アイリッシュマンのレビュー・感想・評価
全145件中、1~20件目を表示
名優たちの滋味が引き立つドルビービジョン
配信をDolby Vision対応の有機EL55インチで鑑賞。これまでNetflixやAmazon PrimeでDolby Visionや4Kの映像を見てきたが、本作の滋味豊かな映像は格別だ。特にジョー・ペシの皺が深く刻まれた肌の質感がたまらない。有機ELが得意な黒の表現との相性が良いのだろう、渋さが一層引き立ち薫香のよう。
シチリア系の血を引くスコセッシがこだわり続けた“ファミリー”の物語。アイルランド系のシーラン役、ドイツ系のホッファ役に、デ・ニーロとアル・パチーノというイタリア系を起用した点も血の絆を感じさせる。シーランとアンナ・パキンが演じた娘との親子関係も悲痛で哀しい。出演を固辞し続けたペシをデ・ニーロが粘り強く説得したのは、スコセッシと組みこれほどの面子、これほどの規模で映画を撮るのは多分最後という思いがあったからではないか。集大成の風格が堪らない。
落日の悪党達
アメリカの移民の作る闇と抗争を歴史事実を背景に描いている。暗黒モノの代表、ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョン・ペシが年老いて現れる。ハーベー・カイテルも顔を出す。なんとも豪華な配役だ。これらが信頼と裏切りの歴史を奔走する。なんとこれらの面々がCGを使って若い頃が再現され最近は何でも出来るのだと驚く。アメリカの政治にこのように暗黒面が深く関わっていたことにも驚く。年老いて、それぞれが殺されたり病でこの世を去り最後は主人公の孤独な場面で終る。監督のマーテイン・スコセッシも老いて老境の共感のようなものを示した。どんなことをしても、どんな勢力を振るった者も最後は切り離され孤独に死に面さないといけないというわかりきった原則を長い映画で描いた。
雪玉のようなストーリーは面白いんだけど、
小狡いおっさんの小さな悪事の積み重ねがどんどん大きくなって引くに引けなくなりイタリアマフィアに絡め取られ、ファミリーの核になっていく。そして、その大きさは自分の目の前の話だけではなく、もっと大きな流れの中の泡沫に過ぎず、やがて、誰にも気にされずに砕けて消えていく。まるで、一握りの雪玉のように坂道を転げ落ちながら大きな塊となり、転げた先で砕け散っていく、そういう物語でした。実話ベースですもんね。これ。
ベテランの俳優さんがずらりで、主人公のロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノはもとよりすべての演技が素晴らしく、また、壮年期から老衰期までを演じているのですが、あれはメイクなのかCGなのか気になるほどに幅広いものでした。
しかし、映画館で観るべき映画か、と言われればノーです。自宅でNetflixでご覧になった方がいいと思います。
・画の撮り方がテレビドラマ以上にテレビドラマ。かつところどころ荒いデジタル処理が興ざめ。
・音が2ch。アトモスというかサラウンド処理を一切感じず、ただひたすらにデカイスクリーンでテレビを観ている感覚。エンドロールでドルビーアトモスのロゴが出て、「え?」となるレベル。
・207分は長いです。インターミッションは必要じゃないかと。しかし、ストーリーはその長時間を意識させない、その先が次々に知りたくなる仕様ではあります。
いい映画なのは間違いないのですが、きちんと映画フォーマットで作って欲しかったかなあ。
ロバート・デ・ニーロ(1943年生まれ) アル・パチーノ(1940...
大御所達が織り成す重厚感に胸アツ
Netflix配信作品というところで少し後回しにしてしまったが、マーティン・スコセッシ監督作品で、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演ということで遅ればせながらもいよいよ鑑賞。
これだけの大作ゆえ、ストーリー良し映像良し役者陣の演技良しで当然重厚感があり満足のいく内容だったのだが、それにしても上映時間210分は、かの名作「タイタニック」をもゆうに超える長編具合で少々疲れた。どれも重要なシーンにて、どこを簡略化すれば良いのか素人には想像の及ばないところではあるが、1本の映画を芸術性で測るならばやっぱり本作は長過ぎるかもしれない。
いずれにしても、言わずもがなだが「ヒート」での2人の熱い戦いを思い出し、25年の時の流れに感慨深いものを感じ胸が熱くなった。
今年最大の話題作!22年ぶりにデニーロとタッグを組んだスコセッシの...
