女神の見えざる手のレビュー・感想・評価
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2つの問い
素晴らしい脚本。ジョナサン・ペレラは独学で脚本を学び、これがデビュー作というから驚く。
政治の影の舞台で影響力を持つロビイストの実態も興味深いが、非常に深遠な2つの問いが主人公の行動を通じて観客に投げかけられる。
1つは、目的の正しさをいかに掴むか。主人公は銃規制反対派からの打診を断り、銃規制推進派の小さなロビー会社に合流する。キャリアを取るか、信念を取るか。主人公は自らの信念を取る。あるいはこの選択もキャリアアップのためかもしれない。しかし、彼女は銃が社会にとって害悪であると確信している。
2つめは、正しい目的のためなら何をしても許されるのかという問い。資金力のある大会社と政治家を相手にするため、主人公は非合法的な手段も、同僚を犠牲にすることも厭わない。やがて彼女自身に嫌疑が向くが、最後の逆転劇でも主人公は最後まで「らしい」やり方をつらぬく。しかし、最後の一手で彼女が犠牲にしたものは今までとは違う何かだった。
冒頭からラストまで目が離せない一級品の映画だ。
原題はミス・スローン
それが何とも意味深で格好良い邦題『女神の見えざる手』を
考えた日本人は素晴らしい。
この言葉はアダム・スミスが使った表現で、
「色んな人が勝手に利己的に行動しても、最終的には
全体に利益をもたらす」との意味だとか!
この映画でロビイストの役割がよく分かったのですが、
辞書的には、
【企業や団体の意見を聞き、議会や政府に働きかける仕事】
ミス・スローン(ジェシカ・チャスティン)はこの映画では、
【銃規制法】を通すために手段を選ばない強引なロビイストを
演じています。
寝ないために薬を飲み、その為に睡眠がろくに取れなくなっている。
恋愛なんかはエスコートサービスを利用して、お金で解決している、
まるで男性のような女性です。
ミス・スローンの強引な手法で、広告塔になったスタッフ。
彼女は高校時代に大量銃撃事件の生き残りで、トラウマを抱えているのに、
広告塔にされて、暴漢に打ち殺されそうになる。
その男を後ろから撃ち殺して助けたのが、合法的に銃を持ち歩いていた
男性だった。
このような設定は日本ではほぼあり得ないですね。
それだけ銃社会で、自らの命を身をもって守ることが当たり前の
狩猟民族の血・・・なのでしょうね。
ラストに胸の空くドンデン返しがあります。
しかし《泥を喰らわば皿まで》の例え通り、スローンも大きな
ペナルティを自らに課すのです。
主演のジェシカ・チャスティンの格好良いこと
「ゼロ・ダーク・サーティ」2012年
「インターステラー」2014年
「モリーズ・ゲーム」2017年
もう彼女のキャリア絶頂期でした。
ちなみにアメリカで銃規制方が30年ぶりに強化されたのは、
2022年6月、バイデン大統領が30年ぶりに、
新しい銃規制法に署名して成立したのでした。
1歩先を行くには2重にも3重にも仕掛けていく。
捨て駒
どんなに悲惨な銃乱射事件が起きても銃規制が遅々として進まないアメリカ。その理由の一つが毎年数百億円にも及ぶ政治献金を行う全米ライフル協会の存在だ。
まさに彼らは潤沢な資金をもって規制法案をロビイ活動でつぶしてきた。そんな圧倒的不利な状況下で敵に立ち向かうロビイストの姿を描く。
ロビイ活動とは敵の行動を常に予測し、自分の手を見せるのは敵が切り札を出した時である。
まるで将棋やチェスのような思考法で勝つことに異常なまでの執念を持つエリザベス。彼女は優秀なロビイストとして業界では名立たる実績を残してきた。
キャリアのために家庭はもたず、睡眠も取らず、常に精神刺激薬を手放せない。夜は金で買った男を抱く。
勝つためには手段を選ばず、身内を駒のように利用し、時には盗聴、ハッキングなどの違法行為も厭わない。
そんなダーティーな彼女にも一つの信念があった。それは自分が正しいと思う法案に対してだけロビイ活動をするということだ。
別に彼女は銃被害者ではない。だがどう考えてもいまの法律は間違っている。その信念があるからこそ彼女は常に全力で戦えるのだ。
法案賛成派議員への根回し、賛同する支援者集め、そして規制賛成世論の形成と多方面にわたり抜け目なく、戦略的にこなしてゆく。
そんな彼女に対して古巣のロビイ会社はかつての彼女の右腕やマスコミを使って彼女を陥れようと画策する。
ついに倫理規定違反の疑いで聴聞会に呼ばれた彼女は窮地に立たされる。そして相手側から切り札である有罪の証拠を突き付けられたとき、彼女は奥の手を出す。
形勢逆転、逆に不正を暴かれた法案反対派は大打撃を受け彼女は勝負に勝利した。自身の倫理規定違反の証拠と引き換えに。
彼女が使った手法はいわゆる将棋やチェスでいう捨て駒だった。自分の有罪証拠書類をあえて古巣に残し、敵がぼろを出すのを待った。案の定、敵は聴聞会で不正を働き、それに反応した世論の後押しで銃規制法案は可決される。
それは圧倒的不利な状況下での彼女の捨て身の戦法だった。自分のキャリアを犠牲にしてまでやり遂げるべきとの信念のもとでの賭けだった。
銃被害者のエズメを利用して傷つけ、その身に危険まで与えてしまった自分のやり方に限界を感じていた彼女。また自分自身こんな生活をいつまでも続けられるわけがない。そう悟ったからこその捨て身の戦法だったのかもしれない。
目的達成のためなら手段をいとわない、まさに女ダーティーハリーといったところか。違法な捜査で連続殺人犯を射殺したキャラハンがバッジを投げ捨てるがごとくエリザベスもキャリアを捨てて、このロビイ活動に勝利したのかもしれない。
中盤まではかなり面白く見れたが、ラストのどんでん返しのからくりは少々拍子抜けだった。右腕だった彼女の裏切りと見せておいて実は密偵として残していたというのは正直単純すぎた。また倫理規定違反の書類を見つけた敵側がぼろを出したのも少しご都合主義に思えた。敵側はあの証拠書類だけでも彼女を陥れることは可能だったわけだから。この辺が個人的にははまらなかったので少し評価は下がった。
ただ、ラストの彼女の言葉、命を失うくらいならキャリアを捨ててもいい。彼女は自分を捨て駒にしてでもキャリアのために勝利したかったのではない。キャリアを犠牲にしてでも銃規制法案を通したかったのだ。
これは作り手の痛切なメッセージなのだろう。
今もアメリカのどこかで銃声が鳴り響いている。
主人公の常軌を逸した日常生活や他人の気持ちを一切考えないやり方には...
