アイリッシュマンのレビュー・感想・評価
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名優たちの滋味が引き立つドルビービジョン
配信をDolby Vision対応の有機EL55インチで鑑賞。これまでNetflixやAmazon PrimeでDolby Visionや4Kの映像を見てきたが、本作の滋味豊かな映像は格別だ。特にジョー・ペシの皺が深く刻まれた肌の質感がたまらない。有機ELが得意な黒の表現との相性が良いのだろう、渋さが一層引き立ち薫香のよう。
シチリア系の血を引くスコセッシがこだわり続けた“ファミリー”の物語。アイルランド系のシーラン役、ドイツ系のホッファ役に、デ・ニーロとアル・パチーノというイタリア系を起用した点も血の絆を感じさせる。シーランとアンナ・パキンが演じた娘との親子関係も悲痛で哀しい。出演を固辞し続けたペシをデ・ニーロが粘り強く説得したのは、スコセッシと組みこれほどの面子、これほどの規模で映画を撮るのは多分最後という思いがあったからではないか。集大成の風格が堪らない。
スコセッシ&デニーロがやり残してきたこと。
"アイリッシュマン"ことフランク・シーランが、闇社会に深く関わったどす黒い自分史を自ら語る形で物語は進んでいく。登場するのは、マフィアのドンとして恐れられたラッセル・バッファーノや、何かと物騒な噂が絶えなかった全米トラック運転組合の委員長、ジミー・ホッファ等、それだけで1本の実録犯罪ドラマができそうな連中ばかりだ。実際、ホッファはジャック・ニコルソン主演で映画化もされている。彼の死はいまだ謎に包まれているのだ。本作は、ホッファを殺したのはシーランだったと断定する他、第二次大戦後のアメリカ裏社会の構図を、シーランを通して検証する犯罪史にもなっているところが面白い。人はどのようにして悪に取り込まれ、それが常態化していくのか?そのプロセスを誇張することなく、平常の出来事のように描くリアリズムは、マーティン・スコセッシ&ロバート・デニーロのコンビがこれまでもやってきたこと。抑制され、計算し尽くされたタッチは老いてなお冴え渡っている。しかしながら、最新作の肝は、シーランが犯罪と引き換えに捨ててきた家族への後悔と、迫り来る死の恐怖と、人としての罪悪感に打ち震える"老境"の描写。デニーロが話していた「マーティ(スコセッシ)と自分がやり残してきたこと」とは、まさにそれなのだった。
雪玉のようなストーリーは面白いんだけど、
小狡いおっさんの小さな悪事の積み重ねがどんどん大きくなって引くに引けなくなりイタリアマフィアに絡め取られ、ファミリーの核になっていく。そして、その大きさは自分の目の前の話だけではなく、もっと大きな流れの中の泡沫に過ぎず、やがて、誰にも気にされずに砕けて消えていく。まるで、一握りの雪玉のように坂道を転げ落ちながら大きな塊となり、転げた先で砕け散っていく、そういう物語でした。実話ベースですもんね。これ。
ベテランの俳優さんがずらりで、主人公のロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノはもとよりすべての演技が素晴らしく、また、壮年期から老衰期までを演じているのですが、あれはメイクなのかCGなのか気になるほどに幅広いものでした。
しかし、映画館で観るべき映画か、と言われればノーです。自宅でNetflixでご覧になった方がいいと思います。
・画の撮り方がテレビドラマ以上にテレビドラマ。かつところどころ荒いデジタル処理が興ざめ。
・音が2ch。アトモスというかサラウンド処理を一切感じず、ただひたすらにデカイスクリーンでテレビを観ている感覚。エンドロールでドルビーアトモスのロゴが出て、「え?」となるレベル。
・207分は長いです。インターミッションは必要じゃないかと。しかし、ストーリーはその長時間を意識させない、その先が次々に知りたくなる仕様ではあります。
いい映画なのは間違いないのですが、きちんと映画フォーマットで作って欲しかったかなあ。
3時間30分
観ました。
思った程長く感じなかった。
一人のトラック運転手がいつの間にか用心棒のような事やるようになって、始末屋になり、マフィアと呼ばれて 家族ぐるみの友人も容赦なく殺す人物になっていた。
年老いて周りの仲間は殺される事なく病気で死んでいき ついには一人きりになってしまった人生。
淡々と。
ロバート・デ・ニーロ(1943年生まれ) アル・パチーノ(1940...
大御所達が織り成す重厚感に胸アツ
Netflix配信作品というところで少し後回しにしてしまったが、マーティン・スコセッシ監督作品で、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演ということで遅ればせながらもいよいよ鑑賞。
これだけの大作ゆえ、ストーリー良し映像良し役者陣の演技良しで当然重厚感があり満足のいく内容だったのだが、それにしても上映時間210分は、かの名作「タイタニック」をもゆうに超える長編具合で少々疲れた。どれも重要なシーンにて、どこを簡略化すれば良いのか素人には想像の及ばないところではあるが、1本の映画を芸術性で測るならばやっぱり本作は長過ぎるかもしれない。
いずれにしても、言わずもがなだが「ヒート」での2人の熱い戦いを思い出し、25年の時の流れに感慨深いものを感じ胸が熱くなった。
今年最大の話題作!22年ぶりにデニーロとタッグを組んだスコセッシの...
