メッセージのレビュー・感想・評価
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不思議な魅力に溢れる奥深いSF
本作は、“2001年宇宙の旅”を彷彿とさせる作品である。難解ではあるが、作品の世界観を重視した作風で、総合芸術と言われる映画の本質を感じることができる。本作は、地球に飛来した宇宙船をめぐるSFであり、派手な展開はなく、映像表現主体の不思議な魅力に溢れた作品である。
何の前触れもなく、突如、12隻の宇宙船が地球に飛来する。異星人たちの目的は地球征服なのか否か騒然とする中、アメリカ軍の依頼を受けた言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)は、異星人たちの真意を知るために、彼らとの言語によるコミュニケーションに挑んでいく。そして、試行錯誤を繰り返しながらも、ついに主人公は彼らの言語を解読し、彼らが地球にきた目的が明かされるが・・・。
ハッキリ言って、生易しい作品ではない。分かり易いナレーション(言語表現)はない。時折、主人公のフラッシュバックとして挿入される主人公と子供のやり取りは何を意味するのか説明はない。映像表現から、我々観客が想像するしかない。本来、映画には、映像表現という手法があり、それを最大限に活かした作品である。最近、言語表現を多用した観客に分かり易い作品が多い中では出色であるが、観客の想像力に挑むような作風は刺激的あり、往年の名作SF“2001年宇宙の旅”を彷彿とさせる出来映えである。
宇宙服のような厳重な装備、異星人との接触準備中に手を震わせる主人公など、異星人との接触シーンは極めてリアルであり、敵か味方か全くわからない異星人への恐怖がヒシヒシと伝わってくる。主人公の自己紹介から始まる、異星人との接触による、彼らの言語を解読するプロセスは泥臭く、手探り感が上手に表現されていて面白い。満身創痍状態になりながらも懸命に未知なる言語を解析する主人公の姿は知的好奇心に溢れていて、逞しさすら感じられた。
異星人の地球飛来の目的が明かされると、それまで、一致団結していた世界の国々が分裂してしまうシーンは、非常事態においても、自分のことしか考えられない人間のエゴが丸出しになっている。この先、物語の結末はどうなるかと思っていたら、伏線の回収とともに、作品のイメージ通りのラストに落ち着いた。
観終わって、久し振りに、何か不思議な世界を観たという独特の浮遊感を感じた。作品の世界観を完全に掴みきれず、幻惑された感じがした。全てが納得できる作品も良いが、本作のような、卓越した映像表現で我々の想像力を試すような難攻不落の作品も面白い。本作の不思議な世界観にまた挑んで完全解読してみたい。難問である程、解いてみたくなる。そんな気持ちにさせられる作品である。
イカ星人は墨を吐く
放射能汚染も心配されることから完全防備態勢で内部に入る面々。とにかく、ルイーズ(アダムス)の息苦しさが伝わってきて、こちらまで苦しくなってくるほどだ。下から入ると、重力がいきなり変わる。地球上ではあり得ない!と、『ゼロ・グラビティ』みたいに吐き気をもよおしそうになるのだ。
ガラス面を境にして7本足のイカみたいな異星人と対峙。しかし、相手はちゃんと質問には答えているみたいけど、聞いたことのないノイズを発するのみ。18時間に一度しか扉が開かない浮遊殻物体。二日目にはホワイトボードで言葉(HUMAN)を書いてみるという手段にでた。すると、イカスミをガラス面に吹きかけ、文字みたいなものを描く異星人。それをつぶさに観察して、古代語を解読するように文字を解析しようとするルイーズたち言語学者チーム。
18時間ごとにUFO内部でコンタクトをとるルイーズとイアン(レナー)。円形を基本とした文字を見ていると途端に眠くなってくる。どちらがコステロで、どちらがアボット?・・・zzz
冒頭では、シングルマザーとして娘ハンナを育てる数カット。成長するカットを繋げていくのだが、ハンナは20歳くらい?で病死してしまうのだ。本編でもそのフラッシュバックが何度も織り込まれているが、これは未来のことではないのか?と、なんとなく思えるようになった。時間軸をわざとずらしてあるのだと。終盤、異星人たちが飛来してきた目的をいきなり読めるようになったため、救ってほしいとか3000年後の未来を救うためとか・・・よく理解できなかったが、UFOを攻撃しようとしていた国の一つ中国のシャン将軍に未来で知った言葉を電話で伝え、宇宙人との全面戦争を回避したのだ。異星人に未来を教えてもらい、自分の悲しい未来も聞いてしまう・・・それでも子どもを生みますか?と、試練を与えられたルイーズ。夫になるのはもちろん・・・という展開。見終わってからじわーっと感動させられる。
ルイーズだけはイカ星人と同じく線形時間軸がなくなってる様子。それも彼らと直接対峙したためかもしれない。侵略者には武力でもって立ち向かうという地球人の性質も理解していたイカ星人。12の地域での紛争を無くし、3千年後には地球人の力を借りに来るという極めて平和的な宇宙人だったわけだ。ルイーズがいなくても他の地域に未来を読める人を作り出したかもしれないし、世界の歴史を多角的にとらえるために大きく貢献した形だ。で、シーナ・イーストンの曲は何?
