きみの鳥はうたえるのレビュー・感想・評価
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ずーっと観ていられる
主役はもちろん、出演者みんなよかった。「僕」は情けなくて、だらしなくて、やさしい。そしてかっこいい。静雄はほんとにいいやつ。幸子はかわいいしほっとけない。
ラストの解釈は人それぞれだろうけど、半年後にはみんなバラバラだと思った。
観終わった後、ポスターで選ばれた写真に納得。好きなシーンだった。
青春時代の儚さは現在も変わらないかしらん
以前のバイト先で知り合った静雄(染谷将太)と同居生活をしている僕(柄本佑)。
いまは大型書店でバイトをしているが、無断でサボったりもしている。
同じ職場で働く佐知子(石橋静河)から誘われ、以降、静雄も含めて、三人で毎日毎夜、遊んでいる・・・
というところから始まる物語は、まぁ、話としてはそれだけ。
ふたりの男性のあいだで揺れる佐知子の心情や、男性ふたりの微妙な友情が、ダラダラとした生活のなかで描かれていますが、それはユルイといえばユルく、相手の奥深いところまで突っ込んでい行かないあたりの微妙な距離感があって、そこいらあたりがこの映画の魅力・・・
なのだけれど、この若者の生き方って現代のそれなのかしらん、と脳裏をかすめていきました。
気になったので調べてみたところ、原作小説は1980年代はじめに書かれたものなので(原作者・佐藤泰志は1990年に命を絶っている)、モラトリアム世代の青春時代に重なる。
バブルがはじける前の、社会に出る前の浮草生活が許容された時代ならば、こういう生き方も可能だったろうし、また、可能だった。
遅れてきたモラトリアム世代としては、かなり、これに近いような生活だった・・・と思う。
でも、現代でこんな生活可能のかしら。
社会に出るに出られない閉塞感からくる浮草生活ではないだろう・・・と。
現代を舞台にしたならば、退職後のアラ還世代の男女三人で描けば、納得もできたかもしれない・・・なんてことも思ったりして。
とはいえ、他者との深い関係を拒否・忌避しながらも、最後の最後に自分の中にある熱い気持ちを肯定する・・・という僕の変化が、青春時代特有の儚さでもって描かれた佳作です。
スマホの画面が割れていた。これを、評価すべきか?
スマホの画面が割れていた。という所、監督のセンスを疑う。
やはり、佐藤氏の作品は難しい。作品名「きみの鳥は歌える」
という作品名の「鳥」という言葉に躓いてしまった。「鳥」は
出てきたっけ?主人公が120まで数えたら…。という「120」
という数字さえ「どうして?」と思ってしまった。
石橋の映画での作品を観てみたいという気持ちもあったが「佐知子」と
いう謎めいた女性を卒なく演じていたと思う。可でも不可でもなく。
染谷の演じた「静雄」は、なんか他の二人を遠目で見ている感じで良かった。
もう少しひねくれた癖のある少年役でもよかった。映画の後半と原作の後半の流れは、若干違っている気がした。静雄が母親の所へ帰る件がなさすぎると思った。
原作では、もう少し「静雄」の出番が多いような。映画は、「僕」と「佐知子」の
別れの所で終わっているが。これで良かったのだろうか。
賛否が分かれるかもね…
レビューを見て、ちょっと不安になったんですが、監督と柄本さんのトークショー付きと知って行きました。確かにストーリーはグダグダしてて、何らかの感情を求めに行くと、カスってばかりかもしれない。でも、石橋、柄本、染谷の3人の役者さんの力量がすごくて、その空気感、佇まいを味わうだけで、もう満足でした。あと僕と大塚のからみが、個人的には好きでした。絶妙なあの間がいいんだよな。
ダラダラしてるが好きな映画
ストーリー自体にはあまり引っかかりませんでしたが、雰囲気が自分にフィットし、とても気持ちよく観れました。好きな映画です。
ダラダラした話で内容の割には尺もダラダラと長く、本来嫌いなタイプなのですが、ぜんぜん気になりませんでした。
若くて、何者でもなくて、何者にもなるメドも立たない3人が、コンビニで酒買ったり、夜道を歩いたりするシーンはおしなべてグッときました。
はっきり言って、自分自身の体験と重なるため、ノスタルジックなんですよ。あの、夜明けが近づいた夜空の青さとか、道路の街灯の感じとか。夜が明けるとシラけた街並みになるところとか。モラトリアムだが何かに向かってる訳でもなく、そして同じような状況の友だち同士で笑い転げながら夜を彷徨ったことのある人…つまり閉塞した青春を送ったことのある人は、なーんか胸を鷲掴まれるのではないでしょうか。
