1944 独ソ・エストニア戦線
2015年製作/99分/エストニア・フィンランド合作
原題:1944
スタッフ・キャスト
- 監督
- ルモ・ヌガネン
- 脚本
- レオ・クナス
-
クリスティアン・ウクスクラ
-
カスパール・フェルベルク
-
マイケン・シュミット
-
ヘンリク・カルメット
-
カール=アンドレアス・カルメット
2015年製作/99分/エストニア・フィンランド合作
原題:1944
クリスティアン・ウクスクラ
カスパール・フェルベルク
マイケン・シュミット
ヘンリク・カルメット
カール=アンドレアス・カルメット
1944年、第二次世界大戦中のエストニア兵達の話。
この映画を観る前にちょいエストニアの歴史を知らないと???に。
前半はドイツ側についたエストニア兵目線。
後半はソ連側についたエストニア兵目線な映画である。
昔から色々な国の支配下に置かれたエストニア。
1940年にもソ連に併合され、その当時ソ連側についたエストニア兵もいるもんだから、1944年ソ連に侵攻し支配下にしたドイツ側のエストニア兵vsソ連のエストニア兵と言う同国の人々どうしの戦争が生まれてしまうのであります。
映画として時系列はそのままに、エストニア兵で有りながらもドイツ側&ソ連側と言う二つの目線を観せてくれたのは面白味を感じさせてくれたし、歴史の情勢的にどちら側にも所属しなきゃならなかったあの双子の弟さんは心情的に辛いよな。や、殺してしまった相手の姉を愛してしまうのは辛いよな。と思ってしまう訳で。
人間ドラマも中々。
戦争としては前半は塹壕戦ばかりで多少つまらなかったが、後半になればなる程お金もかかり面白かったですよ。
「戦争がそうしてしまった」
自由を求めたエストニア人の良いお話でした。
事の発端は1940年6月、バルト三国の政府が揃って、「ソビエト赤軍と戦う事は無益」との判断から、無抵抗で「武装解除された」事にあります。7月、ソ連によって仕組まれた議会選挙の結果、バルト三国全ての議会で共産党が多数を占め、議会からソビエトに併合嘆願書が提出され、8月、エストニアは他の二か国と共にソビエトに併合されます。
ドイツ騎士団の支配下にあったエストニアは、13世紀にはデンマーク、16世紀からはスウェーデンに帰するエストニア公国、18世紀には大北方戦争の末にロシア帝国の支配下に入ります。ロシア革命は1917年。エストニアには新ロシアの忠実な共産主義者と、反レーニンの独立勢力が割拠していた時代でした。併合後、ヨシフ・レーニンはNKVDをバルト三国に送り込み、「敵対分子」を家族ごと逮捕し処刑、もしくは国外退去に処します。これが1940年6月から。これは、政治的・社会的エリートの排除と言う、共産主義特有の戦略です。
ちなみに有名な杉浦千畝の「命のビザ」は、この時期(1940/7〜9)の出来事。リトアニアの日本領事館にビザ発給を求めたのは、ドイツ占領下のポーランドから逃れて来たユダヤ人の人々でした。
ドイツのソビエト侵攻後、ナチス・ドイツがバルト三国の地域占領を開始したのが1941年。バルト三国の人々は、当初「ドイツがソビエトの支配から解放してくれる」と考えました。ドイツによる独立の回復を期待した訳ですが、その希望はまもなく打ち砕かれます。1941年のうちに、ドイツはバルト三国の植民地化を宣言。この時期、反ナチ体制が住民の間に広がります。
1944年、ドイツの配色が濃厚になって来ると、住民の中には再度ドイツ支持に回る者たちが増えて行きます。ドイツの植民地となる事を拒みながらも、ソビエトの支配は更にイヤだと。エストニアは、その歴史・地勢的な背景もあり、理念を突き通す事は無く「ロシアかドイツか」の意思統一も無いまま、ドイツ・ソ連戦に巻き込まれて行くことになります。
これが、この映画の歴史的背景。
同じエストニアの同胞が、ドイツ軍とソ連軍に別れて戦う凄惨な物語は、前半、ドイツ軍のカールをメインに、後半はソ連軍側のユーリをメインに進んで行きます。
激しい戦闘に次々と倒れて行く同胞兵士。補充で入って来たのは、坊やの双子。地雷原を超えて敵軍を退け、共に無事であった事を喜ぶ部隊。見張りの交代の一瞬の隙に、双子の兄は狙撃で命を落とす。一瞬先は闇の戦場の現実。
戦場となった村を離れ、避難する人々に見せる、兵士たちの優しさ。逃げ遅れた子供を救うために命を落とす兵士。
同胞と敵として向き合った時に、本当に相手を殺す事ができるのか?と言う問い。
問いへの答えとなる場面は、直ぐに現実のものとなる。ドイツ兵カールはソ連兵ユーリと対面してしまいますが、ユーリを撃てず、ユーリによって撃たれてしまう。両軍の隊長は戦闘の中止を部隊に命じる。同じエストニア人だと。
ユーリは、自分が殺したカールのポケットから、カールの姉に当てた手紙を持ち帰りました。その手紙を姉のタミクに届けに行きますが、真実を打ち明ける事は出来ませんでした。共に教会に出かける二人。家族を追放処分にしたヨギと言う人物を、今は赦す、と言うタミク。ユーリは、自分の苗字を正直に打ち明ける事も出来ませんでした。
ソ連兵ユーリの部隊は、強制的に参加させられたドイツ軍から脱走して来た少年達と遭遇します。射殺を命令されたユーリはこれを拒み、大佐に撃ち殺される。
指揮官である大佐を狙撃したユーリの同僚プロホルは、ユーリの内ポケット方からタミクに当てた手紙を見つけ、その手紙を届けに行きます。手紙の内容は、カールを殺した事を打ち明け、赦しを乞うものでした。
一つの民族が、敵と味方に別れて戦争をしたと言う歴史。一つの国家が指導者によって、または介入する他国によって分断され、戦争した歴史。一つの国家の中で、異なる民族が戦争をして来た歴史。
そんな世界への問いかけ。
人は美しく生きられる。また、いかようにも醜く生きてしまう。
だから。乗り越えるために必要な事は赦しなのだと。
歴史的な背景も含め、教訓とすべき内容だらけの映画でした。
旧作DVD大会も、やっぱり「青春もの」から「戦争もの」に戻ってしまったミリオタの俺w
明日はVODに戻って「身損ねているおバカ映画大会」します。
ドイツとソ連。
国は違えど、属しているのはみなエストニア人。
ついこの間まで、顔を付き合わせていた仲間と撃ち合いになるとは…。
戦争とは、全てを敵にしてしまう恐ろしい世界です。
ピストルで簡単に撃たれ死んでゆく姿を見ていると、人の命の呆気なさを痛感します。
つい何秒か前まで生きていた仲間が、今はもうこの世にいない現実…。
ヒトラーもスターリンも、敵ではありますが、やっていることは同じなのかもしれませんね。
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