「役所広司全開。」孤狼の血 akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
役所広司全開。
のっけから養豚場。
豚の糞で始まり、豚の糞で終わる。
すごい映画を見た感触がある。自分の感触では
白石和彌は一時期の三池崇史を超えた。
昭和63年4月。昭和も終わりに近づいているが、誰も終わるとは思っていなかった頃。いや、思っていても口には出せなかった。バブルが始まっており、それが数年後に弾けるのだ、
松坂桃李と役所広司と言えば「日本のいちばん長い日」もある。お話は「日本の」の方が複雑で、スケールもデカく、歴史的な事件を扱っているがゆえに(スリリングではあるが)退屈な場面もどうしても多くなる。それはそれですごいし、感動もするのだが、
こちらのフィクションのバイオレンス刑事ものの方がなんでもできる分とんでもないものを見た、という気になる。どちらもありだが、二つを見比べるのは意味ないだろう。
とは言え、白石監督の意図も見える。
「日本の」で暴走していたのが若き松坂桃李で、死んだのも松坂。こちらの「孤狼の」では暴走してゆくのが役所で、死ぬのも役所という構図は明らかに白石監督の狙いだろう。
自分は2021年の、LEBEL2.から入ってしまったのだが、ちゃんとLEBEL1.から入るべきだったように思う。
見ようか迷って結局見ず、VODもなかなか見れなかったのである。だからこそこのようなひねくれた見方をしているのだが、面白さは、倍増しているかもしれない。
LEBEL2.の狂気は、サイコパスヤクザがのし上がって行く時の狂気だが、LEBEL1.の狂気は、ガミさん、警察の中の一匹狼、の狂気。大上=役所広司が全身全霊で法を破りながら暴れまわる。白石和彌の描く世界で役所広司が、にぶく渋く不気味な光を放つ。二度見るとさらに光は増し、三度目でも光は失われない。警察の中にヤクザが紛れこみ、ヤクザの中に警察が潜入する、そういう世界観も大上は広大出の松坂桃李に示していた。
竹ノ内豊がでていたことにはなかなか気づかなかった。
役を作り込みすぎだ。
キャストは豪華だ。
ベテラン、超ベテラン、若手、中堅、新人がバランスよく配置されている。
画面もスタイリッシュなのに荒っぽく、どことなく品を感じるのに登場人物たちもそのセリフもかなり下衆なものが多い。
因果応報であれば、納得する自分も恐ろしいが、罪人は裁かれなければならない、裁かれ、十分に重い刑罰を受ける必要がある。そうでなければ、世の中のバランスは取れない。