マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
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通行人・ケナス・ロナーガンの悲劇
いらいらしているケイシー・アフレックにたまたま?そばを通ったせいで喧嘩を吹っかけられた監督・脚本のケナス・ロナーガン。
「うるせえ不細工!ぶん殴るぞ!」みたいな事まで言われてるのに、ご丁寧に謎の去り際ソロカットまである欲しがりさんで笑えます。
でもそうやって笑いでごまかしながら話は進んでも、主人公の過去の記憶はぬぐえない・・・ってことが言いたいんだと思いました。
キャスティングの力
沁みる映画だ。
派手な演出も大げさな演技もなく淡々と進むが、心に残るものは大きい。
終始静かなトーンで展開される中に挟まれるアルビオーニのアダージョはズルいくらい効果的な演出になっている。
キャスティングが絶妙にハマっていて、役者それぞれの役への入り込み方がとても深い。
ミシェル・ウィリアムズの演技なんてもう、、、。
個人的には2017年ベストになるであろう一本。(swは別枠)
全てを背負い生きる
主人公同様、離婚や挫折そして人生が変わる転居を経験をした立場からも共感する部分が多々あった。淡々と進む内容で眠くなるかと思いきや全く退屈などしない。退屈どころかずっと引き込まれた。現在と過去が交差して進む内容も絶妙で素晴らしい。人生には乗り越えられないこともあることを描いている所も人間味があって良い。人生は過去も現在も全てを背負い生きていくしかないのだから…
2017-91
癒える事の無い傷のいたみ
生きている中で、毎日の生活の中で数え切れないほどの失敗やミスを犯してしまう。
しかし、そのミスが人の生き死にに直結する事はあまりない。
今作は小さな小さなミスで起こした事故の十字架を背負い生きていく人の話。
主人公のリー役のケイシ―・アフレックは寡黙で突然切れたり情緒不安定な感じがある人間。しかしながら家族とのシーンでは非常に優しく愛に満ち溢れた様子で見ていて温かかった。
兄役のカイル・チャンドラーは出番こそ少ないが非常に思いやりがあり、父親としても優しい模範的な感じがした。以前何かで見た時は嫌な役だったきがするが、、、w
妻役のミシェル・ウイリアムズはあまり見たことが無かったが、最後の方の演技はグッと来た。何かあのシーンは演技を超えた何かが宿っていた様に感じめちゃくちゃ映画に引き込まれた。
ケイシ―も演技では無い様子が感じられた。良い意味でw
タイトルを見てイギリスのお話か?w
と思っていたがアメリカのお話ですw
あまり風土や土地柄等はわからないが、かなり寒そうであり非常に美しい風景が描かれていますが、それに合わせて流れている音楽がまた美しく映画をより良い物にしています。
万人受けする内容では無いと思うが、時間軸がうまく絡み合いゆっくりと明らかになっていく内容に合わせてリーに引き込まれていく人は大号泣でしょうね。
僕はそこそこきました。
見ながら思っていたのですが、細心の注意を払っていても対向車が飛んできたり。
テロに巻き込まれたり。何も悪い事をしていないのに、ましてや信心深い人でも構わず神様は殺してしまう。
どの様に生きるか死ぬかが決まっているのか?