途中ギブアップ寸前だったけど。
マフィアのヒットマンから見た「アメリカ現代史」
マーティン・スコセッシはフランク・シーランの人生と、
ジミー・ホッファ殺害への関与の疑いについて
映画にすることに、長年興味を抱いていた。
映画「アイリッシュマン」の原作はチャールズ・ブラントの
ノンフィクション小説、
「I H ead You Paint Hous es」を原作としている。
出演者は全員実在した人物です。
映画の中で、シーランと仲間たちが「ペンキを塗る」とよく言っている。
これはシーランの父親が塗装業をしていたことに掛けていて、
「殺人により血が流れて、標的の家の壁が血で汚れる」
それがつまりペンキ塗りは殺人の暗喩である。
また題名の「アイリッシュマン」はシーランの父親がアイルランド系の
移民であることから。
映画は冒頭でシーランが車椅子で、老人ホームからはじまる。
そして若い頃からの回想をしてゆく手法だ。
フランク・シーランという男。
マフィアの汚れ仕事の実行役でこの映画の主人公ですが、
20代の第二次世界大戦でも、非常に残虐性を発揮していて、
戦時中に人間形成がされていたのかも知れない。
フランク・シーランを演じるロバート・デ・ニーロ。
もう1人は、全米トラック協会組合員100万人を率いる委員長
ジミー・ホッファを、アル・パチーノが演じている。
そしてシーランに汚れ仕事を命じるマフィアの親分ブファリーノ・ラッセルを、
ジョー・ペシが演じている。
デ・ニーロとアル・パチーノとジョー・ペシの3人はCGによるメイクで
若返らせているので、
30代や40代から50代の頃の3人に会えたような喜びがある。
パチーノ演じるホッファは、当時、大統領の次に人気があったそうだ。
たしかに本物の写真をみてもスマートで美しい。
組合員にとって給料を上げ、待遇を良くする男・・だからヒーローだ。
アル・パチーノの演説シーンは人を惹きつける。
組合員同様に観客も魅せられる。
しかし組合員の年金資金を勝手に流用したり、権力を持ちすぎると
弊害も出る。
そこで汚れ仕事をシーランが請け負う。
ホッファはシーランを気に入って組合支部を任せるほどの親友になる。
(そんな時期もあった・・ということだ)
大統領にケネディがなると弟のロバート・ケネディの目の敵にされて、
ホッファのロバートへの憎しみは画面を通しても痛いほど伝わってくる。
ジョン・F・ケネディの暗殺をテレビで見つめるホッファの微妙な表情。
(内心で何を思ったか?)
印象的なシーンでは、トラックに代わって台頭して、
チカラをつけて来たタクシー運転手業界。
駐車されるイエローキャブが何百台も爆破されるシーン。
アメリカの黒歴史・・・驚くほど暴力的で声も出ない。
ホッファはシーランを気に入って労組支部を任せる程の親友だったが、
しかしホッファは1975年7月30日愛車を残して失踪する。
シーランがホッファを殺したと告白しているが、拉致した者がいて、
殺人の実行を行ったのか?
自白の信憑性も疑われるし、
アメリカ最大の「未解決事件」と呼ばれているが、謎が多い。
ホッファはアメリカ政府にとっても目障りな邪魔な存在だったと言う。
出る釘は打たれる!!
それにしてもフランク・シーラン。
あれ程の汚れ仕事(殺人)を侵しながら、最後は天命を全うして
老人ホームでなくなるとは!!
