オリ・マキの人生で最も幸せな日のレビュー・感想・評価
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愛する人がいてこそ
モノクロの16ミリフィルムで撮影されたフィンランドのロマンティック映画。フィンランドと言うとアキ・カウリスマキを真っ先に思い出すが、この映画にもカウリスマキ作品にもあるような独特のペーソスが感じられる。これはフィンランドという国に特有なものなのかもしれない。会話のテンポ感などが、他の国と異なるというか、どこかゆったりしている。荻上直子の「かもめ食堂」などもそうだったし、フィンランド独特の時間感覚なのかもしれない。
国の威信をかけたボクシングのタイトルマッチに挑む男が、ありふれた女性に恋に落ち、気になって減量に集中できなくなってしまう。周囲の期待をよそに恋人に会いに行ったりしてしまい、迷惑をかけたりしながら、試合当日を迎えることになる。
世界大会という大きな舞台を前にしているとは思えない、どこかとぼけた味わいが映画全編を覆っている。プロの真剣勝負の緊張感よりも、愛する女性とのほっこりする時間に重きが置かれているのも特徴的で、見終わったあとはなんだか肩の力がいい感じに抜ける作品だ。
見世物小屋で板敷きからプールへ落ちる余興をやっている太った女性が涙...
見世物小屋で板敷きからプールへ落ちる余興をやっている太った女性が涙ぐむ様にかつらを取る場面がある。
それだけで僕はこの映画に共感出来た。
1962年8月12日が『人生でもっとも幸せな日』って、僕の知り合いの誕生日一週間前だ。あの日は日本は暑かった。
そもそも…
恋に落ちたって、その前から好意があって恋人同士じゃないの?ボクシングの世界戦を前に集中できないって、子供じゃないのだから、がんばれよと。フィンランドでは初めての世界戦というと国を挙げてというのもわかるし、マネージャーにしたって、チャンピオンを呼ぶのに大金が必要なため、様々なスポンサー探しに苦労し、自分の家庭にもろくに金を入れていないようだったし、こういう周囲の人の努力を考えられない主人公に全く共感出来なかった。しかも、呆気なく負けるって、そりゃそうだろうなと思ってしまった。実話ベースなので仕方ないのだろうが。恋をしたので負けたってのも尚更言い訳がましく、格好悪い。
Love of the Common Man
解放された後の2人の姿にホンワカしてしまい。
久しぶりに生粋の欧州映画を観た気分。フィンランドかぁ。遠そう…寒そう…あそこ、白夜だったっけ?オーロラ見れたっけ?NokiaとLinuxはフィンランドだっけ?首相が美人なんだよね、確か。魚を輸入してる?それはノルウェー?シベリウスはフィンランドでしょ。そうや、ニッカネンでしょ。そうだそうだ、プジョー205T16のサロネンとLancia Delta HFのアレン、二人ともフィンランドじゃん、カンクネンもマキネンも。そうだ、Toyotaがラッピを引き抜いてYarisで勝ったんだよねぇ、って結局WRCですかw フィンランドと言えば、ラリーとジャンプです。ボクシングじゃないよなぁ...