この映画の事故の様な事がもし起こってしまったら自分はもう前を向いては、笑顔を出しては生きていけないでしょう。
リーの発した「乗り越えられない」と言うセリフは色々な意味を含んだ一言でこの言い回し以外無いのではないか?と感じ深い感動を覚えました。
このマンチェスターではたぶん家族と行ったレストランや売店、公園等色々な所で面影を追いかけてしまう。フラッシュバックもしてしまうでしょう。
僕だって彼女と別れてすぐなら重ーい空気でイオン等に足を運んでいましたw
別れた彼女は死んだわけではなく別れたからいいんですが、家族でましてや亡くしてしまうと考えるとそれだけでゾッとします。
映画の中の出来事ですが本当に胸に重くのしかかり、明日からしっかりと生きていこうと思える作品でした。
最後に劇中では結構笑えるユーモアが散りばめられており良かったです。
解体
普通に生きてたら誰もが心に壊れた部分を持っていて、その穴埋めの方法が他人への攻撃に向かうのか自分への攻撃に向かうのか、若しくは愛情を求める方向に向かうのか愛情を与える方向に向かうのか、結局は他の誰かの道標によってその方向って大きく変わって来るんだと思う。
つまんねーし登場人物みんなムカつくなと思いながら見ていたが、なんか噛み締めれば噛み締めるほど凄く良い映画な気がしてきた。
ちょうど仕事も私生活も全く上手くいかなくて、しかもこの4月から最寄りの映画館が片道二時間というファッキン田舎に転勤になったので、色々思うところもあった。
ちなみに関係ないけどそのファッキン田舎は、久しぶりに帰った地元なのです。
69
人生てそんなもん
なんか息子すごいな。親が死んだ日に彼女家に泊めてやることやるんかいw
向こうにはそもそも喪に服す的な感覚はないのかしら。キレてすぐぶん殴る弟とか色々と欧米か!と突っ込みたくなるところがあり、笑ってしまったけど
人生てこんな感じだなぁと思った。特に身近な人が亡くなったときなんかはホントそう。うまく行ったり、躓いたり、苦しんだりして乗り越えられないこともあったりするけど、それでも続いていくものだし、続けていかなければならないんだと思う。逃げたっていいじゃないか。たくさん泣いて、涙で辛いこと薄めたらいい。
人生ベスト決定
もう3回も見てしまった。1回目は複雑な構成だったということもあり何か素晴らしいものをみたという感覚だけ残った。そして、何度も思い返したくなる映画だった。そして、多くの方のレビューなどを読んでもう一度見たくなり2回目を見に行った。2回目は構成やテーマを理解していたということもあり一番泣けた。3回目見たときにやっと細かい構成や脚本の上手さを理解できたほどだった。
気づいた上手い点としては冒頭のリーが兄の遺言を聞き後見人と告げられるシーン。このシーンは過去と現在のシーンが行き来する複雑なシーンなのだが、待合室にいるパトリックに事務のおばさんが「ジュースでもいる?」と声をかける。このセリフにより、まだパトリックは保護者が必要なこどもであると観客に無意識に伝えている。このような上手い点が他にもいくつもあるのだろう。
この映画は些細な些細な心の変化を丁寧に描いている。リーが終盤で告げる「乗り越えられない」というセリフはなんとも素晴らしいシーンであり毎回泣いてしまう。セリフ単体を見ればバットエンドのような悲しいセリフなのだが、乗り越えられないと誰かに吐き出すことが彼の小さな小さな一歩を見ているようで感動してしまう。
そして最後の釣りのシーンでは号泣でスクリーンが見えないほどだった。冒頭のシーンのような関係性に戻ったというより、子供と大人の関係で1本の釣竿でやっていたものが、それぞれ悲しみを抱え成長した人としてそれぞれの人生を歩むようにそれぞれ釣り竿を持ち、尊重しあっている関係に変化しているのがなんとも感動した。書かきれないくらい好きなシーンがあるのだが、最初から最後まで完璧な作品ではないかと思う。
最後にこの映画はポスターに惹かれた。「その心ごと、生きていく」というキャッチコピーはまさにこの映画を表現していると言える。しかし、言いたいことがあるとすれば、ポスターにはリーとランディが描かれているが、確かにこの二人の関係性は重要だが冒頭と最後のシーンからも分かる通りリーとパトリックの映画なのだからこの二人をポスターに使ったほうが良かったのではないかと少し思う。
