三度目の殺人のレビュー・感想・評価
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器
あの人は器が大きいだとか、小さいだとか、よく耳にする言葉ですが、本作の中では“器"がキーワードであると思います。
誰かのレビューに、役所広司さん演じる容疑者の三隅そのものが“器"なんだと書かれていました。
私もそう思いました。
三隅は自分自身は生まれてくるべき人間ではない。生きていても傷つけるだけだ。というようなことを劇中で言っています。
一体彼の過去、生い立ちにどんな事があったのか。これがとても気になりました。
作品の中で描かれる、裁判に関わる人間達は、裁判官、弁護士、検事。どの立場にいる人も事務的で、己の評価、己の都合で仕事をしているかのように描かれていました。もしも、これが真実であるならば、私はこの国で絶対に裁かれたり、あるいは裁かなければいけない人間と関わるのも嫌だ。と思いました。
法というものがありながら、結局は人間という大したわけでもない生き物が人の生き死にを裁くなんて、よく考えればアホらしくも思えてきました。。。まぁ、無くなってしまうと大変なんですけどね。
福山さんは相変わらずカッコ良かったけれど、役所さんと絡んでしまうと、やはり飲み込まれてしまいますね。どちらも大好きな方々なので、演技に見惚れてしまいました。広瀬すずちゃんもただの可愛い女性では無いなと、初めて演技を見て思いました。今後が楽しみな女優さんです。
簡単な話ではない映画でしたが、見ているうちに心を持っていかれてしまうくらい魅力的な話でした。
なぜ「三度目」なのか?
・他人ごとじゃない法廷ドラマ
・日常のなかで「君って◯◯だよね」って言われて、一理あるけどちょっとずれてるなと違和感を感じるときがある
・それは人が自分のことを正確に見れていないじゃんって感じるから
・要するに人は、それぞれなりの視点で他人を推測している。
・ときにはこうあってほしいという願望もある。
・それでいておのおのは自分のことをあけっぴろげに話すことはない。よっぽどじゃないと答えを出さない。
・だから誰も他人の本当の姿を捉えることはできない。
・できないがこれが一番近いであろう答えを出すだけ。
・人間関係にはそういうあやふやさが大前提としてある
(親子であっても、踏み入れられない領域がある)
・司法の場ではそれでも白黒つけたり数値化して結論を出そうとするから、妙なことになる。
・かえって人間の捉えきれなさがあらわになる。
・他人に対する疑いを晴らすためには、
自分の価値観や時間やすべてを投げうって相手に寄り添って相手を知らないといけない。
・実際はそれぞれ自分の生活もあるし、損得感情もあるし、相手の本当の姿を知り尽くすことは現実的には不可能。
・それでもなぜ人は他人が気がかりなのだろう。
・被告人のキャラクターは、空っぽの器と表現された
・被告は自分の主体性よりも、相手の意向を優先した生き方。
・そして、理不尽に反抗し続けた人生だったのではないか。
・自分が法律的に死刑を免れ生き残ることが、彼にとってはそれもまた理不尽だったのではないか
・つまり、理不尽に反抗するために自分を殺したのではないか?
・それでも自分は生まれてきてよかったと思いたかったのではないか?