オリとライヤの「上京前」の描写が好き。田舎暮らしで、ユルくて大らかな人達の中でいい感じで出来上がってるお兄ちゃんとお姉ちゃん。体重60kgのオリと、ふっくら美人のライヤの欧州流自転車2人乗り。もう、この時点でほのぼの。
ボクシングフェザー級世界タイトル戦の挑戦者としてヘルシンキを訪れた2人を待ち構えていたのは「我が国初の世界タイトルマッチ」に沸き立つ様々な人々。意味も分からない写真撮影、支援者とのパーティー、記録映画のカメラマン、部屋に入り切れないくらいの新聞記者。「上流階級の人々」とのパーティ、記念撮影、食事会。やらせ映画で、カメラの前でポーズを決める。
ライヤは疎外感から帰郷。これまで経験したことの無い、マネージャーの管理に息苦しさを感じるオリ。減量に苦しみ、ライヤを追って帰郷したオリは、ライヤに結婚を申し込み、「世界チャンピオンになる?なら結婚する」と返答される。世界戦の前に、指輪は作っちゃうんですけどね。
米国からやって来たチャンピオンとの実力差は如何ともしがたく。2ラウンドでTKO負けを喫する。あれだけ期待してくれてると思っていた支援者も、マネージャーも、良い感じで無視してくれることが、逆に気楽だと感じるオリ。ちょっと腹立たしいのはライヤ。
試合後のパーティ会場で、一人所在投げにうつむいて立っているのは、5回目の防衛戦に勝利した黒人ボクサー。会場を二人で抜け出して、海に向かって石投げ遊びに興じるオリとライヤ。
騒がれて持ち上げられても、結局は見世物として誰かに利用されているだけに過ぎない。普通の男として、恋した女性と歩き始めた日が、人生最良の日。
モノクロです。16mmフィルムで、時代感、バンバンに出てます。音楽のセンスも最高。レストランで流れるピアノは「Stella by Starlight」と言う選曲センス。言葉少なく、唐突に切り替わって行く場面演出。「モノクロームの青春」な導入部に沸き立つ、郷愁。
「フィンランドで初めて開催される世界タイトルマッチ」にかき乱された2人は、壊れずにちゃんと、戻ってくることが出来ました。と言う最後に、胸がふわーっとなる物語だった。
マネージャー役のエーロ・ミロノフに見覚えあるなぁ、誰やったっけ?思い出せなくて調べたら、「ボーダー 二つの世界」のヴォーレでした。そりゃ、分かりにくいね。
良かった。とっても。
とにかく好きです。最近、こういうのに飢えてたかも知れないですw
【自分の闘い方や生き方は自分自身で決める。それが”最も幸せなこと”ではないか。】
■1962年、フィンランドで行われたボクシング世界タイトルマッチを”挑戦者、オリ・マキ”の視点で描いた映画。
・オリ・マキはアマチュアからプロに転向し、10戦8KOのフィンランド期待のプロボクサー。なのであるが、序盤から、かなり舞い上がり気味のマネージャー、エリスにイロイロとプロモーションに引っ張りまわされ、困惑している姿が可笑しみがある。
・フツー、ボクシング映画といえばタイトルマッチ前の記者会見で、お互いに
”お前を10秒でオネンネさせてやるぜ!””貴様!”などと、無駄に罵り合い周囲から、”マアマア・・”などと引き離されるシーンが挟まれた後に、”伝説の男同士の闘い”が繰り広げられ、最後は二人で涙を流して抱き合い、チャンチャン・・。大団円。
というパターンが多い気がするが、今作ではそのような場面は一切、出てこない。
時代背景もあるだろうが、
選手同士と取り巻きがカメラに向かって、ファイティングポーズを決め、フラッシュがパシャ!。とか、
インタビュアーに対する受け答えも、”え、そんなんで良いんですか?”というフツーな感じである。
■今作が可笑しみとペーソス溢れる作品だと思った場面
・中々、リミット体重まで落とせないオリ・マキが、実は試合直前にライヤという女性に恋をしてしまい、インタビューの最中も”ボンヤリと”ライヤを見つめ、質問を聞いていなかったり・・。
・オリ・マキが棒の上の板の上に横になった女性を、棒を狙って球を投げ、水に落とす”不可思議”なゲーム(誰か、教えてください・・。)をライヤと楽しくやった後、後日一人でその光景を見て、楽屋裏で鬘を取り、寂しげに髪を拭く姿を見る場面。自分も同じ”見世物”ではないか・・と思ったのではないかなあ・・。
・試合数日前、公開スパークリングがあるのに、オリ・マキは故郷に戻ったライヤに会いに行き、ポロポーズ!そして、ライヤからOKの返事。フツー、こう来たら、怒涛のファイティングでチャンピオンベルトを奪取し、”ライヤー!”とリング上から叫ぶと思いきや、あっさり、2ラウンドでKO負け・・。盛り上がらないなあ・・。オリ・マキは”ホッとした感”さえ、漂わせている。
・けれど、それでオリ・マキが”リベンジマッチ”で最終勝利する・・訳もなく、自由になった彼は、ライヤと二人でノンビリと手を繋いで、楽しそうに、線路を歩いたりする。で、ジ・エンド。
<従来のボクシング映画の色合いとは、かなり異なるトーンのフィンランドボクシング映画。
物凄く感動するわけではないが、ボクシング映画なのに、何だかほのぼのとしてしまった作品。>
■蛇足
・オリ・マキを僅か2ラウンドで退けたアメリカ黒人ボクサー”デビー・ムーア”が、あの試合の半年後にボクシングの試合で亡くなっていた、という事実にも驚いた。(今作品では、一切触れられていないが。)
幸せの価値は自分で決めるしかない
思う存分戦いたい。しかし人生色々ありすぎる...
