「いつまでも大切にしたい映画」ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
いつまでも大切にしたい映画
戦時下、ナチスの目を逃れてゲットーから少しずつユダヤ人を救い出していくことは生ゴミの回収という隠れ蓑を機能させることでヤン夫妻にとっての一種のルーティンだったわけです。そして、このルーティンはナチス占領下という非日常の中のひとつの日常となっていました。
あの優しい夫のヤンが嫉妬のあまり、外(現場)の悲惨さは家にいると分からない、とアントニーナを詰るシーンがありましたが、兵士になれない妻は家を守る以外に選択肢はないわけですし、終戦後、結局男たちが帰る場所は妻が守っていたその家(建物というよりはHOMEという空間)なのです。
妻が経験できないことを取り上げて、お前には分からないんだと責めたり、やり込めるパターンは
現代の夫婦間でもありますね。お前には酒の付き合いの大事さが分かってない、とかね。男って身勝手でズルいなぁ。
戦時下の日常に於ける残された人たち(特に女性)の闘い。
これは『この世界の片隅に』と共通する要素なのですね。淡々と時間を追っていく描き方も似ています。
劇的でなくてもジワジワと感情が揺さぶられ、心の深いところに何かが刻まれる、『この世界の片隅に』と同様、いつまでも大切にしたい映画です。
余談ですが、『女神の見えざる手』でジェシカ・チャステインの演技を競演させ、『否定と肯定』でナチスのホロコーストについて全く違う観点から迫らせるとは、日比谷映画街の面目躍如といったところですね。東宝さん、なかなか粋な計らいだと思います。ありがとうございます。
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