HANNNAHという名前は特別。前から読んでも後ろから読んでも同じ回文になっている。過去から見ても未来から見てもルイーズにとっては愛する娘に違いない。愛という真実があればいいのだから・・・この作品が与えてくれる言語学のテーマ、多言語交流、人類みな兄弟!戦争はやめよう!といったこと以外に愛は永遠なんだとメッセージを貰った。私負けましたわ・・・
【2017年6月映画館にて】
もう映画タイトルも「ばかうけにしか見えない」にしたら?
途中まではワクワクしたのに、オチが…。
丁寧に描写されている場面と、雑な部分と…。
原作未読。
昔、英語なんて使わないのになんで英語の勉強をしなければいけないんだと文句を言う私たちに英語の教員は言った。
言葉を理解することは、相手の思考回路、気持ちを知ること=異文化理解、つまり、あなたの視野を広げ、心を豊かにして、(相手を理解し、思いやるという)人間性を高めること。だから、言葉を学ぶということはとても大切なことなんだ。
この映画をみて、この言葉を思い出した。
(今、英語は偏差値上げるためか、グローバルな場で活躍するための、単なる道具として学ぶものになっているけれど)
ファーストコンタクト。
自分の使っている言葉が通用しない相手との接触。
「意思」で動くのか、衝動・感情で動くのか。自分と同じ、もしくは似た概念、つまり共通項は見いだせるのか?何を手掛かりに共通項を見出し、理解を進めて行けばいいのか…。
全く異なるものとの出会い。その対象への恐怖、戸惑い、そして好奇心…。ルイーズの変化が丁寧に描かれている。
未知の物への好奇心。学者としての本質?初めは怖がっていたルイーズだが、だんだんとのめり込んでくる。『未知との遭遇』を思い出してしまう。
どのように、相互理解を進めていくのか。知的好奇心が刺激されて、へたなサスペンスよりもワクワクした。ルイーズのアイディアで展開していくが、そのアイディアを支えているのは、後方に控えているPCで画像解析・分析している面々。
と、同時に、「カンガルー」という言葉で象徴されるような、世界各地で行われた異文化の出会いを彷彿とさせる。戦国時代、種子島をもたらした異人との交流はこんな風に進んだのだろうか?アメリカでネイティブアメリカンとの交流、オーストラリアやアフリカ大陸でも…。
けれど悲しいかな、武力による植民地化を進めてきた人種にとっては、相互理解でWin-Winな関係を築くことよりも、攻撃こそ最大の防御としか考えない…。しかも、なぜそこで分断するのか。映画的には面白いが、実際の政治的なメリットが理解できない…。
歴史は繰り返すのか、新たな道を見つけられるのか。
言葉。相手を理解し、意思疎通を図るためのもの。
同時に混乱を招くもの。
映画も翻訳一つで意味合いが違ってしまい、レビューでも誤訳指摘があふれるときもある。
同じ言語を使っていても、誤解され炎上するSNS…。
この映画でも、ルイーズが”翻訳”したメッセージをどう解釈するかで危機的状況が加速する。
さあ、どうなる。どう解決するんだ?
緊張が高まったその時、斜め上からの解決法が下りてくる。
えっ?! それ、あり?!