途中ギブアップ寸前だったけど。
いぶし銀の演技が光る。、
派手なアクションは無いけどそれがいい
なぜデニーロは出番をゆずらなかったのか
デニーロ、パチーノ、スコセッシ。この三人が揃って仕事をしたという事実に胸をときめかせ、「面白くならないわけがない」と自分に言い聞かせ、ネットフリックスの限定上映という機会にも偶然恵まれて、映画館で鑑賞。
ずいぶん昔に、『ヒート』という映画でデニーロとパチーノは共演をしているが、二人が同じ画面に収まることはなく、会話シーンや撃ち合うシーンですら編集で処理してある始末。当時は「不仲説」がまことしやかにささやかれたものだ。ネットの書き込みでは、「演出」ということで落ち着いているが、釈然としない。
『ゴッドファーザー』では、この二人は親子の設定で、マーロン・ブランドからいちばん可愛がられ、甘やかされて愛国心にあふれまっすぐに育った三男坊をアル・パチーノが好演。初めはパチーノをキャスティングしたことに不満を抱えていた映画会社の重役が、有名なシーン(ダイナーで政敵を撃ち殺すシーン)を見て「あの新人はいいねぇ」と手のひらを返したように惚れ込んだ、なんてエピソードもあったそうだ。
大ヒットした映画の続編『ゴッドファーザー・パートⅡ』で、マーロン・ブランドの若かりし日々をデニーロが演じ、無名だった彼は一気にスターダムにのし上がる。パチーノは同じ映画に主演しているものの、デニーロの鮮烈な印象にかすんでしまっている。この二人が同じ画面に収まることはあり得ないので『ヒート』での共演は期待値マックスだった。そして、見たときの失望感も大きかった。「だって、あの二人が絡んでいないんだもの」…
無知を恥じるしかないが、『ボーダー』という映画でもふたりは共演しているそうな。映画の出来はあまりよろしくないようで。
結論から言うと、この映画で今回ばっちり共演している。ハグするシーンではパチーノが意外に小柄な人でデニーロと並ぶとまるで大人と子供だ。同じ画面に収まりたがらなかったのも何となく頷ける。特別なケミストリも感じない。
で、肝心の映画なんですが、まずネットフリックスの戦略に深い失望と疑問を感じたことが大きい。いったい誰がこの映画をタブレットやケータイの画面でちまちま再生して鑑賞するというのか。映画のスケール感と、ターゲットにする観客のマッチングがこれほどかけ離れた映画も珍しい。興行での成功より、明らかに「賞狙い」の話題先行型。長すぎるし、展開が重たすぎる。
デニーロは、集大成とばかりに、よぼよぼのじいちゃんから、若い時まで特殊メイクを駆使して演じているが、残念ながらデニーロ・アプローチを見られた満足感よりも不満のほうが大きい。70歳の老人が90歳の晩年を演じたところで観客は驚かないし、転んでも自力で起き上がれない老人は演技ではなくただのアクシデントにしか見えない。若い時の姿は見た目40歳ぐらいに若作りしているがこれも姿勢が猫背だったりして無理がある。その点、『アントマン』で若い時の自分を違和感なく演じたマイケル・ダグラスはすごいな、と改めて思う。
なぜ、デニーロ自身が勝ち取ったように、若手にチャンスを与えなかったのか。若きヴィートー・コルレオーネを演じた天才は、自らの若い日々を自分で演じてしまった。ものすごく残念だ。プロデューサーも兼ねているデニーロの、エゴだろう。
『マイ・インターン』で、清々しい好人物を存在感たっぷりに演じ、まだまだ健在を印象付けたが、この先はフェードアウトしていくんじゃないだろうか。役者として、枯れていく様を見ていくのはつらいものがある。映画館を出るときに、特大のポップコーンを持て余し、ごみ箱に捨てる気分。
そんな、残念さが消えない。
ネットフリックスでは、同じく限定公開だった『ローマ』が非常に満足度の高い作品だっただけに、その落差にも驚いた。そして、どちらの映画も映画館で見るべき作品だという印象は強い。
2019.12.10
労働組合とマフィアは仲良しだった!
4時間近い長さを実感しない濃密な作品。
やたらと長い上演時間に驚きましたが、内容は「チームスター」という愛称で知られる全米トラック運転組合を実名で描いた、「カテゴリーとしてはマフィア物」の映画です。
全米のほとんどすべての貨物はトラック運転手が配達しているわけで、その100万人のドライバーが団結すれば強力な交渉力を得られるぞ、という、もちろんそれ自体は正しい認識ですが、そうやって暴力的に得た交渉力と、莫大な年金資産とを、ラスベガスのカジノ建設をはじめとする裏社会にどんどん融資してきた組合ボスとその凋落。
……ってな背景知識を得られたのが私としては最大のメリットでした。
映画エネミー・オブ・アメリカで何の説明もなく「労組に対する暴力・恐喝行為」が冒頭近くで出てくるのですが、ああ、こういうことだったんだなとスッと腑に落ちた次第です。
アメリカ人には常識中の常識なのでしょうけど、私はまったく知らなかった世界が、世の中にはまたまだたくさんあることを知りました。
日本国内でも、労組なんだか暴力団なんだか区別のつかない組織の悪行が、たまに報道されますけど、全部実名を使い、そういうものの危険性をエンタメとして真正面から告発するような作品が、はたしてどれぐらいあることやらと考えさせられた次第です。
全145件中、1~20件目を表示








