「ISSで働く宇宙飛行士たちの名誉棄損」ライフ(2017) うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
ISSで働く宇宙飛行士たちの名誉棄損
いくつかの致命的なミスによって、人類が存亡の危機にさらされる。そのきっかけを描いたストーリー。大げさに言えば、そんなとこだろう。
『エイリアン』で見事に描かれた、人類と系外生命体との死闘。それは、優れたサイエンス・フィクションであり、極上のスリラーたりえた。
その系譜を受け継ぎ、ある意味、『遊星からの物体X』への橋渡しとも言えるラストへつながるこの作品。決定的に弱いのは、やはり人間の描き方だろう。
みな優秀な頭脳を持ち、高い倫理観とモチベーションによって支えられた国際宇宙ステーション内の、静謐な空間は一瞬にして無秩序の、カオスへと姿を変える。想定外の、地球外生命体によって。テーマはとても興味深い。しかし、彼らアストロノーツ達の行動が、あまりにもお粗末すぎて、見ているのがつらくなってくる。本当に、こんないい加減なことをやっているんだろうか。
映画として致命的に弱いのが、キャラクターをある程度色づけたと思ったら、その都度死んでいくことだ。つまり、このジャンルに特有の、最後に生き残る人間の、情報の無さったら、感情移入をはねのけているとしか思えない。
例えば、郊外のロッジで、若者たちのパーティーが一人ずつ殺人鬼に殺されていくよくあるプロットでは、キャラの薄い、愚かで陽気なバカップルが最初の毒牙にかかる。この映画では、そこに至るまでに、ていねいにその人物の人となりに接近し、そして犠牲になる。つまりその時間の分だけ、生き残る人物の人となりは、語られることなく進行していく。
また、エイリアンだか、モンスターだか、「カルビン」と名付けられた生命体は、謎の進化を遂げていき、あっという間に手に負えない怪物へと成長する。そこに至るまでの、科学者たちの対応が、お粗末すぎて興ざめを通り越して白けてしまう。密閉された宇宙船モジュールの中で、火を使ったり、燃料を使い果たすまで、敵を攻撃したりするだろうか。何のために実験棟が分かれていて、いざという時のために切り離せるようになっているのか、彼らは知らないとでも?
幸いにして、続編が製作される様子はないが、作る気マンマンのラストもいただけない。せっかくいい役者がそろったのに、残念な出来栄えだった。せめて人々の印象に強く残るものでもあれば、すかさずデッドプールでいじったであろうに。それもかなわなかった。