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率直に言って、劇場公開されるレベルにない作品だ。
本筋はボーイ・ミーツ・ガールの物語だ。多少の粗があっても、恋する若い2人にときめきがあれば良いのだが、この恋は真摯に描かれない。
出会いは営業と得意先の関係から。出会うと直ぐに彼は彼女への猛アタックを開始するのだが、「なぜ彼女」が無い。画面上は容姿を気に入っただけにしか見えないのだ。果敢に家までつきまとう彼の姿はストーカーに見えなくもない。
これを受ける彼女も、容姿以外に「なぜ彼」が見えてこない。
彼の会社以外に営業をかける描写も無く、他の男性と接することも無い。取捨選択もなく彼を好きになる単に世界が狭いだけの女性に見えてしまう。
とは言え、主役2人を演じる俳優はフレッシュだ。本作の救いに感じる。
それだけに、ネイティブな森崎ウィンの日本語を片言にする演出は何を考えているのか。日本語流暢な外国人社員なんてまま居るし、片言にする話上理由は無い。
脇の人物達については、芝居も人物像もハッキリ酷い。
彼女の上司。新入社員に公私混合の恋愛を煽る大概な人物だが、体調を崩すタイミングも素晴らしく予想通り。
彼の上司も、考えられないほどペラペラな人物で、芝居もびっくりするぐらい薄い。実存する人間には到底見えない。
一番酷いのは彼女の叔母さん。
彼女を護ろうとする行動や言動は女優のオーバーアクトもあって不気味としか言いようがないが、その理由は「外国人との結婚が上手くいかなかった」というざっくりした情報があるだけで、具体的な理由の説明がない為、何を考えているのかサッパリ分からない。
叔母さんと彼女の関係修復は主題の一つだが、上記のとおり何をクリアすれば良いのか分からないので話の向きが見えない。脚本が映画のレベルで全くない。
しかし、何より呆れたのはクライマックスである鯨のジャンプが明らかにアーカイブ映像で、彼・彼女と同じ画面に収まっていないこと。一体何を見せたい映画だったのか。合成でも何でも良いから、それは必要な画だった筈だ。
観光的映像だけのベトナムのパートも薄すぎて、ベトナムの紹介にもなっていない。
作品の出来も大概だが、それ以上にテーマに対して作り手が真摯じゃないのは頂けない。
余談だが、歴史ある某映画館のラストショーがその作品では哀しいじゃないか。