ルイーズがもともと持っていたけれど、それと認識していなかった”武器”で一件落着…。
言語を習得することによって、知らぬ間に身に着けた”武器”ではない。
彼らと接することによって、知らぬ間に身に着けた”武器”ではない。
う~ん…。ここで私の中では映画に対する思いがトーンダウン…。しらけ鳥が飛んでいく…。
”言語”の意義を真正面から取り扱っている映画だと思っていたのに…。
未知なるものとどう対峙するのかがテーマだと思っていたのに。
ペプタポットは非日常ではあるが、
ふだんあまりかかわりを持たない方とのコンタクト、違い言語を話す人、違う文化を持つ人、はじめての場、ハンディキャップを持つ方々他、身近な課題でもある。
バカ受けに似た核は基本自らは動かない。
ペプタポットも、最初は自ら動かない。こちらがしたことを同じように返すだけ。
そこに攻撃性をみるのも、親和性をみるのも、すべて私たちの心が投影されているだけ。
そんな人間の心模様が映し出されるのかと思っていたのだが。
ここで、世界危機の物語から、ルイーズの生き方の物語に転換する。
運命を受け入れるか、あらがうか。
ルイーズの選択は…。
基本、私たちは、明日のこと、未来のことを知らないで生きていく。知らないけれど、うっすらと今と同じような日々が続くと思いながら。
もし、わかっていたらどうなるのだろう。
今、ライトノベルや漫画では”転生”ものが流行っている。まったく未知なる世界に飛ばされるタイプや、人生をやり直すタイプの物も。
失敗や心残りを解消するのかな。
でも、回避できないものや、やり直せないものもある。
生まれてくる子のリスク。出産前の羊水検査。思わぬ結果が出た場合どうするのか。
生活習慣病・ガン、検診。これも、先が見通せる話。癌になるリスクが高いからとまだ健康な乳房を切除した女優もいたが…。
そして親の背中を見て、将来がわかった気になり、夢を描けず、努力をせずに、刹那的に生きる今の若者。
戦中の若者だって、戦争に駆り立てられて、その先に待つ運命を知っていた…。そんな若者は世界中に今もいる。
時制のない世界。フラッシュバックのようなものか?楽しみたいときに、過去の嫌な思い出にとらわれ、未来の不安に拘束される。過去は過去、未来は未来、今は今と割り切れるからこそ、自分をコントロールできるものだと思うのだが。
意思と意志。意志willは、未来を描いて今こうしようというと思うのだから、ペプタポットにもこうしようという未来があるから、時制はあるはずだと思うのだが。
ルイーズの話は、「ああ、そうか」と人生に対する深い洞察を伴い、感動するはずなのだけれど、説明不足なのか、今一つ腑に落ちない。
それでも、映像・音響・世界観は見事。
静かなトーンで、落ち着いた思索にはまれる。
だからこそ、中盤からの展開に惜しいと思ってしまう。
(東京国際映画祭2021屋外上映会にて鑑賞)
メッセージは「時間」そのもの
原作は未読である。
エイリアンと人類の間では「言語」の本質が異なっている。
というスタート地点が興味深い。
ゆえに理屈(時系列を追って)で理解し合うことは不可能だが、
それでも分かり合う、という展開が興味深かった。
その過程で主人公が体得する能力も、時間を飛び越えるだけに、
タイトルにもあるメッセージ、その内容は「時間」そのものだったのだと感じている。
そして「時間」を言語にかえて思考を始めたなら人間は、
何を選び、どう自身を、文明を、構築してゆくのか。
冒頭の、言語は思考であり、文明や人だ、へ立ち返って考えなおしたなら、
これぞSF、と思しき大作だった。
言語がいつももどかしいのは、常に時系列を無視できないところにあるのは、わたしだけか。
もっと包括的な、閃きのように一瞬にしてすべてがかみ合う瞬間、感覚というのは確かにあって、しかしこの一瞬をほどいて時系列で説明することは、本質を損ないやすくとても難しい。
未来において、主人公が過去を教わるシーンがあるように、
原作の発想がもしそこから生まれたのだとすれば、
ビルヌーブ監督の説明臭くない、感覚的な作風とよくマッチしていたのではと感じている。
それにしても主人公が夫と別れた理由について明かされるシーンがあったが、
つまりエイリアンは人類を助けるため、そのことを告げに来たはずだ。
だが最大の災難はほぼ作中で触れぬまま終わっており、
これまた想像を掻き立てられる憎い締めくくりだと思ってもいる。
別に普通
エイリアン出てくるときはイケメン期待したけどタコ型のアレだった……。時間が一方向じゃない理論は好きだし、人類より高度な宇宙人が地球ごときに来てくれた理由には感動した!
