「実際にあった悼ましい事件」空飛ぶタイヤ かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
実際にあった悼ましい事件
原作は池井戸潤の同名小説。
主演は長瀬智也。
【ストーリー】
主人公・赤松は運送会社を経営する二代目社長。
自社で運用しているホープ社製トラックが起こした死亡事故に動揺して、担当の整備士門田を怒鳴りつけ、解雇してしまう。
だが門田がロッカーに残した整備ノートには、非常に詳細なメモが残っており、整備不良はあり得なかった。
すぐに門田に謝罪して処分を撤回する赤松だが、被害者となった柚木家を訪ねると強い罪悪感に苛まれる。
だが自分が賠償をすることは本質的な解決にはならない。
ホープ社の調査報告書では整備不良とされ、系列のホープ銀行からも融資を渋られ、そして警察の家宅捜索と会社存続の危機に見舞われる中、赤松は自らの足で事故の真相究明へと邁進する。
そこには巨大企業ホープの、ユーザーへの信じられないほど傲慢な商品供給態勢があった——。
ベースとなった物語は2002年に起こった、三菱ふそうトラックによる横浜母子3人死傷事故。
走行中に車輪がブレーキごと脱落し、歩道を歩いていた母親が死亡、子供二人が軽傷を負ったという悼ましい事故です。
当該事故を引き起こしたリコール隠しは、人為的な事件として、法人として三菱自工と、元部長ほか三名が起訴され、有罪が確定しています。
20年以上前の事故ですが、巨大企業グループ全体にいまだ蔓延するずさんさとデータ隠蔽体質には、今なお怒りを禁じ得ません。
リコール隠しは、日本の大企業にありがちな風通しの悪い風土が元凶ですね。
ここ最近は、フジテレビの問題で「会社の風土」が話題に上がっていますね。
私は、永年に渡って試験結果を改ざんしていた某老舗メーカーに勤めていましたが、代表が交代して「会社風土を変える」キャンペーンを張りました。その結果何が起きたかというと、その御触れに従って全社が改善に向けて活動しているという体裁を整える仕事をさせられたということです。上層部が考えた改善策への下々からの反対意見は握りつぶされます。
それがトップからは見えないのが大企業ですから、改善されていると信じているのはトップだけという…。