オリ・マキは実在のボクサーであり、1962年8月17日に行われた世界戦も実際にあった試合である。だが、この映画はその試合がメインではない。
世界戦、しかもフィンランドで初めて行われる世界戦で挑戦者となったオリ・マキの恋と、減量と、プレッシャー。それを飄々と描き出している。
まず、恋。「恋をしてしまったようだ」ってお前、最初から恋モード全開だったろ、と突っ込みたくなるくらい恋に振り回される男、オリ・マキ。いちばん燃え上がるときですよ。彼女が気になって、そわそわしちゃって大変。
そして減量。元々ライト級のボクサーであったオリ・マキ、フェザー級に階級を落としているため、減量が中々うまくいかない。サウナでぶっ倒れたり、喉に指突っ込んだり。とにかく苛酷。
減量とも繋がるのが「プレッシャー」。マネージャーが彼にかける期待と持ってくる「ややこしいお付き合い」。会食したり撮影されたり(これがまた「記録映画」のくせにやたら仕込みが激しいのだ)。そしてマネージャーは何やら生活がよろろしくないようだ。
というわけで集中が最も重要なときにまったくままならぬオリ・マキに観てる方は同情を寄せてしまう。プロボクシングは勿論興業なので、ある程度は避けられないとはいえ、しんどいな...大変だな...しかも恋愛も大変そう...。なんだかおばちゃん風に「お兄さん、大変ねえ」となってしまう。勝負の世界では「こいつ軟弱だな」と思うひとも多そうだが。特にボクシングというのは...そういう意味では、オリ・マキは「強いが、猛々しくはない」ボクサーだったのだろうな、と思える。
後半、彼女ライヤのカッコいいひとこと(これは胸に刻んでおこうと思った)を貰って、ギリギリのラインで集中も得て、試合に臨むオリ・マキ...
何が彼にとって「人生で最も幸せな日」なのかは観て判断していただくのが良いと思う(まあ、試合結果は調べれば分かってしまうのだが)。色々な「幸せ」があり、その価値判断をひとに委ねては駄目。というようなことを思った。
ラストシーンにほっこりな仕掛けがあるので、エンドロールも観た方がいいですよ。
あとは全くの余談ではあるが、対戦相手であるデビー・ムーアがこのわずか7か月後にリング禍で亡くなったことを思うと...人生ははかないものだ、と思ったりもする。
《幸せ》ってなんだろうね --- 言ってしまえばなんてことない話。...
