マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
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面白かった
二時間ほど掛けて出したリーの結論が乗り越えられないと泣く姿はぐっとくる。あのシーンを観て、落ち込んでいたり閉じている人に安易にただ前向きになればいいじゃないとかもう言えない。
息苦しく感じはじめて来たリーとの生活に不満を抱くパトリックが離れて暮らす元アル中の母と母の新しいフィアンセとの新しい家庭との暮らしに期待を膨らませていたのにそこはもっと息苦しい不生活になりそうなシーンのあと、リーがいい母親になってたみたいで良かったじゃないかと言ってパトリックが僕を追い払う気?!と叫ぶシーンが随分と自分勝手に見えた。二股の関係を続けたいだけじゃんと。
Manchesterd By The Sea
主演男優賞をとったケイシー・アフレックが、重い十字架を背負った男の孤独をとても自然に演じていた。
演技ではなく、彼自身、何かを背負って生きているのだろうね
映画は、淡々とと兄の死と共に生まれ故郷に戻り、兄からの遺言で兄の一人息子(高校生だが・・・まだ、また子供)の遺産後見人にされた弟の話です。
全体的に、重い暗い空気が、ずっーと漂っている映画でしたが、彼の甥っ子が、わざと友達と遊んで父親の死と向き合いたくない気持ちや彼を心配し兄との暖かい想い出と辛い辛い自分砂自身の過去と向き合わなくてはいけなくなった彼の気持ちが、痛いほど伝わってきた重い映画だった。
終わりかたが、なんだか呆気なかったけど・・・でも、やっぱり観て良かった映画です
帰郷
悲しい過去を持つ男が兄の死をきっかけに悲しい出来事のあった故郷を訪れる話。
やさぐれていても悪い人間じゃないのは判る主人公。
過去の事故から決して逃げているわけではないし、自分なりに考え進んでいるのに、16歳の甥っ子も勝手に離れた兄嫁も自分のことばかりだし、別れた元嫁も自分の心を救う言い訳を投げてくる。
それらを全てを受け止め最善を考える主人公の姿が痛く、強く、優しく、人間味に溢れているが彼の心こそ綱渡り。
ジョージがいなければ救われなかった。
過去と現在、絆と縁
過去の悲惨な事故から立ち直れずにいる主人公が兄の死をきっかけに家族や友人達との付き合いを通して少しずつ変化していく。
ケイシー・アフレックの演技もさることながら、さすがのミッシェル・ウィリアムス。私は今までにあんなに凄い泣きの演技を見たことがない。
海沿いの小さな町
だから、事故の事も離婚も兄の事も、隠しようも隠れようもない。
元妻にばったり出くわすような町。
リーは自分が幸せになってはいけないと信じ込んでいる。元妻は自分のひどい言葉でリーを傷つけた事を謝りたいと思っているが、リーは彼女から許されたいとは思っていない。
話さない男の傷は癒えにくい。自分と他人を傷つけることは、一番癒しから遠い事ではないかな?
音楽がしっくりこないところがあったが、演技、風景、海と町の空気、何気ない会話がとても良かった。
ふたりの船出
冒頭に現れるリーとパトリックでこれがふたりの映画だと分かる。
そして観終わると映画がいわゆる感動としての「赦し」や「癒し」を描かないからバッドエンドなのか?とも思えるがそうではない。
映画の中、リーの仕事の最中に依頼主が救難信号も出さずに海に消えていった男の話をするが、それが示唆するのは「今はどうしようもない心の傷もいつかはふいに消えてしまう」だろう。
ラストでワンバウンドのキャッチボールをするリーとパトリックの姿はこれからもぎごちないながらもふたりの関係が続いてゆくのを暗示している。
ふたりは一緒に船出をしたのだ。故郷のマンチェスターの海から。
これが、この映画の微かな「やさしさ」だ。
その立場になった時
人には人生のドラマがあり、
その立場にたった者だけが経験する
出来事があります。
本作では、リーが自分の油断から
とんでもない経験を昇華させていく
ストーリーです。
主人公は誠実でいいやつでした。
けれど、周りがさむすぎます。
体だけ大人の甥の世話や
新しいパートナーの子供を身籠る
元妻のシーンなど
まぁ私には無理ですね。
あれだけの経験をしてこんな周囲だと
多分つぶれます。ああいう態度や行動は出来ない。現実感がない。
なので、
あまり共感できませんでした。
リーには乗り越えて欲しい。あの悲劇から。
バッバッバッっと、調べてみた。「by the sea」? …海を越えて?