でもサイコキネシス使えるのにもうちょっと迅速に爆弾回避できなかったの謎…え、瀕死になっちゃったの?!未来見える系なのに?!みたいな…(ಡωಡ)プッ
あと気になったのが言葉わからない相手に向かって英語聞き取りにくいのがイライラした。もっとハッキリ喋れよ。文字もきたないし。伝える気あるの?って思ってイライラしたから評価落としました。宇宙人なんだから、脳波直接読むくらいのことはしてそうですけど、なんでネイティブの友達相手に喋るノリでボソボソ喋るのかまじで見てて腹立ったしレベル低いゴミ映画かと思いきやこれでアカデミー賞とかとったらしくて驚いた笑
子供が出てきますが、時系列逆の一発ネタモノにすぎん。暇潰しにはなったけど~、、すぐ忘れそうな別に普通の映画かな。感動とかも特になし。
あと、たかが言語学者のオバサンが軍の中でしゃしゃりすぎてて違和感あった。優遇されすぎ。都合よすぎ。こーいう爪が甘い映画はすぐ忘れそうだから評価も低くした。以上
宇宙人、東京やなくて、北海道に現わる
もっと早く観れば良かった
Amazonプライムで配信されてたのでなんとなく視聴。
アプリ内の星評価は高かったけど、退屈だったら観るのやめよ〜くらいの期待度で観始めた。
この作品は物語序盤から終始静かで派手なアクションなどは一切なし。アクション好きな自分としてはもしかしたら合わないかなぁ、と思いつつもなんとなく観続けてみた。すると不思議と物語に引き込まれて行き、終盤になると目が離せないほど釘付けになった。
詳しい感想はネタバレになるので書かないけど、とにかく展開というかタスクというか、が細かくて飽きない。さらに先が読めなくて秀逸。でも分かり易くて明快。
ラストは色々考えさせられる素晴らしい作品に出会えたと思わせてくれた。
色んな考え方があると思うけど、運命から逃げずに受け止める。そういうブレない強さは素敵だなぁと思った。
良くできた映画だけど…
50点
日本という国の立ち位置
そもそも地球外知的生命体が地球に来るならそれは侵略しかない。という考えを持っていた。
それはさて置くって事で。
もうすっかり地球はアメリカと中国が先頭だって突っ走るって事か。
まあ、そういう押しの強さ強引な性格はこのコロナ禍でもよくわかった。
あわせて 日本政府の弱腰チキンぶりもこの映画でものの見事に表されている。
なーんもしないでじーっと見つめてるんだ。
北海道の上空だし。
東京じゃないし。
たぶんこの分じゃ 、中に入ってこうっていう奴もいないからただ眺めてるね。
で、世界と通信遮断するのも周りの状況見て終わりから何番目かって感じで。
中国に付くよりはアメリカの方、と思ってはいるんだろうなって。でも中国とも手を切れない経団連に尻尾握られてる某政治家とかね。
優秀な人材は海外流出が激しく、その原因はまさに凝り固まった脳みその教授陣の陣取る大学にあって、彼らの多くの本音は菅総理のやった学術会議問題で表沙汰になったよね。
日本をよくわかってるわ〜。
って思ってるのは私だけで作ってる方々は気にもとめてない、留めてもらってないと言う方がぴったりか。
時間軸が同一方向にだけ流れるわけではない。という考え方は言われてみればこういう事なのだ。
そういう事実をわかりやすく見せてもらえた。
翻訳ものの書籍はほとんど読まないが、読んでみようと思う。
前にトータルリコールが面白すぎて原作の文庫買って読んだ事はあった。
あ ハリーポッターくらいは読みます。
SFだけど現実的。斬新な概念を味わった。
序盤は主人公の言語学者ルイーズの回想シーンが何度か描かれており、何を意味しているのか不明で疑問だった。
しかし、地球外生命体(ヘプタポッド)とコミュニケーションを図る過程で、人類に常識を外れた「時間の概念」を理解することになる。
今作では地球外生命体が現れたときに、どう対処するのかがリアルに描かれていて、SFだけれでも、現実的で楽しむことができた。
映画を観終えて、考えされたのは「未知の時間軸」を体験することになったら、自分はどう思うのかということ。
人間は、因果的に未来を予測して、時の流れに沿い進み、後に結果を知ることになる。だからこそ、自らが未知の中に期待を創出し、これから取るべき行動などを選択していると思う。
もし、ヘプタポッドの時間軸を体験できるとしても、自分は受け入れるだろうか。自分は”恐怖心”というリスクが上回り受け入れないかもしれない。
しかし、受けれて、ルイーズのようにポジティブに生きるという選択も、どちらにせよ一度の人生だからこそ魅力的なのかもしれない。
いずれにせよ、どんな生命体であれ「死」を避けることはできないんだなと思った。
ヘプタポットは子ども
ヘプタポットの意思表示や音の無いところをみると、幼い子どもに見えました。赤ちゃんまではいかないがそう見えた。独自理解ですが、子どもは教育する親次第ということ。教える内容が陰か陽かで攻撃的になったりする。未来については、教育や体験した事で人間はイメージもできる。未来=善悪のイメージであり自分次第ということ。地球外生命体が現れたとしても先ずは話し合い、時間をかける、慌てない。教える、教えられる事で互いが平和を維持。争わないで何かを互いに得る事。分かち合い。なぜ12個(12か所の国)だったのかは、ヘプタポットを理解する気持ちの有無ととその速度。速度に関してはチャイナが速かったから『この番号を見る意味があった』と言った。その後はルイーズが未来を見れたからチャイナを止められた。12ヵ所の内1か所でも攻撃になればその国は戦争になってたはず、地球を無くさないために12ヵ所にわざわざ散らばった可能性もあるし、ルイーズみたいに解読した人が多ければヘプタポットがつたえたい意味を12ヵ所に速く共有できるから。なぜか、メッセージの映画を見て『戦争、子ども、未来、運命』というキーワードが頭から離れない。
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