「哲学がない。」ゴースト・イン・ザ・シェル gooさんの映画レビュー(感想・評価)
哲学がない。
製作者に哲学が感じられない。
ghostが無い。
この話は本当に攻殻機動隊をベースにしなければならなかったのか?
本当に昔からよくみるハリウッドのSF映画のテーマ。
人間の尊厳とそれを破壊する科学の対立。
科学の発展は人間の尊厳を破壊する。
それに対抗する人間。
過去を乗り越えて未来の自分は自分で切り開くみたいな終わり方、別に〜?
そんな話はもう随分前から見ている。
少佐が他者によって作り変えられた自分を受け入れる話なら、人間だった頃の自分とサイボーグとなった自分の双方を客観的に見つめながら、人間とは何か?サイボーグとは何か?と考えながら選択していく行程が見たかった。
場当たり的にクゼが過去の少佐の正体を暴露したり、桃井かおりが出て来たり。
「あなたは別人格を持った人間だったのよ」ってそんなオチ、最初のシーンで分かっとるわ!
過去の人間としての自分とサイボーグになった自分のどちらを選択するか、という葛藤が見られたら、と中盤から期待していたがあっさり解決してるし。
ラスボスもたけしがガキデカばりに「死刑!」で終了て。
警察なんだから。分かりやすくするにしてもあまりにも陳腐。
陳腐陳腐陳腐。
何の葛藤もない。使い古されたテーマをなぞるだけ。
ストーリー展開を変えて観客に分かりやすいものを、という努力は認めるけど、ストーリーテリングがあまりに陳腐。
何故少佐はクゼに拘ったのか?
何故少佐はサイボーグになったのか?
何故過去の自分を断ち切ってサイボーグとしての今の自分を受け入れたのか?そこの葛藤を見せてくれないと。
愛ゆえのオマージュカット多数だがストーリーに哲学が感じられないからただのCG描写で終わる。
少佐の身体能力が高いこと、捜査能力が高いことは良いけど、暴力に動機がない。
なんでハッカーをあんなに痛めつけたのかと。
こんな攻殻機動隊見たくなかった。
なんの哲学もない。
ただアクションとCGだけが見所のよくあるよくあるハリウッド映画。
ヴィンチェンゾ・ナタリの傑作「CUBE」を勝手に改変してただのCGマンセー映画の続編が乱発されて風化したことを思い出した。
ハリウッドは外部で作られた優れたものを料理すると駄作にしてしまうらしい。
人間とは何か?人形と何が違うのだ?
原作を大きく拡大解釈して自らの哲学で押し切った押井版の攻殻機動隊、イノセンスをもう一度見て溜飲を下げる。