劇場公開日 2020年1月17日

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「幸せの価値は自分で決めるしかない」オリ・マキの人生で最も幸せな日 andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0幸せの価値は自分で決めるしかない

2020年3月8日
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鑑賞方法:映画館

思う存分戦いたい。しかし人生色々ありすぎる...
オリ・マキは実在のボクサーであり、1962年8月17日に行われた世界戦も実際にあった試合である。だが、この映画はその試合がメインではない。
世界戦、しかもフィンランドで初めて行われる世界戦で挑戦者となったオリ・マキの恋と、減量と、プレッシャー。それを飄々と描き出している。
まず、恋。「恋をしてしまったようだ」ってお前、最初から恋モード全開だったろ、と突っ込みたくなるくらい恋に振り回される男、オリ・マキ。いちばん燃え上がるときですよ。彼女が気になって、そわそわしちゃって大変。
そして減量。元々ライト級のボクサーであったオリ・マキ、フェザー級に階級を落としているため、減量が中々うまくいかない。サウナでぶっ倒れたり、喉に指突っ込んだり。とにかく苛酷。
減量とも繋がるのが「プレッシャー」。マネージャーが彼にかける期待と持ってくる「ややこしいお付き合い」。会食したり撮影されたり(これがまた「記録映画」のくせにやたら仕込みが激しいのだ)。そしてマネージャーは何やら生活がよろろしくないようだ。
というわけで集中が最も重要なときにまったくままならぬオリ・マキに観てる方は同情を寄せてしまう。プロボクシングは勿論興業なので、ある程度は避けられないとはいえ、しんどいな...大変だな...しかも恋愛も大変そう...。なんだかおばちゃん風に「お兄さん、大変ねえ」となってしまう。勝負の世界では「こいつ軟弱だな」と思うひとも多そうだが。特にボクシングというのは...そういう意味では、オリ・マキは「強いが、猛々しくはない」ボクサーだったのだろうな、と思える。
後半、彼女ライヤのカッコいいひとこと(これは胸に刻んでおこうと思った)を貰って、ギリギリのラインで集中も得て、試合に臨むオリ・マキ...
何が彼にとって「人生で最も幸せな日」なのかは観て判断していただくのが良いと思う(まあ、試合結果は調べれば分かってしまうのだが)。色々な「幸せ」があり、その価値判断をひとに委ねては駄目。というようなことを思った。
ラストシーンにほっこりな仕掛けがあるので、エンドロールも観た方がいいですよ。
あとは全くの余談ではあるが、対戦相手であるデビー・ムーアがこのわずか7か月後にリング禍で亡くなったことを思うと...人生ははかないものだ、と思ったりもする。

andhyphen