デ・ニーロの若造りも見所だったが、ラストの衰え果てた足腰の演技。
やり過ぎな程リアルで、やはり笑いを堪えた。
☆☆
製作費1億6千万ドルと言われる「アイリッシュマン」
マーティン・スコセッシ監督。
主演、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ。
210分の上映時間。3時間半です。
私がNetflixに入会した理由だったのに、やっと観ることが出来ました。
1億6千万ドルもの製作費を惜しげもなく供給したNetflix。
コロナ禍だったとはいえ凄い会社です。
スコセッシ監督は今年公開の作品が既に完成しているようです。
ディカプリオとのタッグ。デ・ニーロも出演。
老いを知りませんね。
楽しみです。
いぶし銀の演技が光る。、
派手なアクションは無いけどそれがいい
哀しきペンキ屋…
マフィア、ヒットマンも人間。彼らにも家族はいるし、友人もいる。飯も食えば、喜び、悲しみもするし、神だって信じる。家族に嫌われたくない。しかし、人を殺す。そこだけが一般市民と違う。友人であっても殺す。シーランやホッファなど実在の話、人物を全く知らないで見た。映画では失踪してしまったホッファを殺したのがシーランとなっているが真実はわからない。古きアメリカの闇の歴史が描かれている。いったい、政治家や警察含めて真の善人はいるのか?何と言っても、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシの渋味、迫力、醸し出す雰囲気が凄い。若返らせるCGにも驚くが、年齢に合わせた体の動かし方の変化なども見ていて面白い。友人であるホッファの暴走を止めることができなかったシーランの無念さ、ラスとの板挟み、殺しを告げられたときの諦念、そして静かに実行し、何事も無かったように戻ってくる。印象的なシーンだった。殺しておいて、ホッファの家族に励ます電話をしたことを後悔して止まない、どうして、ここまで非情になれるのか。それは自分の家族を悪い連中から守るため。そう言い聞かせて、生きてきた。しかし、肝心な家族は。。見舞いにも来ない、墓も棺桶も自分で買う。来るのは看護師と牧師だけ。哀しい晩年。何のために、誰のために命懸けで生き抜いてきたのか。。哀しき男の物語。
なぜデニーロは出番をゆずらなかったのか
デニーロ、パチーノ、スコセッシ。この三人が揃って仕事をしたという事実に胸をときめかせ、「面白くならないわけがない」と自分に言い聞かせ、ネットフリックスの限定上映という機会にも偶然恵まれて、映画館で鑑賞。
ずいぶん昔に、『ヒート』という映画でデニーロとパチーノは共演をしているが、二人が同じ画面に収まることはなく、会話シーンや撃ち合うシーンですら編集で処理してある始末。当時は「不仲説」がまことしやかにささやかれたものだ。ネットの書き込みでは、「演出」ということで落ち着いているが、釈然としない。
『ゴッドファーザー』では、この二人は親子の設定で、マーロン・ブランドからいちばん可愛がられ、甘やかされて愛国心にあふれまっすぐに育った三男坊をアル・パチーノが好演。初めはパチーノをキャスティングしたことに不満を抱えていた映画会社の重役が、有名なシーン(ダイナーで政敵を撃ち殺すシーン)を見て「あの新人はいいねぇ」と手のひらを返したように惚れ込んだ、なんてエピソードもあったそうだ。
大ヒットした映画の続編『ゴッドファーザー・パートⅡ』で、マーロン・ブランドの若かりし日々をデニーロが演じ、無名だった彼は一気にスターダムにのし上がる。パチーノは同じ映画に主演しているものの、デニーロの鮮烈な印象にかすんでしまっている。この二人が同じ画面に収まることはあり得ないので『ヒート』での共演は期待値マックスだった。そして、見たときの失望感も大きかった。「だって、あの二人が絡んでいないんだもの」…
無知を恥じるしかないが、『ボーダー』という映画でもふたりは共演しているそうな。映画の出来はあまりよろしくないようで。
結論から言うと、この映画で今回ばっちり共演している。ハグするシーンではパチーノが意外に小柄な人でデニーロと並ぶとまるで大人と子供だ。同じ画面に収まりたがらなかったのも何となく頷ける。特別なケミストリも感じない。
で、肝心の映画なんですが、まずネットフリックスの戦略に深い失望と疑問を感じたことが大きい。いったい誰がこの映画をタブレットやケータイの画面でちまちま再生して鑑賞するというのか。映画のスケール感と、ターゲットにする観客のマッチングがこれほどかけ離れた映画も珍しい。興行での成功より、明らかに「賞狙い」の話題先行型。長すぎるし、展開が重たすぎる。
デニーロは、集大成とばかりに、よぼよぼのじいちゃんから、若い時まで特殊メイクを駆使して演じているが、残念ながらデニーロ・アプローチを見られた満足感よりも不満のほうが大きい。70歳の老人が90歳の晩年を演じたところで観客は驚かないし、転んでも自力で起き上がれない老人は演技ではなくただのアクシデントにしか見えない。若い時の姿は見た目40歳ぐらいに若作りしているがこれも姿勢が猫背だったりして無理がある。その点、『アントマン』で若い時の自分を違和感なく演じたマイケル・ダグラスはすごいな、と改めて思う。
なぜ、デニーロ自身が勝ち取ったように、若手にチャンスを与えなかったのか。若きヴィートー・コルレオーネを演じた天才は、自らの若い日々を自分で演じてしまった。ものすごく残念だ。プロデューサーも兼ねているデニーロの、エゴだろう。
『マイ・インターン』で、清々しい好人物を存在感たっぷりに演じ、まだまだ健在を印象付けたが、この先はフェードアウトしていくんじゃないだろうか。役者として、枯れていく様を見ていくのはつらいものがある。映画館を出るときに、特大のポップコーンを持て余し、ごみ箱に捨てる気分。
そんな、残念さが消えない。
ネットフリックスでは、同じく限定公開だった『ローマ』が非常に満足度の高い作品だっただけに、その落差にも驚いた。そして、どちらの映画も映画館で見るべき作品だという印象は強い。
2019.12.10
労働組合とマフィアは仲良しだった!
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