「性暴力がなくなることを祈って」夜明けの祈り 松村 訓明(まつむら のりあき)さんの映画レビュー(感想・評価)
性暴力がなくなることを祈って
ストーリーは、第2次大戦末期にソ連軍によりレイプ(性暴力)を受けた修道女が妊娠し、その苦悩を描いた映画です。主人公のフランス人の女医、マチルドは修道女から「助けてください」と言われ、修道院に駆け付けたところ、妊娠したためお腹が大きくなり苦痛にうめく修道女がいました。(妊娠したのは計7名)その彼女たちの治療を行い、助けるという内容です。
本来、マチルドはフランス人の軍人の治療のためポーランドに派遣されていました。そのため、上司からポーランドの修道女を助けなくてもいいと言われますが、修道院の院長などから「マチルドでないといけない」と言われ、夜には、ソ連軍がいて危険な地域であるにも関わらず、身を挺して治療に当たっていきます。
修道院の院長などは、妊娠したことが公となると修道院が閉鎖となりかねないと気にしていました。それは、修道女は貞潔であり一生独身でならなければいけないとされているからです。本来、非難され苦しむべきは、レイプ(性暴力)をした人です。しかし、性暴力の場合、被害に遭った人が精神的にも肉体的にも苦しみます。(映画の中でもそのシーンがありました。)
また、レイプされたことにより生まれた子であっても修道女からすると自分の子であることから愛情が湧くのかな、また、その生まれた子にレイプの責任はないことから、(中絶をしなかったのであれば)一般の子と同じく愛情を持って育てていかなければいけないと思ったりもしました。
マチルドを演じた「ルー・ドゥ・ラージュ」という女優さんの透明感あふれる演技が印象に残りました。
重たい内容の映画であり、涙なくしては観れませんが、「生きること」をしっかり教えてくれる素晴らしい映画ですので、是非、みなさんも時間が許すのであれば、観てみてください。
なお、映画を観た「新宿武蔵野館」という映画館は、こじんまりとしていて、とても落ち着く映画館でした。
この世から性暴力がなくなることを祈って筆を置きます。