面を被った街」(5月4日公開)は、「映画が大好きで仕方がない」というあなただからこそニヤリと笑える、ブラックなエンターテインメント作だ。
“この少年だけ”が知っていた、幸せに満ちたニュータウンの“真相”を!
【映画ファンなら気づく】何かおかしい……《サバービコン10の違和感》
アメリカが最も輝いていた時代、1950年代を舞台に描かれるのが本作。さんさんと注ぐ温かな太陽の光、ポップでカラフルな一軒家が並ぶ郊外の街「サバービコン」は、まさに誰もが思い描く理想の街だが、住宅CM風にスタートする本編を見ているうちに……この映画には、一種異様な雰囲気が立ちこめてくることに気づく。数々の「違和感」は、何を意味するのか? 一見、幸せに満ちたこのニュータウンで、実は何かが起ころうとしている……。
色とりどりのカラフルな一軒家が整然と並び、そこに暮らすファミリーも笑顔にあふれる街・サバビーコンだが、ここは天気までが完璧で、あまりにも“理想的”ではないか。物語はこの街に暮らす少年ニッキーの視点で描かれるが、頼りがいがあって優しいはずの両親をよくよく見てみると、父のメガネが割れ、隣に立つのは母ではなく、双子の姉である伯母だったりする。登場する人々はもちろん、映し出されるものや音楽などが、徐々にアンバランスになっていく感覚。白人しか住まない夢の街にひと組の黒人家族が引っ越してきたことから、街は一触即発の状況へ陥っていく……。
マット・デイモンが! ジュリアン・ムーアが! オスカー・アイザックが!
【映画ファンなら笑える】オスカー俳優たちのブラックすぎるユーモア
この物語はいったいどこへ向かうのか……立ち上ってくる違和感とともに、見る者を驚かせるのは、マット・デイモン(「オデッセイ」ほかで3度のアカデミー賞男優賞ノミネート)、ジュリアン・ムーア(「アリスのままで」でアカデミー賞主演女優賞受賞)、オスカー・アイザック(「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」でゴールデングローブ賞主演男優賞ノミネート)という実力派俳優たちが見せる、ブラックユーモアに満ちた演技だ。いままで「見たことのない」姿に、きっとニヤニヤしてしまう。
「ジェイソン・ボーン」シリーズであれほど精かんにアクションを決めたデイモンなのに、本作ではコワモテの男たちにボコボコに殴られて、テープでメガネを修理するという情けなさ。そして、幼児用の自転車にまたがって必死にキコキコこぐとは……本当、よくやる!
かつてはラブコメやアクションにも出演したムーアも、今は超演技派の域。しかし本作では、高い声でまくし立てるヒステリックな姿や狂気に駆られた泣き笑い顔まで披露。「キングスマン ゴールデン・サークル」から、さらにアブナイ演技がエスカレート!
シリアスなドラマから、「エクス・マキナ」「スター・ウォーズ」「X-MEN」シリーズまで、変幻自在ぶりを見せるアイザック。今作では、口にちょびヒゲを蓄えて怪しさたっぷり、口八丁手八丁でデイモンたちを煙(けむ)に巻く、謎でイヤミな保険調査員を熱演!
G・クルーニー×コーエン兄弟×豪華キャスト──映画のプロ、大注目の1本
【映画ファンなら気になる】「見てみたら、やっぱり完成度が高かった!」
俳優としての実力だけでなく、監督・脚本家としてもアカデミー賞ノミネートを受けるジョージ・クルーニーが、盟友コーエン兄弟の脚本を基に豪華キャストを配して作品を撮ったとなれば、注目度が高まるのは当たり前だ。そんな期待を膨らませていた映画評論家のひとり、折田千鶴子氏が作品を鑑賞。高い満足度、そしてクルーニー監督への賞賛を述べた。