お台場のアクアシティの映画館だと無駄に大きなスクリーンで見れるのでいいですよ。いつまでかはわかりませんが。
ロンハーマンなロケーション
舞台そのものが作品名である。そこはおよそ日本人がイメージするおしゃれなアメリカの観光港、日本の葉山が真似をしたくてしたくて堪らない位の風光明媚な港町だ。そんな景勝地である場所に、一人の男が帰ってくるというストーリー。
とにかく今作品監督ケネス・ロナーガンの馬鹿丁寧な程の作品の作り込みが如実に表現され、スクリーンから溢れるほどの想いを切々と吐露していくような展開を追うことになる。思い過ごしかもしれないが、最近の映画作品の中の登場人物達の職業、若しくは仕事の特徴と性格や性質等がマッチしない、若しくは何らかしらの関連性を見いだせない設定が多いと感じる。ステレオタイプかもしれないが、職人だから無口だとかみたいなものだ。主役の男は、マンションの雇われ管理人。手先は器用で仕事は出来るが愛想は悪く、人付き合いは殆ど無い。そういうキャラ設定を丁寧に時間をかけて、その紹介のシーンを冗長かも知れないが映し出していく。多分その丁寧さそのものが今作品の後半への長いフリなんだろう。中盤での火事のシーンでのあのスローモーションの演出と、葬儀曲で有名な『アルビノーニのアダージョ』が切々とその深く傷ついた過去が繰広げられる。そこまでの重厚且つ暗いシーンからの、警察署内で隙を突いて警官から拳銃を奪い自殺しようと試みる緩急は心を強く揺り動かす。あれだけ溜められれば、驚きのシーンとなる演出は心憎い。
この作品のキモは確かに後半の元妻の許しとしかしそれでも自分を責め続けること事から解放されない主人公の街角のシーンなのだろうけど、もう一つの軸である、兄、弟、そして甥という男の系譜が紡ぐ、濃い関係性の方を注目する。街から出て行く直前、車の前で兄に抱きしめられる弟、不覚にも胸を締め付ける苦しさと悲壮さを禁じ得なかった。勿論、原因は自分なのだからとは分かるがその代償が余りにもバランスが悪く、だからこその心理的葛藤は観る者全てを深淵へと沈ませられるのだろう。
結局、主人公はその過去を克服できず、兄からの救いの手であった甥の後見人という立場を退くことになる。残念ながらハッピーエンドではない訳であり、だからこそ今作品の辛さ、哀しさを綺麗に表現してみせた監督及び、主役ケイシー・アフレックのハイレベルな演技が堪能できる内容であると確信する。確かに文句なく、アカデミー主演男優賞及び脚本賞で納得である。
雰囲気はいいけど
こういう映画が理解できるほどまだ内面が成熟してないのか、単に好みか。とにかくリーのすべてを飲み込んだみたいな抑えたセリフはいい。奥さんもぴったりで、ドキュメントみたいな終わり方もあって、すっきりしないモヤモヤが名作といわれる所以なのかな。ケイシーがいいから見終わったけど、物語ってこんなことかと疑問に終わる。
主人公の日常を坦々と描きながら、兄弟愛、親子愛、夫婦の愛を深く印象付ける良作。
Movix堺で映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(Manchester by the Sea)を見た。
月曜日の午前中で観客は我々夫婦を含めて10人くらいだった。
ケイシー・アフレックが主演でマンチェスター。
イギリスの話か?と思ったら違っていた。
主人公が運転する車が左ハンドルなのでアメリカの話だった。
アメリカにもマンチェスターという地名があるようだ。
マンチェスターは、アメリカ合衆国ニューハンプシャー州南部、ヒルズボロ郡の都市。同州の最大都市、かつニューイングランド北部3州の最大都市である。市域人口は107,006人。都市圏人口は40万人以上であり、同州最大。
ケイシー・アフレックの兄が病死する。
遺言によって、兄の長男の後見人に指名されたケイシー・アフレック。
ケイシー・アフレックにはマンチェスターに戻りたくない理由があった。
ケイシー・アフレック兄弟間の愛情、
兄と兄の長男との親子愛、
ケイシー・アフレックと元妻との夫婦愛、
さまざまな愛が描かれる。
映画を見た直後には気づかなかったいろいろな愛が映画を見終わった後にじわじわと感じられる。
