「え!?面白くない・・こんなはずじゃ・・。」孤狼の血 ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
え!?面白くない・・こんなはずじゃ・・。
日本で一番新作が楽しみといっても過言ではない白石監督!
本作は去年呉まで撮影を見に行きましたが(本当は「この世界の片隅に」ロケ地巡り中にたまたま遭遇。)、その撮影の熱気もすごく色んなスタッフが一生懸命叫びながら現場を回している様をみて、その時から期待が高まっていました!
東映も任侠映画復活!日本フィルムノワール復活!的に宣伝もすごく力が入っていて、白石監督も本作はアドレナリン出まくり!などツイッターでもつぶやいており、本当に期待していました。
しかし、蓋を開けてみると、必要性を感じない「仁義なき戦い」オマージュや、メンズノンノのモデルにしか見えないヤクザの若い衆たち、昭和の舞台設定なのに明らかに最近建ったような建物があったり(せめて呉市役所くらいは映さない配慮があってもよかったんじゃないか。)、方言なのか上手く喋れてないのかわからないが台詞が聞き取りにくかったり、とにかく映画の世界に入っていけない。時間が長く感じる。飽きる。私の周りにも劇中時計を確認している人が何人かいた。
また、主人公、松坂桃李のキャラクターがどういう人間かを説明する描写がないため感情移入できない。(内偵をしているという描写でさらに距離感が出る。)「仁義なき戦い」では冒頭で菅原文太がレイプ犯から女性を救うという短い描写を入れているため、主人公は本当はこういう人というインプットが出来たのだが、本作ではそういう描写がなく、主人公が本当はどういう人なのか最後までわからないし、ラストの作戦もセコすぎる。
ガミさんがヤクザをコマとして使えたのはガミさんの長年の根回しによるものじゃないの?江口洋介はなんで一回突き放した松坂桃李の言うこと聞いてるの?
松坂桃李が超天才という描写もないので何故そんな簡単にピエール瀧も江口洋介もコマとして使えちゃってるのかわからない。警察本部の連中もなんでヤクザの組長が参加してる会に堂々と参加してるの?そりゃ尺的にクライマックスだから全員同じ場所にいた方が都合良いけど、全くリアリティがない。
こういったように難しいディテールは描かずあいまいになっており、残酷表現だけクローズアップされちゃったからすごく表面的で薄っぺらい作品に感じてしまった。
スター俳優ばかりだったから使いづらかったのかな?いつものエロも物足りない。
白石監督作品はセリフとか芸人を使った今風(独特?)な台詞や喋り方というかそこが面白かったのに、その面白さが全部なくなっちゃってたし。
撮影方法も特に「凶悪」の現代のシーンから過去のシーンになっていく繋ぎ方とか天才かよ!って思ったくらいですが、本作は途中何度も入る「仁義なき戦い」風のナレーションが本当に中途半端。邪魔。映像見てれば誰が見てもわかるナレーションなんていらないでしょ。
"ガミさんが刑務所に向かった"とか誰でもわかるわ!(笑)
途中で警察内部の腐敗にフォーカスされた時には、お!白石監督っぽくなってきた!と少しドキドキしましたが、結局グダグダで終わり。
最後ピエール瀧は一体何の得があって松坂桃李に手を貸したんだよ。
松坂桃李にやって欲しかったのもなんかそうじゃないんだよなー(笑)あぁクソ〜モヤモヤする。アドレナリンが出ると聞いたのに出せなかったモヤモヤ。
あの日誌にガミさんのコメントが書いてある泣かせどころも、最近誰が死んでその後の手紙で泣かせるみたいな作品が多すぎてまたかよって思ってしまった。
また、印象的な音楽もなかった(←ここは本当に残念。「仁義なき戦い」級までとは言わないが印象的なスコアをちゃんと作って欲しかった。)。
宣伝していた割には期待外れの作品だった。ブタの糞や、死体や、首などかなり頑張った表現をしていたけど。
ただ、江口洋介はめっちゃくちゃかっこよかった(笑)太鼓の音の中、刀を持って、敵の組長に、、、そこは牙突じゃないんかーい!と思いましたが(笑)
個人的に白石監督は任侠映画より「日本で一番悪い奴ら」的なチンピラ映画路線が合ってると思う。是非現代劇を撮って欲しい。スコセッシの"グッド・フェローズ"、"ウルフ・オブ・ウォールストリート"的なあれだ。
東映は白石監督じゃなくて北野武監督と任侠映画をつくればよかったのに。。。