また、主演3人の顔がイイんですよね〜。柄本佑は、顔が汚くて超良い。色気があって、でも声が軽い。髪型が最悪に似合っておらず、それもまたいいんですよね。染谷将太はきれいな作りの顔ですが、なんかオドオドして奇妙な雰囲気。
石橋静河は、綾瀬はるかみたいに美人に見えるときもあれば、ブサに見えるときもあり、色気もあるんだかないんだかわからない。でも声は色っぽい。『夜空はいつでも最高密度の青色だ』でも味のある演技を見せてましたが、本作もいい感じでした。しかも似たような役どころだし。下流モラトリアム女子を演じさせれば、もはや右に出るものはいないのでは、と思わせるほどです。石橋静河、顔が好きとかではないんですが、この2作ですっかりファンになりました。
柄本佑演じる主人公は名前がなく、それが主人公を象徴してます。まだこの世に形を持って存在出来ていない。彼は自分にコミットできず、気持ちに触れることを避けて生きています。彼は苦悩できない。情動を感じる痛み、苦悩する痛みを極端に恐れている、臆病でナイーブな男なんだなぁと感じました。
そんな彼ですが、佐和子と関わることで、作品の終盤で小さな変化が生じます。逃げ続けた男がついに勇気を振り絞る瞬間が描かれており、実に胸が熱くなりました。また、映像や演出が優れていて、見事な盛り上がりを見せるのです。まさに映画の醍醐味、という感じで、大変素晴らしかったです。あと、やはり恋は良いですね。
演出も印象に残りました。語り手ではない人をアップにするとか、撮り方がユニークで印象に残りました。画面の陰影も雰囲気ありました。
わずかにイチャモンをつけるとすれば、主人公たちは閉塞してる割にはカネ持ってるな、ってとこでしょうか。けっこう佐和子が支払ってる場面が多かった気がしますが、店長からカネを引っ張ってきてたのですかねぇ。
不愉快な感情しか残らない。
佐藤泰志の原作は未読だが、「そこのみにて光り輝く」が小説も映画も傑作だったので期待はあった。
しかし。
これは原作もこんな薄っぺらで堕落した話なのか?
この三人は無気力がイカしてるとでも思っているのか?
バイトだからって精気のない仕事ぶりが許されるのか?
金もないのにキャンプとかどんだけ呑気なんだ?
佐知子という女には節操がないのか?
この三人には、「そこのみにて」の主役の二人のような、貧乏だけど筋は失わない矜持はないのか?
上昇志向がないのは構いはしないが、あんな生き方をさも美しいかのように描くはよしてほしい。いい役者つかいながらこんなもの撮りやがってというのが正直な感想だ。
このあと原作を読むつもりだったのだが、気分は萎えた。おそらくタイトルの意味はそこにあるのだろうが。
時間と金の無駄
学生でもないのに自堕落で無軌道な生活を送る男女。何の魅力も感じられない「僕」になぜ「佐知子」が安易に身体を許すのかも理解不能だし、芸達者の染谷将太を起用しながら生気に乏しい「静雄」はもったいない。佐知子は店長との関係清算を機に書店を辞めた後も一人暮らしをしている様で、コンビニでのおごりなど金回りが良いのも不思議。周囲の年長者たちも一人として人生が充実しておらず、鬱勃とした自嘲が三人の刹那的な生活を助長する。登場人物の誰にも共感できず、敢えて原作から変えて函館に写した舞台もまったく魅力的に見えない。感性が近い人だけを対象とした内輪受け狙いか。
ジェラシー
最強のアンサンブル映画
つまらない!と切り捨てるか、染みると感じるか
つまらないと切り捨てるべきか、じんわりと染みると言うべきか…正直迷う。特に前半は劇的展開もなく現代社会の一部分を淡々と切り取ったような平坦な物語なので、興味を持てなければ100%つまらんだろうし、こちらから積極的に何かを読み取ろうとしなければ恐らく寝ちゃうような作品かも。
個人的には「オーバー・フェンス」を見ていて、なんだか漠然とした繫がりや雰囲気も似ていたので、かなり集中してみることができたけれど、表情を追ったショットなどどう捉えて良いのか分からず不安を感じたところが結構あったので、いまいち作品に入り込めずに見続けていたような気がする。おそらく、よく分からないけど何となくこうかなぁーという印象を与えることがこの作品の意図のような気がしたけれど、あまりにも漠然とした展開が長すぎるように感じた。
後半は、漠然としていた前半の思いを解決してくれる内容で、すごく引きつけられた。