主人公の日常生活をたんたんと描くだけのこの映画が、
第89回アカデミー賞では作品賞ほか6部門にノミネート。
ケイシー・アフレックが主演男優賞、
ロナーガン監督が脚本賞を受賞した。
作品賞を「ムーンライト」と競り合ったくらいの高評価の作品。
上映時間は137分。長いが長さは感じなかった。
満足度は5点満点で4点☆☆☆☆です。
乗り越えられないこともある。
楽しみにしていました、マンチェスターバイザシー。
予想よりも淡々とした感じでしたが、とっても良かったです。
回想でのリーはすっごく楽しそうで、よく笑う人だったし、とっても幸せそうでした。なのに、現在のリーは愛想のかけらもなく、人を避けるか喧嘩するかの日々を過ごしています。
なんでそうなっちゃったのかな、というお話です。
リーの過ち、それはもう、ひどい過失なわけです。
故意では絶対ない。でも取り返しがつかない過失。
夜中に暖炉の火を放置して外出してしまい、家が全焼。
こども3人が死んでしまったのです。
これはね、本当に、私がリーだったらと思うとね。
はたして生きていられただろうかと。自分を絶対に許せないでしょうし…
元妻のミシェルウイリアムズと道端でばったり会って、少し話をするシーンが、とても切なくて悲しくて、涙があふれました。
元妻の、元夫を責めに責めたことへの後悔。
その懺悔はそれでもリーを救わない。
それも仕方がない、元妻べつに悪くない。
リーだって、人生をかけて悔やんでいる。
でも、大切な子供たちが死んでしまったことは、二人にとっては、なにがあっても消化できるものではない。
そのことが、二人の苦しそうなしぐさ・表情から伝わってきて、
ともに苦しくなりました。
一方で、リーは仲良しだった兄を病気で亡くします。
兄には一人息子がおり、10代らしいセンシティブさがありつつ、なかなかにリア充な高校生です。
彼女は二人いて、アイスホッケーにバンドに、お父さんの船を維持するためのバイトに大忙し。
もちろん父が死んで、辛い。でも、あんまり辛そうにはしていない。
私には、辛さが表面にまだ出てこないのかなという感じに思いました。
そして、母親がなかなか曲者で、母に改めて捨てられた気持ちになり、傷つきます。またリーが故郷に留まってくれそうにないことにも傷ついています。
リーと甥のやり取りは危なっかしいけれど、微笑ましくもあります。
哀しい話なんだけど、ぽろっとおかしいことはおきます。
彼女の母の干渉が頻繁過ぎてセックスが続けられないとか、
彼女の母とリーの会話が、びっくりするほど続かないとか。
私も泣きながら、ふはって笑ってしまう感じが何度かありました。
どうにもならない悲しみの中にも、吹き出す出来事もあるよね、
そんなもんだよね、って思いました。
リーは、甥との暮らしを前向きに考え始めたようですが、
ぼーっとしていて台所でボヤ的事故を起こします。
今回は大した事故ではなかったのですが、過去がよぎりこれではいかんと決意します。
甥は近所の友人の養子になってもらう、自分はやっぱり故郷では暮らせない、ということです。
甥には申し訳ないけれども、乗り越えられない。
その結論が、哀しいけれども正直な気持ち。
わかるなと思いました。
一緒に暮らせないとはいえ、パトリックを切り捨てるわけでもない様子でした。新しい住まいにはパトリックの部屋も準備しておくとのこと。
つかず離れず、ちょうどいい距離を二人で探して、ほんのり仲良く過ごしてほしいなと思いました。
曇った色彩の町が、固く閉ざされたリーとシンクロしているように見えました。いい映画でした。
故郷と過去
平凡な人生の自分でさえ近所の人が自分の過去を知っていることに嫌気がさすことがある。
それなのに、あんな小さな町でみんなが知っている事件がおきたら・・・
帰りたくないって思うのは当然。
それでも投げ出さず、甥っ子の将来を考えてくれる優しさに涙が出ました。
なぜ、他の家族の養子にならなければいけないのか?が疑問・・・
元妻はなぜいまさら愛しているなど告げるのか・・・
もっと深く探りたくなります。
少しずつ親子になって行ければいいな。
見えない絆
主人公の性格が少し分かりにくく、事件の影響だとしても、突然他人を殴ったりというのは、穏やかなときとあまりに差がありすぎるように思った。
