光(河瀬直美監督)のレビュー・感想・評価
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映像が美しい
静かな作品
TVの副音声ガイドを聞いたことはありました。
映画にもあることを今作で知りました。
冒頭で中森が美佐子に「説明描写がくどい」云々言う箇所がありました。
確かに次から次へとガイドされると、イマジネーションを浮かべる時間がないな。全部その風景や描写を、言えばいいもんじゃない。なるほどと同感しました。
知人に視覚障害の方がいます。その人は物は見えなくても「明るい」という感覚はわかるそうです。
「光を感じていたい」。中森ができるだけ日の当たる部屋を借りたこと。太陽の写真、そして美佐子と母の場面。
このタイトルに納得です。
そして。点字ブロックや白杖は、視覚障がい者の方の命綱であること。物を置いては行かんのです。
最後の映画の副音声ガイド。なるほど、あの方ね。
加えてこの役は、永瀬さんだからこそ、味わい深かったのだと思います。
丁寧には作られてるが。
紹介のところで恋愛映画とあったので、あっ選択間違えた!と思ったけど、そこまで恋愛モードの内容でなかったので安心した。(恋愛映画は好みではないので)
視覚障害者向けに映画の音声ガイドを作成する仕事をする美佐子。
そこでモニターとして協力する元写真家でほとんど視力を失った中森があれこれとそのガイド内容にいちゃもんをつける。
反発しながらも心を通わせていく様子を描いたもの。
タイトルの映画の通り、光を通していろんなものがつながっていく。
音声ガイド内の映画のラストの光。
わずかに感じる視覚が光のよう。
写真家中森の傑作写真の田舎の光。
その田舎を2人で見に行って光を感じる。
その光が随所に象徴的にあらわれるが、あまりに象徴的すぎて、理解能力の低い自分には想像が追い付かなかった。
なぜ美佐子と中森がそこまで急接近したのか。
痴ほうの母親!?との関係性。
伝わる人には絶賛だし、その象徴が入ってこないとよく分からない。賛否分かれるところだろう。
そして、音声ガイドの仕事の難しさも垣間見ることができる。
画面に見えたままを伝えるのだが、情報が多すぎると感情移入できないし、少ないと想像ができない。しかもガイドの主観とも言えるコメント(どんな表情なのかを表すのに「希望に満ちた」のような)は感情操作とも言えるし、とても難しい作業であることも初めて知った。
光と影の哲学
他の評価の方もあるように、ラブストーリーとしてはイマイチ感が否めませんが(むしろラブストーリーが主題ではない気がするのでそれを期待するとつまらないかも)、多くの方にとって普段馴染みの少ない音声ガイドという職業を題材に映画の中で映画を題材としている自己言及性、光と題して、逆説的に影の部分に暗に焦点を当てている点、など河瀬監督の光と影の哲学的なものを感じました。夕日など光の描写にこだわっている部分があったり、音声ガイドという仕事でいかに言葉で情景を伝えるかという部分に深く入ると同時に、逆説的に映像にすることで見えなくなるもの、音にすることで聞こえなくなるもの、言葉にすることで伝わらなくなるもの、は何かということを暗に考えさせてくれる映画だと感じました。映画の中で直接的には表現されていませんが、光を失うことで見えてくる世界、光があることで逆に見えない世界、そういうものを映画を見ながら想像させられます。たぶん推測ですが、そういう直接映画で表現されていない影の部分を河瀬監督は映画で表現したかったのではないか、とそう考えることで普段の生活や恋人や家族とのコミュニケーションやビジネスのヒントが映画の中に見いだせると思います。個人的には、この「光」という映画の描写に関する音声ガイドが実際どうなるのか気になって目をつぶってもう一度聴いて見た場合どう印象が変わるのか感じたいと思ったのと、惜しいと個人的に思うのは視覚障害を乗り越えた中森さんのカメラマンとしての哲学に映画の哲学が自己言及的に投影されていればもう少し知的感動が増えたかも、と思います。誰もが映画のどこかでやると思いますが、映画を見ながら目を閉じると思います。
声が描くもの
以前に見たDVDに予告編が収録されており、音声ガイダンスに関わる映画に少し興味があったので今回レンタルしました。
視覚しょうがいを持つ方のための映画製作過程と、視覚しょうがいの現実を描くシーンが不可欠であるため、全体のトーンはやや重いものとなっています。また、ヒロイン自身も家庭に重い問題を抱えている設定ですから、「娯楽として楽しむ」という作品ではありません。
ただ、「であるが故に」深く感じるものもあります。
失ったもの、失っていくもの、失ったかすら確認できないもの・・・
最初は嫌悪感を抱いていた人間に、自分でも理由がわからないうちに憐れみを覚え、それがいつしか愛と区別がつかない混沌に発展すること、私はあると思う人なので、ヒロインの行動(夕日のキス)についても違和感はありませんでした。
劇中映画は最後に樹木希林さんのガイドが入った完成版で上映されますが、そのガイド音声が劇中映画のためだけのものではなく、本作自体の完成型に不可欠なものでもある点に感服しました。良作だと思います。蛇足ですが水崎綾女さん、存じ上げなかったのですが、良い女優さんですね。
音声ガイドという仕事を垣間見ることができたが、娯楽作品として楽しめ...
これまでも河瀬作品はわりと観てきたのだが、あん 以降の河瀬作品が好...
美しい作品でした
それは、とてもとても美しい作品でした。
視覚障害者と向き合う重いテーマでしたが、監督らしくというか、とても柔らかく魅せてくれます。
主演の二人がとても際立っていて、芝居の密度や存在感がすごい。
アップが多めのカットも視覚障害を扱う演出として、とても効果的だったと思います。
「近づけないとみえない」や、「見ずらい」といったジレンマが少し感じられました。
今回は都合が付かず見逃してしまっていたのですが、どうしてもスクリーンで観たく、かなりタイトな時間ではありましたが無理やりリバイバルで鑑賞してきました。
ですが、そうして本当に良かった。
きっとスクリーンで無ければ、あの浴びるような、全部を包むような夕日の光は感じれなかったと思います。
カットに役者の演技に物語や音楽に漂う空気や光、その全部が美しい。
起伏に富んだ物語では無いのですが、寄り添うようなこの作品は優しくてとても心地良いんです。
とても、本当にとてもステキな映画でした。
普遍的な心の触れ合いが
美佐子が中森に対してコミュニケーションしようとするのが、児童書の獣の奏者みたいな、全く違う生き物(目が見える/見えない)の間に横たわる断絶を知ってもなお語り続けるのを止めないような、美しいけれど不毛な、美佐子だけが疲れ続ける関係に目えたんですが、最後に、私は逃げたり消えたりしない、だからそこで待っていてというセリフで、伝わっていたんだ!と感動しました。目が見えるとか見えないとか、映画の音声ガイドという珍しい仕事など関係なく、普遍的な心の触れ合いがこの映画にはありました。最後の樹木希林さんのガイド、目の先には、光、でタイトルが回収されるのも素敵。面白かった。
映画を「見る」ということとは
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