マンチェスター・バイ・ザ・シーって町の名前と知って驚き。
リーという男が、どうもうだつが上がらん奴が主役だなぁと思い、見続けた。
彼の壮絶な過去を知り、話にスーっと入り込んだ。
作品最後の彼の言葉「のりこえられない。」という一言に涙が止まらない。
話は、パトリックの成長とともに描かれている。
この作品を見る際に、時系列が過去に戻ったり、現代に戻ったりする。
出演者の配役名をしっかり覚えておきましょう。話の展開が判らなくなって
つまらない作品に終わってしまいます。ご注意を
途中で、パトリックがパニック発作に陥る場面、リーにとっては、ボストンに
戻る方が良かったのか、パトリックはどうなるのだろう。
マンチェスターバイザシーという町が、いつも曇っているところが印象的でした。
うだつの上がらない雰囲気と目、そして間が最高に良かった!
主人公リーが過去の罪を背負い、自分を責め続け心を閉ざしたまま生きて行こうとする悲しいストーリーだが、全体に醸し出される優しい雰囲気が、重さを感じさせない。
私が最も印象に残ったのは自分がおかしたミスを警察で告白したあとのあのシーン。
楽になれた方がどんなに良かったか。しかしそれは許されず、その後は自身の傷を癒したり幸せを求めることは許されないと思って生きて行く。
この悲しみを背負うシーンで流れる音楽は、泣くところを教えてくれる感じだったのに、つい引っかかってしまった。
自分を傷つけるように短絡的にトラブルを起こしていたリー。理由が解るまでは、単に短気で暴力的な人なのかと思った。目があっただけでも周りから避難されていると常に感じていて、ああすることで、抱えきれない自分を守っていたのだろう。
また、最も傷ついたであろう元妻ランディは、ずっとリーを責め自分を責めていたが、相手も自分も「許す」ことで前へ進もうとしていて、その強さは対象的。ランチしよう少しでも楽になろうと誘った元妻の言葉を、リーは心に入れようともせずに逃げるように去っていったのだから。
ずっと同じ場所に立ち止まっていたいリーにとっては、新たな希望を見出す元妻を許せない感情が渦巻いただろう。
パトリックの親代わりを引き受けようと葛藤しながらも、どうしても未来へ踏み出せないままリーとパトリックが思い出の船で釣りをする。このシーンでは、二人の背中に孤独が映され、まだまだ時間が必要なのだと伝わってきた。
マンチェスターの海や家並みは本当に美しく、優しく、暖かく、変わらずずっとある故郷に、哀愁と少しだが希望がみえたように思う。
ジョン・フォードの男たちを彷彿とさせる男泣き
本年度米国アカデミー賞の主演男優賞とオリジナル脚本賞を受賞した作品。謳い文句は「癒えない傷も、忘れられない痛みも。その心ごと、生きていく。」
ということならば、男の再生の物語なのか、と思いつつ・・・。
米国ボストンでアパートの管理人(というか雑役夫)をして、ひとり暮らしているリー(ケイシー・アフレック)。
彼のもとに一本の電話が入る。
かねてから心臓を病んでいた兄ジョー(カイル・チャンドラー)が突然亡くなったという。
故郷である海辺の町マンチェスターに戻ったリーであったが、彼にとってその町は忘れることのできない苦い経験のある町だった・・・
というところから始まる物語で、映画前半で、リーの過去のも描かれ、兄の息子、16歳のパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人になることが兄の遺言で示され、どうしてよいかわからなく行き詰まってしまうリーの姿が、その後描かれていく。
非常に丁寧の撮られているのだが、小説でいえば短編小説といったところ。
自分も兄も家庭は崩壊している(兄の方は、それほどでもないのだが)。
かてて加えて、ふたりの叔父もネブラスカかどこかに移り住んでいる(映画には一切出てこない)。
そんなバラバラな家族の物語で、これが最後にうまくまとまるかというとそんなことはない。
現実的な着地点を見出すが、安易に「再生」というところにはもっていかない。
そもそも、そんな「再生」なんてことは、監督・脚本のケネス・ロナーガンは信じていない。
