「序盤の手際は素晴らしいが絶妙に惜しい」メッセージ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
序盤の手際は素晴らしいが絶妙に惜しい
早稲田松竹の最終日へ
金曜とはいえ雨のわりには客入りは八割くらいで盛況
序盤は恐ろしくテンポが良く、併映の「パーソナルショッパー」を大差で抜き去るものの、宇宙人の言語が謎すぎる件が主人公の前に立ち塞がると、映画のテンポもダウン。
そこからちょいちょい情報の小出しはあるものの、さんざんお預けくらったまま終盤に突入。
そうやって観客をパンパンに我慢させた割には大きなカタルシスはなく、まあ、さんざん擦られてきたファーストコンタクトものにしてはビジュアルやCG、音楽などは魅力的で、雰囲気あったよね…という印象に終わる。
ハードなSFでありながら子供が重要なモチーフで、オチは号泣(人によっては)という部分がどことなく「インターステラー」を想起させるので、あれが好きな人には楽しめるのでは。
原作は未読だがおそらくかなり抽象的、哲学的で奥行きの深い作品と思われるので、読んでいたらもっと楽しめたのかも知れない。
序盤のわかりやすい宇宙人襲来→コンタクトを試みる、という流れがあまりにスムーズなので、そこに乗っかってしまうと、終盤になるにつれ正体を表すその抽象的「メッセージ」についていけなくなる。そ、そもそも映像化が難しいネタだったんだな。
これシリーズもののが良いんでは? というのはないものねだりとしても、ネタに対して2時間弱という尺は、ちょっと足りないと思う。
尺を伸ばすのは無理でも、序盤で圧縮した尺を中盤で空費している印象があるので、せめてもっと早くにネタを割って、最終的に主人公がなにを選ぶのか、その決断への過程に焦点を絞ってくれたら、もう少しストレートに感動できたと思う。
編集でカットされたのかも知れないが、肝心の謎の言語を解明するくだりがオフになっていたり、削るとこはそこじゃない! と思った。
せっかく雰囲気や演出、キャストも良かったので、ものすごく惜しい感じ。
ただ、つくづくこの監督はエンタメ志向じゃないんだなと思い知ったおかげで、「ブレードランナー2049」は思ったより楽しめた。