「役所広司恐るべし」孤狼の血 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
役所広司恐るべし
よくぞこの時代にここまで撮ったと言いたくなる映像の数々。目を背けたくなるようなシーンをぼかさず真正面から見せる。しかし、単なるヤクザ映画、バイオレンス映画ではない(Netflixで鑑賞)。
噂には聞いていたが、暴力描写が生々しい。観ているこちらが「痛そう!」となるような場面が幾度となく出てくる。それはかつてのヤクザ映画でピストルでドンパチやるシーンなんかよりずっと残虐性と痛みを感じる。生身の人間の拳や足、そして刃物といった、身体性の強い暴力の方がずっと怖いことを思い知らされる。
バイオレンス系はあまり得意ではない。腐敗したバラバラ死体や、水死体の映像は、正直目を背けたくなったが、これらの映像はちゃんと見せて正解だったと思う。変にぼかしたり、映さなかったら興ざめしていたかもしれない。
さて、この映画で主人公の一人、大上は、マル暴刑事の権化というような存在なのだが、役所広司が見事に演じきっていて流石としか言いようがない。演技の振れ幅が広すぎ。
大上の、単なる暴力的なはぐれ者ではなく、街の治安を守るために裏社会に足を突っ込むという命がけの行動原理は一体どこから来たものなのか気になったのだが、それは明かされなかった。気になる。
日岡(松坂桃李)が大上の真の目的を知ってからの変貌ぶりがまた見物だった。監察官の犬だった男が、警察の暗部を身をもって知り、監察官を脅すまでに肝が据わった男になる。徐々にこの男の中に「芯」と「狂気」が根付いていくような気配を感じた。
脇を固める俳優陣では、石橋蓮司と音尾琢真が良かった。この2人は、登場したときから「エラそうにしていても最後は情けないことになる」フラグが立ってしまってそのとおりになるのだが・・・(江口洋介も同じフラグ立った。これはコンフィデンスマンJPの赤星フラグ?)
それと、予告編が1分30秒でものすごく格好良い。最後の大上の台詞がこの映画のテーマ。
最後に気になっていることをもう1つ。大上って名前は「狼」に掛けているんですかね?