《幸せ》ってなんだろうね --- 言ってしまえばなんてことない話。なのだけど好き。射し込む光、煙草の煙そして水切り、様々なものをこの上なく愛しく思わせてくれる美しい撮影で綴られるのは、1962年ボクシングの世界チャンピオンというタイトル戦に挑む一人のボクサーの葛藤・揺らぎ。60キロちょっとから57キロまで2週間で減量しなければいけないのに、そこには《恋煩い》や信頼しきれないマネージャー、記録映画の撮影隊と騒がしい周り。様々な障壁が集中を妨げる。そして最後に訪れるのは、無理なく非常に地に足着いた形でのタイトルの意味。フィンランド語なんて分かりっこないけど、少なくとも主人公オリ・マキ役は良かった。人間の根本に訴えかけてくる共通性がある、語弊を恐れずに言ってしまえば国民的英雄の彼も普通の人間。自己実現や夢の達成は時に思ったような結果にならないこともあるけど、忙しない日常の中で見失いかけていた本当に大切なものってなんだろう。何気なくてもかけがえのない愛しい瞬間。映像はモノクロでもシンプルだからこその味わい深さに彩られている。幸せ --- 少なくともそれは周りにああだこうだと決めつけられるものではない、それだけは言える。
幸せになりたいっすね〜
P.S. 原題に忠実な邦題よくやった!
トンデモなく地味な『ロッキー』が過酷な減量の果てに掴んだものは・・・
フィンランドの片田舎コッコラにあるパン屋のせがれでボクサーのオリ・マキは元ボクサーのマネージャー、エリスの計らいでアメリカ人のフェザー級チャンピオン、デイビー・ムーアとの対戦のチャンスを得る。しかしオリの等級はライト級、対戦までの2週間で体重を57キロまで落とさなければならないが、オリはもう一つ問題を抱えていた。
下卑た喩えで言うと物凄くジミな『ロッキー』。エイドリアンならぬライヤに恋する余り減量もままならないオリにイライラさせられてなかなか感情移入出来ないですが、そんなオリの迷走を察して距離を置こうとするライヤの胸の内を知って、自分が今なすべきことを悟ってからのオリにはグッと引き寄せられました。虚栄心の欠片も持ち合わせないライヤの瑞々しさを美しい街並みの中でさりげなく捉えるモノクロ映像がとにかく印象的。
あとどうでもいいことですがフィンランド映画なのでやたらとサウナシーンがあり、あんまり美しくないものも当然全部映ってます。
オリ・マキは微笑んでいた
スウェーデン映画「ボーダー 二つの世界」に出演していたエーロ・ミロノフが出ている。こちらはフィンランド映画なので、ミロノフがスウェーデン語とフィンランド語のバイリンガルなのか、それとも2作品とも同じ言語なのか不明である。そういうことが気になるということは、あまりのめり込むことができない作品だったということだ。
オリ・マキというフェザー級ボクサーが主人公だが、はじめの方のシーンを観たときから試合の結果がほぼ予想できる。そしてエーロ・ミロノフ演じるマネジャーが登場すると、その予想は確信に変わる。
ボクサーというのは因果な商売で、ファイトマネーで生活できるのは世界チャンピオンクラスのごく一部とされている。練習する場所はジムに提供してもらわなければならないし、指導はスパルタである。独自練習で強くなれるのはチャンピオンレベルのボクサーだけで、しかも極端にストイックでなければならない。無名のボクサーはいろいろな面でジムに頼らざるを得ないのだ。
まだチャンピオンになっていないボクサーをジムが客寄せパンダに使うのは無理がある。しかしジムの経営は楽ではない。引っ張れるカネは残らず手に入れておきたいのが本音だ。カネがなければボクサーを練習に集中させられない。かくしてオリ・マキの練習環境は客寄せパンダとの両立という劣悪な条件になってしまう。
英題の「人生で最も幸せな日」というタイトルの意味は多義的だ。その日は世界タイトルマッチの日であり、ボクサーとしての苦役から解放される日であり、そして婚約の日でもある。名誉や地位といったものに価値を感じないオリ・マキにとって、最も大事なのは何だったのか。それは原題の「微笑む男」に秘密がありそうだ。間違いなくそのときオリ・マキは微笑んでいた。
あまりのめり込むことの出来なかった作品ではあるが、見終わると不思議な後味がある。16ミリのモノクロの映像が醸し出す雰囲気は、如何にも昔の話であることを表し、かつてこのような青春があったのだと確かに実感した。面白いと思わなかったにもかかわらず、もう一度観てみたい気もするのであった。
そして幸せに
フィンランド初のボクシング世界戦に挑むボクサー オリと、興行のプロモートの為に動き回るマネージャー エリス、オリの恋人ライヤの物語。
世界戦を前にして、恋人ライヤが気になって仕方ないオリ。浮わつくなと叱るエリスだが、彼自身も後援者とのパーティーや映画撮影をオリに強いる為、オリの集中力はさらに悪化していく。
誰にも邪魔されず集中したいというオリの気持ちもわかる一方、立場上、興行をプロモートする必要のあるエリスも何一つ間違えたことは言っていない為、うまく二人三脚が取れていないのが歯痒くて目が離せない。
ストーリー自体は、特に緩急もなく凄く盛り上がるような場面もないが、不思議なくらい飽きずにスーッと見られたし、モノクロでもわかるフィンランドの自然の美しさ、また、ツギハギな場面展開が逆に◎
キャラクターでは、真面目でしっかりしているイメージのエリスが、お偉いさんの前や映画撮影では緊張気味にやや空回りしてるのが愛らしかった(笑)
あと、どうでも良いが水着の女性が寝そべる台座をひっくり返して水槽に落とすゲーム。あれは一体どこら辺が楽しいのだろうか(笑)?