これはおもろい!
ロビー活動、なんだそれ?ってわからなかったら、まず調べてから見た方がいい。
こう言う仕事もあるだなと。
ストーリー的なものは他の方のレビューにお任せして、、、
主人公のエリザベスは、もの凄い頭の回転のキレと判断力をもつ企業戦士。
こんな頭と度胸を私が持てたたらどれだけ凄いことになってたかと羨ましく思うほど。
常に勝つことだけを目指して、考えられる方法は全てやり尽くす!この生き様はすごい!
最後のどんでん返しにも大拍手!
こんな企業戦闘マシーンみたいな彼女、
たまに男を金で買って性欲はそこそこ満たし、恋なんてしない、、これって満たされる?
あらすじがわからないように詳しくは書かないけど、最後は、勝つためには自分の履歴が汚れようともなんとも思わない(ように見える)彼女の振る舞いに、この人は本当に幸せなんだろうか?とも考えた。
最高!
ケーキとクッキー
ヌテラ税とかパーム油とか、そんなことさえ知らずにパソコンで検索しながらの鑑賞となりました。最も驚いたのはロビイストの細かな作戦で、俳優まで動員してデモ行進させるなどしていたこと。これを信じちゃ日本でのデモなんてのも雇われた者ばかりというデマをも信じちゃうかなぁ。資金が少ないとか言ってたのに・・・
比べてしまうのは日本の政治。映画の中では共和党、民主党の区別が感じられなく、ある法案に賛成票を投じるか反対票を投じるかの二択の政治家。日本だと、超党派の法案以外は政党ごとに賛否が決まってるので完璧な馴れ合い。ロビイストが介入する余地さえ無いように思われる。つまり日本では選挙の時点で勝敗が決まっているのだ・・・
最も凄いと思ったエピソードは銃乱射事件の生存者でスローン(チャステイン)の指示でTVで銃規制派の論客として活躍した女性エズメ・マヌチャリアン(ググ・バサ=ロー)が正義の銃によって救われてしまったという皮肉。仕組まれた事件のような気もしたけど、それだけアメリカでは銃犯罪が多いってことか。
信念のために働く女性はカッコ良すぎだが、真の民主主義とは何なのかも考えさせられ、結局は彼女に賛同する民衆が増えないとどうにもならない虚しさも痛感。また、移籍を拒んだジェーン(アリソン・ピル)の存在も最後にはじわじわとカッコ良く見えてくるのだ。そしてエスコートサービスの男性フォードも胸のすく思い。スローンが自分の人生を取り戻して生きてくれることを願うばかり・・・と。正直言って、ちょっと俺には難しい話だった。
凄い!
最後の逆転劇とても驚かされた。何を貫くか?の問いも感慨深い フォー...
最強(最恐)の女
ミス・スローン
裏切られた。
全米国人の本作鑑賞を痛切に願う
めちゃくちゃ面白かった。どんでん返しのある作品として期待して鑑賞したが、ただの大逆転劇に留まらない衝撃作と言っていいのではないか。ラストシーンはハラハラドキドキや爽快感を超え、感動と共にアメリカの銃社会の闇に対する怒りさえ覚えた。
辣腕ロビイストである主人公スローン役を演じたジェシカ・チャステインの演技は圧巻の一言。彼女の演技が本作の魅力を何倍にも増幅させていることは言うまでもないだろう。
余談
このレビューを書いている数日前にアメリカの小学校で銃乱射事件が置き、21人の児童と教師の尊い命が奪われた。いつまでアメリカという国は同じことを繰り返すのか。
本作はアメリカ国内では3館のみの限定公開だという。見えない大きな力が働いているのでは、と疑わざるを得ない。
トランプ曰く、銃を持つ悪人に対しては銃を持つ善人で対抗するしかないそうだ。果たして本当にそうか。結局誰一人救えていないではないか。犠牲になるのはいつも未来ある子どもたちばかりだ。
闇の深さとどんでん返し
なんかこんなに周りから「強い女」と思われる人が世間一般意見だと思っ...
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