「ユニバーサル型の"攻殻まとめムービー"である」ゴースト・イン・ザ・シェル Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
ユニバーサル型の"攻殻まとめムービー"である
賛否両論、たいへんな論争が起きている。みんな攻殻愛が強すぎるんだよ、まるで自分のモノのように言い放つし。
そんな自分も初日鑑賞から1週間経ち、1回目吹替→2回目字幕と重ねるも、モヤモヤは晴れない。つまり少なくとも、"傑作ではない"ということは確かである。これはオマージュの域を出ていない、誤解を恐れずにいえば、"攻殻まとめムービー"である。
原作を知らない人向けのユニバーサル型の誕生だ。
そもそも攻殻機動隊は何を原作と見なすのだろう。士郎正宗による漫画か、押井監督の「攻殼機動隊/ゴースト・イン・ザ・シェル」(1995)、「イノセンス」(2004)か。神谷監督の「攻殼機動隊SAC」(2002-2003)か、はたまた冲方監督のARISE(2013-2014)だろうか。設定も時代もキャラクターも違うわけで、原作がアレンジされた複数の作品・シリーズが同時存在し、複合化しているのが攻殻なのである。
そして"攻殻まとめムービー"としての本作は、漫画ではなく、押井アニメ版を原作としている。そのSF表現はやはり20年前のものでしかなく、忠実に実写化されても、古さを感じるのは仕方ない。いろいろな映画に似ているという話は、20年前の攻殻が与えた影響がグルっとまわって、ここに返ってきただけのこと。
観客がどう感じようと、監督の"攻殻"愛がたっぷり溢れている。
心からよかったと思えるのは、スカーレット・ヨハンソンである。美しい、カッコいい、ムチムチ。他に誰がやれるというのか。菊地凛子はイヤだよ。
さて吹替版は、ビートたけしを除き、アニメ版声優がそのまま続投している。こればかりは英語圏のファンには分からない。日本人だけが楽しめるネイティブサービスである。
字幕版では、たけしが出てくると、会話が日本語→英語→日本語→英語という違和感に突き落とされる。どっちかにしてほしい。桃井かおりだって英語しゃべってるんだし。
ということで本作は2D字幕で観るのはもっとも避けたい。またIMAXアスペクトで観るのが本筋で、3Dであることも大事。この作品に関しては4D効果は必須ではない。
(2017/4/7 / ユナイテッドシネマ豊洲 / ビスタ)