・そこが強烈な動機だと思う。
・殺人が誰かの役に立つ状況がある。「あの人の役に立ちたい。」だから、彼にとって殺さないではいられない状況になる。
・被告は純粋に「誰かの役に立ちたい」と思ってただけかも。
そして「役に立たないとだめだ」とも思っていた。
・自分の無価値観に苛まれると人は、自分を肯定するために、どんなことでもしてしまう。それがたとえ殺人でも。
・それは誰にでも起こりうる。
・これでもかというほど、人の心を見つめた映画。
・答えがないことが答えのような映画。
・とにかく観終わったら、ほかの観た人と話がしたくなる良作。
役所広司の存在感が重い
弁護士の福山雅治と殺人者の役所広司
一度目の殺人 若い頃、殺人を犯す。
その後工場で真面目に働く。
二度目の殺人 親しくしていた娘に対し性的虐待をしていた社長を殴り焼き殺す
この裁判において福山弁護士と対峙する
最初は解雇された社長に対する恨みで殺したと白状
しかし、裁判の最後になって急に自分はやっていないと主張し始める
それは社長から性的虐待を受けていた娘がその事実を法廷で話さなければならなくなったことを防ぐためだった
三度目の殺人 犯罪を否定することで情状酌量の余地やその他の議論がなくなり自らを殺す
是枝裕和のおくる心理サスペンス
福山vs役所だけでも興味をそそる。
全く笑うところがないシリアスな映画だ。
難しいし、考えは観るものの側に委ねすぎている。
よく言うと攻めている。
海街ダイアリーで子役のような演出をされていたすずちゃんを敬意を持って福山、役所と同格に扱っている。斉藤由貴もよかった。
勝ちに拘るエリート弁護士(福山)がサイコパスな被告人(役所)に翻弄され真実もわからないモヤモヤしたまま終わらしている。
役所と福山のアクリル越しの接見で合わせ鏡のような演出も過去の是枝作品でない斬新なもの。巨匠になっても攻め続けている是枝裕和からは目が離せない。
原作読んでみたい
地上波録画を見ました。原作も上映も見ていませんが、だいぶ省略されている?
役所の人物描写、一度目の事件に至る心情、鈴の足の背景、手の力、カナリア、色々と伏線があるのに何も回収されていない。これでは根拠を持った想像・解釈もできない。『視聴者ごとの解釈』に至るまでの材料が端折られすぎている。
面会室の顔が重なるシーン、最後の神々しさ、表現したい事は想像できる気がするが、そこに繋げさせる材料が少なすぎる。
良心・後悔・愛情・不条理、テーマはすごくわかるのにとても残念。
揺らぎと論理
正直言って全く意味するところも、意図するところも理解できず、ストーリーの展開も結末も分からなかった。この点が監督の意図するところだとすると、この映画の評価はもっと高くしなければいけないし、そうしても良いだけの説得力と画面の緊張感があった。それはひとえに役者たちの演技力と演出、そして何よりもそのシナリオにあるのではないか?シナリオに混沌のを付加する時は通常精密に構築した論理を一度解体し組み立て直す。この手法だと論理性は失わぬまま監督だけだ理解できるロジックで物事が進み、最後の結論で観客がそのパーツを組み立て直したり、与えられた事実で一気に時制に整合性が出たりする。しかしこの手法は初見の観客は最後まで手掛かりなく、ゲームの進行のように進みストレスが倍増する。最後まで付いてこれない観客が生ずる。しかし本作は時系列は極めて明確だが起こっている事象が揺らぐのである。その為観客は最後まで飽きることなくエンディングまで緊張感を維持して連れて来られる。そして最後にモヤモヤだけが残り置き去りにされる。勿論その最後には何処に何がテーマとして眠っているかは薄々気が着いてはいるのだが、どうもその姿が見えぬまま放置される!そして考え込む。そしてこの考え込むモヤモヤ感がひとえに監督の狙いだとしたらこの映画は監督の美事の勝利で、その事実、その内容は二次的なお楽しみに過ぎないのである。
タイトルなし(ネタバレ)
殺人は2回なのになぜ「三度目の殺人」なのか、本当は何があってなぜ殺したのか、十字やカナリヤの意味、一切明かされないまま終わってしまった…
だからといって意味不明とかつまらないとかそういう単純なものではなくてそれこそ本当に見た人がこうであってほしいと思うストーリーにできあがるある意味完成度の高い作品だと思う。
いろんな人のレビューや解説を見るとなるほどと思うものもたくさんあって面白い。
けど私は答えがほしいタイプなので合わなかった。
真実は…
タイトルなし
地味だけどじっくりとふかい
是枝監督の、ある瞬間で観客に「あっそうかそういうことか」って自然にふに落ちさせる、情報の散りばめ方や集約させる作りはホント凄いなぁ。
人間の持つ逃れられない社会性と、裁判のあり方司法のあり方批判と、他人をどうしてもガワでしか見られない人間の底の部分に焦点を当ててて、すごく好みのテーマ。
欲を言うなら広瀬すずの母親、父親役への目配せがもう少し欲しかったかな?感情移入させることで、のちの展開で犯人の犯人性への懐疑を観客に呼び起こせるのでは。
起伏を嫌ったのかなぁ。
あとこんなに「普通」の広瀬すずを初めて見た。それでも可愛いのすごい。
俳優役所広司、圧巻の演技です。
解雇された工場の社長を殺したとして逮捕された殺人前科のある男。その男の弁護を引き受けた弁護士は面会を重ねるうちに、男の犯罪であることを疑いだし・・・と言うストーリー。
福山雅治と役所広司主演のサスペンス。役所広司の演技は流石ですね。個人的な好みではありますが、今一番の俳優ではないでしょうか?