いずれにせよ、これまでに見たことないようなタイプの掘り出し物に出逢えた気分でした☆
色々あったけど、この映画のタイトルが「人生で最も幸せな日」で良かった。
"拳闘"
これ、史実なのですネ!?
こんなにも危機迫らないボクシングをテーマにした映画は珍しい?終始マッタリとした展開にボー然と。
恋をしているって、言われた方はアッそうってなもんで勝手にしてくれ的な問題。
最初から恋人関係な訳だったし、支障が出るようなこともない筈が!?
パン屋で働いている描写が一切無くて、パン屋の印象も薄く。
内藤大助を思い出してしまう、呆気ない世界戦。
プロ意識ゼロ役者によるプロ意識ゼロボクサーの話
減量初期だって軽量級ボクサーがあんなもったりした体してたらどうにもならないって。しかも吐いてるときでさえパンツの上に腹の脂肪乗ってるし。吐く前にやることあんだろと。
役者が三文な以上に作りもひどい。え?いつ恋に落ちた?もともと恋人だった人を本気で好きになったってこと?幼なじみだったのかな?ぜんっぜん読み取れない。何なら彼女の登場の時点では妹なのかな?と思ったくらい。
トレーナー役のボーダーのキモい役者はメイクとっても同じ顔なんだなと思いつつ、唯一正しいことを言ってくれて良かったよ。私利私欲というよりも本当にボクシングが好きな感もあったしね。この役者以外ぜーんぶイヤな映画でした。彼女役の人も最初はかわいいなと思ったけど「みんなが勝手に期待してる」という世界戦戦うボクサーの恋人としてあるまじき発言で地に落ちました。私の飾らない笑顔かわいいでしょ?が脳みその中の唯一のパーツなんだろなこの女優はと思うほどに嫌えました。
予想以上にリアルボクシング映画
時代の雰囲気を漂わせつつ、ボクサー人生のある一部分をリアルに描いた、紛れもないボクシング映画。
実話をもとにしているとはいえ、どこかで見聞きしたようなストーリー。あしたのジョーとかロッキーなんかを参考にしたのか、あるいはそれら名作がいかにボクシングというものをリアルに描いていたのかということを証明しているのか─、正直どちらなのかわからないし、どちらでもいい、そう思わせてくれるぐらいに引き込まれた作品だった。なじみある展開というところが大きいんだけど─。
試合自体の凄みなどはそれほど無かったような気がしたけど、そこに至るまでの描写が丁寧で且つ明確で、編集や音で絶妙な雰囲気を作り出していて、心にもかなり響いてきた。
決して美男美女の華麗な物語ではなかったけれど、その物語は限りなく美しく、映像も相当良かったように思う。モノクロの強みや意味を存分に活用していたその映像は、実に巧みだった。どことなくヌーベルバーグ的雰囲気なども感じて、それも60年代というものを意識したものだということが伝わってきた。
結構見応えのあるザ・ボクシングムービーといったところでしょうか。
コッコラのパン屋…の息子
1962年8月のフィンランドを舞台に、フェザー級タイトルを4回防衛中のアメリカ人チャンプとの世界戦を目指すボクサー、オリ・マキの心情をみせていく話。
フィンランドで行われる初の世界タイトル戦を前に、プロモーション活動への疲弊、減量苦に加えて、どうやら恋をしてしまった主人公という流れ。
全編モノクロフィルムに加えて、演出や展開も昔の作品の様な感じで、知らないとそう思う様なつくり。
もともと感情表現が豊かではない主人公で、大きな感情の波がある訳ではないけれど、恋愛に、環境に、苛立ちや焦りや不信感と閉塞感等々をみせていく。
練習や試合のボクシングシーンも勿論あるけれど、この作品でそれはメインではなくて、語るのはあくまでも感情の機微。
大きな盛り上がりがある訳ではないけれど、判りやすく、リアリティも感じられてなかなか面白かった。
ヘルシンキ...... Do you need a reason to like someone?