なので、非常に新しいタイプの映画のようにも思えるが、そうでもなく、アメリカンニューシネマ以前の古いタイプのアメリカ映画のような感じを受ける。
具体的には、どの作品に似ていると指摘できないのだが、事件が起きる前のリーの生活は、男友だちとワイワイガヤガヤやっており、その後、孤独になってからは、直情的に酒場で殴り合いをやってしまう。
この人物設定は、ジョン・フォードが好んで描いたアイルランド人に似ている。
映画の主人公リーとジョーのチャンドラー兄弟のチャンドラーがアイリッシュ系の名前なのかはよくわからないが、兄役のカイル・チャンドラーはアイリッシュな風貌。
調べてみると、監督・脚本のケネス・ロナーガンも父方はアイルランド人だそうな。
なるほど、合点がいった。
最後の最後に、自分にはあの出来事は乗り越えることができない・・・と告白するリーには、かなり胸が熱くなった。
とはいえ、137分の尺は長すぎて、全体的にまだるっこい。
小説でいえば短編小説の内容なのだから。
ジンワリくる
取り返しのつかない失敗とか、忘れられない古傷は誰しもが生きていれば経験するもの。
綺麗に乗り越えられる人はいるかも知れないけど、引きずって引きずって、みっともないくらいの人生だってありだと思う。
君の経験は想像を絶する
まさにこの一言。
もう出家するしかないくらいの衝撃。
この酷すぎる出来事の脚本にピンとこない。
こんな酷い出来事を過去のトラウマとして描くのなら
非の打ち所のない男としてリーを描いて徹底的に同情させてほしい。
事件前も含めて彼の性格や言動に駄目男を感じてしまい、申し訳ないが「自業自得」感が最後までつきまとってしまった。
元嫁との町中でのシーン。
あんな出来事があってこの収束でいいのだろうか?
もちろん二人にとって壮絶な出来事の筈
その後の一時一刻がもの凄い時間だった筈
二人が歩んだ辛い時の経過がこんな立ち話で収束するのかな?
一方で兄の元嫁の駄目感とか、ばか騒ぎして過ごしたかつての仲間達が救いの手をのばしてくれない冷たさとか、きちんとした現実味溢れる人間ドラマが描かれていく。
現在と過去の場面転換がとってもスムーズでうまいなとも。
兄の優しい面影やジョージのこれでもかというくらいの親切ぷりにグッとくる
パトリックくんの演技も素敵です。冷蔵庫と格闘する様は秀逸でした。
物悲しい
リーは故郷で火災を起して子供3人を失い、離婚して別な場所に住んでいるが、兄の死で甥の後見人になってさまざまな出来事にあいながら決断を下す。家は貸家にし、甥は友人の養子とし、自分は故郷を離れる決断をする、リーは悲しい出来事を乗り越えることができない。兄の残したボートを修理し、甥と釣りをするシーンでジ・エンド
古風な映画
なんだかとっても古風なストーリーだったよ。
火災や離婚で家族を失った男の苦しみを描いた映画。
アカデミー賞の会員メンバーの平均年齢は65歳以上だから、そんなご老人の方々に気に入られそうな古風なお話だった。
ケイシー・アフレックの演技がよかった。
彼の顔もハンサムでよかった。
ずっとケイシーを観ていたい感じだった。
だってベン・アフレックの弟なんだよ。
兄弟そろってハンサムだなんて罪だよ。
ケイシーの沈んだ表情に引き込まれてしまったよ。
共演のミシェル・ウィリアムズもいい役してた。
別れた旦那(リー役のケイシー)と道端で鉢合わせするシーンとか、演技がうまいと思った。
もうそれだけでアカデミー賞あげてもいいんじゃないの、とぷー子は思ったくらい。
でも今回もアカデミー賞とれなかったね。残念だね。
ミシェル・ウィリアムズって性格悪いのかしら?
アカデミー賞って演技力だけではもらえないからね。
ご老人メンバーの方々にゴマすって、いい顔して、愛想よくしていないとアカデミー賞ってもらえないのよ。
その点、ケイシー・アフレックは有利だったね。
彼のお兄ちゃんがベン・アフレック。
ベン・アフレックは、ジョージ・クルーニーと一緒に映画会社を持っているし、
制作に関わったマット・デイモンとは大の親友。
もうこれで投票を三つ貰えてるじゃない♪ わーお。
コネクション・バッチリのハリウッドスターだね!