裁判に勝利するためのテクニックのみに拘る福沢演じる職業弁護士が、役所演じる容疑者に振り回されます。怒り、戸惑い、困惑しながら、いつしか容疑者の迷宮のような精神を彷徨うことになります。
彷徨うのは弁護士だけではなく鑑賞者である私自身も同様で、単純に「真実を知りたい」ではなく「彼が何を考え、何を語っているか」が知りたくなり、映画に没頭することになります。
正直、エンディングは賛否両論・・・ではなく否定的な意見が多いとは思います。しかし、私としては割りとポジティブでした。前述の通り「真実が知りたい」ではなくなっていたからかもしれません。
エイナウディの世界
【是枝監督が法廷劇で観客に問いかけた事】
今作は、エンターテインメント作品ではない。
劇中、観る側を誘導するような音楽も殆ど流れず、静に三隅(役所広司)が犯した過去、現在の事件及びそれに関わった人々の姿が描き出される。
但し、そこから分かり易い物語が始まる訳でもない。
同僚の摂津(吉田鋼太郎)から安易に三隅の事件を引き継いだ重森(福山雅治)が、三隅の二点三点する供述に翻弄されていく様が面白い。
今作のクライマックスは(多くの方が述べているが)摂津と重森が接見室の強化ガラス越しに遣り取りする場面であろう。(あの、反射するお互いの姿が反射する映像も含めて)
家族の姿を描く事に拘る是枝監督が、疑似親子の姿を描こうとした法廷サスペンス。
相変わらず、観客に解釈を委ねる是枝監督の姿勢は貫かれている作品。
<2017年9月9日 劇場にて鑑賞>
〈20191122 良い夫婦の日に追記 お二人の方から観賞後、二年経って共感を頂いて思い出した苦々しい事。今作、上映初日の土曜日の朝一、観賞中、一つ隣から聞こえて来た鼾。暫く我慢していたが、小声で寝るんだったら他の処でお願いしますと注意したら、後から家人から刺されたらどうするの と叱られ 何で?皆困っていたじゃないと観賞後、反論した。こういう場合、皆様はどうしているのでしょうか?私は注意します。まあ、疲れていたら眠くなるかもしれない作品の造りではあるが、きちんと見て居れば眠くはならない作品レベルだったので。〉
面白かった。男性陣は演技力が高い俳優が多く良かったのだが、斉藤さん...
面白かった。男性陣は演技力が高い俳優が多く良かったのだが、斉藤さんと広瀬さんが残念。もっと演技力のある女優さんなら☆4.5にしたかった。広瀬さんは他の作品よりはマシだった気はするが、声が残念なのと演技力の差が他の方とはだいぶ差があった。だから他の俳優
さんと違い2人の演技は引き込まれなかった。福山さんの子供役の女優さんがとても良かったのでこれからが楽しみ。
映像手法が面白いところも良かった。ただ、何回も観たいと思う作品ではなかった。
真実の行方+ライフ・オブ・デビッド・ゲイル割る2
裁判官、検事、弁護士、誰も真実には興味が無いという現実
いや、そこまでは酷くないのかもいれないが、実際問題として司法システムは真実を追究するための構造をもっていない。これまでに法廷をテーマにした映画は数多くあるのに、今までに無い新しい切り口の法廷映画になっていて非常に興味深かった。
考え得る真実のパターンは何通りもあるのだが、冷静に検証すると可能性が高いのは2通りに絞られる。にも関わらず、他のパターンもあり得そうに見えるのは、ひとえに役所さんの演技の賜です。コロコロ証言が変わる役どころなのに、真実を語ってるように見えるんですよ。凄くないですか?
ただ、素人の三隅がこんなに真実味のある嘘がつけるのは不自然ですけどね。
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