劇場公開日 2018年3月30日

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レッド・スパロー : 映画評論・批評

2018年3月27日更新

2018年3月30日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

ローレンスが女スパイ役を名演!“おそロシア”なエクストリーム・スパイムービー

33年間CIAの捜査官だったジェイソン・マシューズによる原作「レッド・スパロー」が実写化された。主人公はアメリカ人ではなく、ボリショイ・バレエ団でプリンシパルを務めるロシア人女性のドミニカ。本番中に負った大怪我でバレリーナ生命を絶たれた彼女は、国からの援助を打ち切られ、母親の治療費を捻出できなくなってしまう。ロシア情報庁の幹部である叔父・ワーニャの指示で、スパイ養成学校へ送られた彼女は、女スパイ(スパロー)としての才能を開花させていく。

ソ連やロシアのスパイが登場する映画は珍しくないが、彼らがどうやってスパイになったのかはなかなか描かれない。それだけに、シャーロット・ランプリングが扮する冷徹な教官のもと、若い男女が訓練を重ねて洗脳され、お国のために身も心も差し出すようになるスパイ養成学校のパートはとても新鮮で見応えあり。スポットライトを浴びていたモスクワ、スパイ養成学校のある雪に閉ざされた僻地、任務のために訪れてターゲットと禁断の恋に落ちるブダペストという、ドミニカの状況に応じて変わるロケーションも効果的だ。

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ドミニカを繊細かつ大胆に演じるのは、タフで美しい若き名女優・ジェニファー・ローレンス。彼女の太すぎず細すぎない175センチのメリハリボディは、ハニートラップを必殺技としつつ、腕っぷしも強い女スパイ役として説得力十分。その武器が最大限に生かされているのは養成学校で、自分をレイプしようとした男性優位主義の愚かな訓練生を返り討ちにするシーンだ。教官や生徒の前で全裸になって脚を広げ、「とっととやんなさいよ(意訳)」と挑発すると、情けなくもその男は萎えてしまうのだ。ローレンスのキャリアにおける最初のフルヌードが、男に抱かれるためではなく、その迫力で男をひれ伏させる肉体として描かれた意義は大きい。

ドミニカがターゲットのCIA捜査官ネイト・ナッシュ(ジョエル・エドガートン)と駆け引きをしながら次第に惹かれ合う恋愛模様や、ナッシュとともにロシアから狙われる立場となってからのスリリングな展開は王道のエンターテインメント。一方で、ドミニカが受ける拷問シーンや、体に良くないものを確実に注入していそうな殺人マシーンの異様な強さなど、 “おそロシア”という形容がしっくりくるエクストリームさも本作の魅力である。真実はさておき、「分厚く赤いカーテンの向こうで何が起きているのだろうか?」という我々の好奇心を大いに満足させてくれる作品だ。

須永貴子

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