さてさてもうすこし映画のお話ね。
全体的な映画の構成はよくできていると思ったんだけど、途中がね、ちょっとうんざりしちゃった。
他界した兄の息子、ジョーのこれからの生活をどうしようかと決めるシーンが長すぎた。
父親を亡くしたジョーは、悲しさや寂しさから逃れようと友人と遊びまわったり、二股の彼女たちとのんきにセックスしまくっている。
ジョーは16歳という若さだからね、しょうがないよ。と思わせる設定にしたかったんだろうけど、ストーリーに説得力がない。
そんな批評をスクリプトを書いているときに映画スタジオやエージェントたちから指摘されたんだと思う。
息子ジョーの言動に説得力を持たせようとして、逆にストーリーが長くなりすぎている。
長くなっているのにストーリー構成の問題点は解決しないままで説得力がない。
そこが残念だったかな、と思った。
だけど全体的によくできている映画だと思った。
涙を誘う映画なので、泣きたい人にはオススメかもね。
映画館でこの映画を観ていたら、まわりでしくしくと涙を流している人がたくさんいたよ。
泣ける映画だね♪
16歳の虚勢を張ったひ弱な魂に涙
映画が始まって、いつになってもベン アフレックが出てこないので不思議に思っていたら、この映画ベンの弟のケイシー アフレックが主役だった。失礼しました。ケイシーさん、アカデミー主演男優賞受賞おめでとう。
ケネス ロナーガン監督がマット デイモンと共同で制作を開始、資金調達をして、主役をマット デイモンでなく親しい友人の 顔の良い方のベンではなく、弟ケイシーが勤めることになった。アフレック兄弟とマット デイモンは近所で生まれて育ち、ベンはマットとは高校まで同級生同士だったそうで、子供の時から一緒にフイルムを回して映画製作をしていたという。
この映画は、2016年 サンダンス映画祭で初めて上映された。2017年、ゴールデン グローブ賞で、主演のケイシー アフレックは主演男優賞を受賞し、また、アカデミー賞でも彼は、主演男優賞を獲得した。
主役の元の妻の役を演じたミッシェル ウィリアムズも、ゴールデン グローブ賞とアカデミー賞で助演女優賞にノミネイトされた。2時間40分の長い映画のなかで、彼女が出てくるシーンは、ほんのわずかだが、彼女の登場のインパクトがすごい。彼女が叫び、むせび泣き、声を押し殺してなくシーンに、この映画の価値が すべてかかっているように思える。良い役者とは、こういう存在を言うのか。
実生活でヒース ロジャーの妻だった。彼女はオージー俳優のヒースがたった28歳で亡くなって、残された娘を育ててきたため、少しの間映画から遠ざかっていた。ヒース レジャーは「バットマン」ダークナイトのジョ-カー役を渾身の演技で演じた後、火が燃え尽きたように亡くなってしまった。娘の顔がヒースにそっくりだ。役者の中で、ヒース レジャーのことが一番好きだったから、この娘の顔を雑誌などで見かけると、胸が痛む。
ストーリーは
リー チャンドラーはボストンで一人暮らしをしている中年男。不愛想で、皮肉屋で、社交性がなく酔うと喧嘩ばかりしているトラブルメーカーだ。便利屋として、壊れた水道管やボイラー修理や清掃業をして、かつかつに生活をしている。友達一人いない、しけた奴だ。
ある日、電話で、たった一人の兄、ジョーが心臓発作で緊急入院したという知らせが入る。リーは、兄に会いに、生まれ故郷のマサチューセッツに向かう。故郷の街マンチェスターの海辺は、リーが生まれ育ち、昔、住んでいた街だ。昔と全く変わりない。
しかし、リーが病院に着いたとたん、知らされたのは兄の死だった。兄の一人息子、16歳のパトリックは、孤児になってしまった。兄はずっと昔にアルコール中毒の妻と離婚している。マンチェスターに着いて、リーの最初の仕事は、兄の息子、パトリックに父親の死を知らせることだった。パトリックは昔、子供の頃は、リー叔父さんが大好きで、仲が良かった。リーは、パトリックがアイスホッケーの練習をしているアイスリンクに行って、父親の死を伝える。
冬の間は雪で土が硬く凍っているので、墓地に遺体を埋葬することができないという。埋葬ができるようになるまで数か月の間、葬式もできない。リーは、葬儀が終わるまでボストンに帰ることができない。弁護士は、リーが自分が知らない間に、兄の遺言で、パトリックが大人になるまで親権者として財産管理をし、パトリックの親代わりになることを指定している、と知らされる。兄の遺言にも、弁護士の言葉にも納得できないまま、リーは、しばらく兄の家でパトリックの世話をすることになる。