後半や終わり方だけでいうと、相当いい映画だと思う。俳優陣のパフォーマンスも素晴らしかったし、静を貫き通した映像にも非常に好感を持てる。それほど多くはない音楽もすごく効果的だったと思う。ただ、前半の長さを思い浮かべると、トータル的にこの作品をどう評価したらよいのか悩ましい。良き作品には時に忍耐を要するとは思うけれど、なんか違うような…いい作品だったとは思いますけど─。
スクリーンの向こう側に行きたい
居心地の悪い傑作
観ている間中居心地が悪かった。もう年を取ってしまった私は、当然こんなの長く続くわけがないと知っているし、楽しいけど完全に分かりあえるものがない3人だと知ってしまっている。それに気がつく過程をずっと見せられるのは...つらい。
しかしそれはこの作品が圧倒的な力を持っているということであり、特にラストは最高にすごいと思った。あああそこまで描いてくれて、そしてあそこで切ってくれてありがとうと思った。原作読んでないからどういう判断なのかまでは知らないが。
あの3名は強いな。あの自分でもなんだかよく分かってない役は柄本佑にしかできなかったろうなと思った。ああいう人好きじゃないけど。染谷将太さんは立ってるだけですごいし、石橋静河さんはやけに女っぽくなってて強烈でした。
萩原聖人、うまく枯れたな...と思った。
しかしあんなアレンジの「オリビアを聴きながら」知らねえよ!と思ってしまった。年だな...。
都会でも田舎でもない街に馴染む役者たち
とてもリアルな時間だった。
最初に出会ったのは僕で、危ういバランスの3人が
居心地よくて、楽しくて、きもちよくて、でも絶対長くは続かない。
ラスト、なにも言えない、あの沈黙にどうしようもない気持ちがごちゃ混ぜになって吐きたかった。
なんか落ち着いて考えたら佐知子は店長と僕の間でゆれていたり、店長を清算したとおもったら静雄と関係を結んでいたりと、なんともふらふらしている。でもそれが
女なんだろう。嫉妬させてみたり駆け引きだったり、したくないけどしてしまうし、よく分からない関係をはっきりさせたかったりさせたくなかったり、わけが分からないのだ。周りにも本人にも。そんな女に振り回される男もいればそんな女を作り出す男もいる。人を好きになるのは、人が人と付き合うのは難しいのだ。
函館という今作の舞台にかんしては、
都会でもなく田舎でもない、この街で起こる惚れた腫れたはリアルで良かったとおもう。原作の舞台は東京だそうだが、田舎の人間には「東京」という場所にはなにか不思議なフィルターがかかるのだ。きっと舞台が東京だったら、こんなに感情移入できなかったとおもう。
とりあえず今は原作が読みたい。
あ、書店の同僚の男の人間の小ささすごく好きだった。
あんなどうしようもない奴にイライラしてほっときゃいいのに同じ土俵でたたかってしまう愚か者。
実際にいたらめっちゃめんどいけど、今作では一番の愛されものではないのだろうか。
ほんとちいせぇよな笑 かわいいわ笑
もう一回みたらまた違う見方ができるのかもしれない。
とりあえず原作よみたい。
路面電車
映像の色や音楽もスキです。
原作を知らないのですが、ミニシアターには
ぴったりの作品だと思いました。
石橋さんが美しく歌もダンスも上手く、フィーリングという物はどのタイミングで誰に合うかは わからない
所が楽しい。性格が良いから仕事が決まる訳でもなく、
自分に合う人生き方を見つける大変さも 感じました。
染谷くんのお兄さんが萩原さんではないか?とかその先の想像も色々考えてしまいました。
タイトルが関係なくなっている(著作権だと思うけど)
著作権の関係上かビートルズの曲が物語との関係が全く無くなっている。
この映画の監督自体が北海道出身で佐藤泰志さんと縁深い函館を使っての舞台チョイスかもしれないが安直な気がします。
原作の息苦しいまでの空気感を現代に置き換えるならやはり東京の閉鎖的な世界観が適切だと思いました。
ただ、傑作ですね。
この監督と仲の良い3人の役者さんが演じてる場面が素晴らしい。 が故に、ほかの脇役陣がどうしてもステレオタイプに見えてしまう。代表的なのが萩原聖人
役者に限らず、美術も自分が好きな部分はものすごくリアリティを感じるけど、その他はすっごくアッサリ…と言う具合
3人との関係性がこの奇跡みたいな演出を埋めたんだと思う。
そう思うと、濱口監督の演出と差を感じてしまう。
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