「コンパクトにまとまった良作」空飛ぶタイヤ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
コンパクトにまとまった良作
よくできた原作を、いかに2時間の映画にまとめるかが、勝負かと。
そいう点では、ストーリーの骨子がきれいにまとめられていた。
ただ、映画的エンターテインメント性がもう少し欲しかった感はある。
今日はサッカーW杯の日本初戦が行われた。
勤め先の同僚たちは早々と仕事を切り上げ、テレビ観戦するために帰路を急いだ。
サッカーに興味がない自分は、その時間閑散とした映画館で本作を観賞。
映画館を出てスマホの電源を入れると、代表チームがコロンビアに勝って白星発進したニュースが飛び込んできた。
サッカー観戦と社会派サスペンス映画の観賞を比べてもしょうがないが、
スポーツバーから出てきた青いユニフォームのグループに、W杯の試合なんかより良いものを観たぞ!
と、言える程ではなかった。
とは言え、実にストレートに誠実に原作の要素を積み上げた、優等生的な作品だった。
所轄署の刑事が大企業の家宅捜査の指揮をとるか?とか、登場人物を絞らなければならないためとはいえリアリティーに欠けるシーンもあったが、
多くの登場人物がそれぞれに背景を抱える群像劇らしく、
被害者夫の悲痛な叫び、
疲れはてて辞表を出した幹部社員の悲哀、
20年整備業務に心血を注いだ挙げ句に不当な扱いを受けた男の滲み出るプライド、
これら、演者の力量も相まって、心に残るシーンはいくつかあった。
しかし、肝心のサスペンス面が弱い。
絶体絶命の主人公が、自力だろうが他力だろうが、一発大逆転するのが池井戸作品の醍醐味。
遂に大企業の不正にメスが入る、その決め手を劇的に映画的に描いて欲しかった。
そこが、エンターテインメントだろうに。
しかし、長瀬智也とディーン・フジオカ、全くタイプが異なるが、二人とも絵になるカッコ良さだ。
紅一点、深キョンの良妻ぶりに癒された❗