パトリックはもう、体がリーよりも大きくなって、立派な大人に見えるが、法律では16歳では車の運転が出来ないし、一人で学校に行き来することも許されていない。まず学校に送り迎えができる大人が居て、家で一緒に暮らす保護者がなくてなならなかった。
パトリックは高校でアイスホッケーのリーダーで、人気があり、ロックバンドでギターを弾き、2人のガールフレンドを持つ活発な高校生だった。リーは、パトリックのために学校の送り迎えをして、ロックバンドの仲間の家に送り届け、彼のガールフレンド宅に行き来するためにも運転してやらなければならなかった。社交的で忙しいパトリックの仲間と、付き合おうともせず、ガールフレンドの家族とも誘われても口をきこうともしないリーの態度に、パトリックは不満を募らせる。パトリックが幼い時、リー叔父さんは近所に住んでいて、頼りになる優しい叔父さんだった。、父親の次に好きだった。一緒に父のボートで釣りに行き、沢山のことを教えてくれた。その叔父さんが、すっかり人が変わってしまって、一体どうしたというのか。何が起きたのか。
リーは昔 妻のランデイと3人の子供たちと共に、兄のジョーと家族と近くに住んでいた。ジョーの息子パトリックとリーの3人の子供達は、仲が良く、にぎやかで愉快な生活をしていた。
ある冬の夜、寒い家全体を温めようとリーは火を起こし、ちょっと近所のミニマートに食糧を買いに出た。帰って来た時に見たものは、家が猛火におおわれて、狂ったように子供たちの名前を呼びながら燃える家に飛び込もうとしている妻の姿だった。家はあっという間に燃え落ちて、妻は2酸化炭素中毒で病院に運ばれる。燃え尽きた灰の中から、二階で寝ていた子供達の遺体が回収される。リーは警察に連行され、火災の原因が、暖炉に防護柵を付けずに外出した彼のせいだったと知らされる。ほんのちょっとの気のゆるみ、わずかの時間に買い物に出たことで、3人の子供達の命が奪われた。リーは警官から銃を奪い、自殺を試みるが失敗。このときから妻のランデイとは口をきくことも会うこともなかった。リーは一人きり故郷を離れた。
ジョーが亡くなって、その息子パトリックの後見人になって故郷に戻って来たリーに、人々は厳しい目を注ぐ。3人の子供達の死を、誰も忘れてはいないのだ。再びそこに住まなければならなくなって、リーが仕事を探そうとしても人々は冷たく、職を提供しようとしない。もう社交的なパトリックに、昔の様な頼りになる叔父さんの役は演じられない。離婚したランデイは新しい連れ合いを持ち妊娠中だ。あの事故以来、会うことがなかったランデイとリーは街で偶然顔を合わせる。二人にとって、過去の事故のことは、傷が大きすぎて、いまだに言葉にならない。
リーは弁護士と話し合って、自分の代わりに友人夫婦にパトリックの後見人になってもらえるように頼み込んで、マンチェスターを去る。
というお話。
男の子が一人前の男として生きるためのロールモデルになる頼もしくて愛情に満ちた父親を失うことの大きさ。父の死を知らされてから、一度として泣かなかったパトリックが、父の死後しばらくして、冷蔵庫を開けると凍った肉や食品が滑り落ちてくる。屈んであわてて落ちた物を拾って、冷凍庫に入れようとして、開けたままになっていたドアに頭をぶつける。冷凍庫の中のものは、安定を失ってどんどん滑り落ちて来て、拾っても拾っても落ちてくる。ぶつけた頭は痛いし、もう棚から落ちてくる冷凍品は元に戻せなくなって、収集がつかない。そこでパトリックが声を出して大声で泣きだす。ものすごく共感できる場面だ。冷凍庫で同じような体験を誰でも一度くらいしたはずだ。我慢していた涙が堰をきったように爆発する。
子供の時に母親が居なくなり、父親にまで死なれた16歳の少年の姿は、みかけは大人だが頼りない。彼は、「虚勢を張った大きな子供」であり、社交性のないリーに比べれば、「立派な大人」だが、、心の拠り所を失った「ひ弱な魂」でもある。
3人の子供を過失から失って、心の「十字架を背負って」生きる孤独な父親と、たった一人の保護者を失った「ひ弱なみなしご」が、淡々と、離れ離れになって、生きていく。
哀しい、哀しい映画だ。マンチェスターの海の美しい光景が、ことさら残酷に見える。
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