兄が弟に家具を買う場面は、弟への愛情が伝わり胸がじんとした。
心が強くなれなくても、ただ近くにいて、相手を気にすることだけで、見えない絆が生まれていくように感じた。
静かで、じんわりと胸を打つ。
映画の良さが感じられた。
どうしても乗り越えられない感情は、乗り越えることができるのか
予告編にあった「・・すべてを置いてきたこの町で、また歩き始める」のナレーションのせいでミスリードされた。全然、その悲劇で負った心の傷が癒えてなんていなかった。リーは、かつて住んできたこの町で新たに歩き始めることなんてできやしない。悲劇のあと、どれほど自分を責め、夫婦に修復不可の溝ができ、失意のままこの町を離れたのか。過去を語らないリーの悲し気な表情が、それを痛々しく物語っていた。
凡長に思えた進行も、むしろ効果的だった。リーを見る周りの目、甥っ子とのすれ違い、、、それらを気に留めない振りをしていながらも溜まっていく感情が、実は積もりゆく枯葉のように、塞ぎこんでいく心理描写となっていた。目に見えないそれらの感情に覆われたリーの心が、とうとう窮屈に思えたときに発した『乗り越えられないんだ』のセリフに、どっと涙がこぼれた。
結局、すべてがうまく行き着く結末ではなかった。なのに、心に残る。プロデューサーのマット・デイモンは『ハッピアー・エンディング(最初よりはハッピーになっているエンディング)』といっている。ああそこなのだ、そんなハッピーな人生なんてそこら中に転がっているわけじゃない。失敗してしまったけれど、あの時より今はいくらかましになってきたよ、っていう僅かな光明に気持ちが揺すられるのだ。
マンチェスター・バイ・ザ・シー。実にロマンチックな町の名だ。wikiによるとどうやら人口5000人強の小さな田舎町らしい。正直、見終えるまでイギリスのマンチェスターと混同していた。マンチェスターなのになぜ海が出てくるんだ?、と。そのわりにはアメリカの都市名ばかり出てくるし、スポーツがアメリカ的だし、Championのトレーナーばかり着ているし、アメリカ国旗が多いしと感じ、途中でイギリスではなく、アメリカのボストンからやや離れた町だとは気づいていたが。あまりにも不覚。こんな町じゃ、ほとんどがリーの過去を知っているだろうし、思い出が至る所にこびりついている。だいいち、前妻としょっちゅう顔をあわせてしまう。乗り越えたくても、無理だよなあ。せめて、リーの感情が穏やかになってくれたことが救いだった。
想い出にかわるまで。
主人公役がマットでなくケイシーに代わって良かったと思った。
知的で頑丈なマットではこの味わいは出せなかっただろうから。
彼が過去に負った傷とは何なのか、それが判明する中盤以降は
正視できないほどの悲しみが襲う。もし私だったらと彼と妻の
双方に例えてしまった。こんな悲劇を背負った人はその後どう
やって生きていくのかとニュースを見て思ったこともあったが、
後半で偶然再会した元妻との会話では更に胸を締め付けられる。
歩み出した妻と歩み出せない夫。セーターで大事に包んだ三つ
の額縁を甥がジッと見つめるシーンにその悲しみが集約される。
喪失感は人それぞれだ。気丈に振舞う人もいれば悲しみを露わ
にする人もいる。自分を責め続ける人もすぐ前へ進む人もいる。
「もしお前が泊まりに来た時のためにソファーベッドを買う」
と甥に告げた主人公の言葉に涙が溢れた。ひとつ乗り越えたな。
うまくいかない。それでいい。
終始、曇天の映像。
登場人物は皆、
ポケットに手を突っ込んで
背中を丸めている。
観ていて決して
晴ればれする絵面でない。
なのに、観終わった後の
染み入るような不思議な余韻は
なんなのだろう。
想像を絶する過去を
愛と友情で乗り越えての
大エンディング!
...なんてのは人生では
残念ながらほとんどない。
この映画もそう。
主人公のリーも
忌まわしい過去に勝てずに
マンチェスターを去ってしまう。
でも、これこそが真実であり
人生なのだと感じた。
ラストシーン。
緩やかな坂道を登りながら
リーとパトリックが
拾ったボールでじゃれ合う。
そして穏やかな水面にボートを出し
二人で釣竿を構える。
二人が「同じ方」を向いて
映画は終わる。
素晴らしいラストシーンだった。
全300件中、161~180件目を表示