風景もサウンドスケープも人も動物も.....すべてのものが自然。そのことが登場している役者の演技の自然さをサポートしている。個人的に仏教用語の”遠離(おんり)”なんて知らなくてもこの映画がハリウッド映画とはかけ離れ異なる映画作りがされている事に気づき、見る機会があったのは幸運だけでは済まされない思いになる。
What are we going to do with it?
-Let's kill it.
-Let's release it.
-Let's eat it. (it:瓶に捕まえたハエ)
無口なのに遊園地の水槽・的当てゲームでボールを投げれない女性にも子供に対しても優しい男オリ・マキ。彼の女友達としか最初見えなかったライヤ。マネージャーのエリスの家に泊まった時も、二段ベッドではしゃいでいた彼女。二人の関係が最初、理解することが出来なかったし、難しかった。彼の優しさを逆手にとって利用しようとする人たちを見て、自分の心がすごく汚れてしまっているのに気づかされる。彼らと何ら変わらない。
What if I lose?
What if people are disappointed in me and realize I'm not
the guy they advertised?
What if you're disappointed?
How could I be disappointed when I haven't asked anything
of you?
If anyone's disappointed, it's because of his stupid fantasies.
You're not responsible for them.
Is that so? -Yes, it is.
Will you ....... ?
あたかもメトロノームでもどこかに仕掛けているのではないかと思ってしまう一般の映画の台詞の流れ。この映画に関しては存在はしていないので会話のタイミングが面白く感じる人しか受け付けないかもしれないし、イベントの少ない映画に対しては、拍子抜けされるかもしれない。個人的には、今はやりのデジタルカメラではなく、わざわざ16ミリフィルムで何故撮影されたのか?なんて考える機会を与えてくれた作品。
Remember that you've worked a hell of a lot for this.
You've practiced in the best possible way.
You'll go out there and enjoy.
Show them what you know.
Don't be afraid of anything, not even losing.
You know you're safe.
If it starts going bad, we'll always be there for you.
Is there anything else I can do for you?
No. I'm ready.
フィンランド初となる世界タイトルマッチが地元ヘルシンキで開催されているのに、描き方や声援などの音声を控えめにしているのは意外なものとなっている。わざと盛り上げない表現の仕方以前に、この映画自体がボクシングのイベントなんてあったのかと思えてくる作りとなっている。
「ボーダー 二つの世界」とは、別人のような演技が光っているマネージャー役のエーロ・ミロノフ。改めてすごい人です。
この映画が意味する本当の幸せとは・・・・・?
You think we'll be like them?
You mean old?
Yes, and happy.
Of course we will.
映画サイトでも紹介されている一瞬のトリヴィア。
In the end of the film, Olli and Raija walk to the harbor and
encounter an old couple. The couple are the real-life Olli and
Raija Mäki.
とにかく人にやさしいライヤの笑顔のような映画と言える作品です。
Finally パチパチ
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