メッセージのレビュー・感想・評価
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「ボーダーライン」に続き、本年度ワーストか?実はごり押しドゥニ・ビルヌーブの最新作をおっさんはこう見た。
ドゥニ・ビルヌーブ
前作「ボーダーライン」を面白い、つまらない、という意味でなく、期待値からの落差で昨年のワースト1にしたのだが、今もっとも注目すべき監督であることは、その時も触れた。
この監督の作品は、ごり押し的な映像と音響、だが物語りはそれほど丁寧でなく、設定で押し切る、というような共通点がある。
それがうまくいったのが、「プリズナーズ」「複製された男」であり、悪く出たのが「ボーダーライン」と思っている。
初期作「灼熱の魂」「プリズナーズ」は特に「タブー」を題材にしたため、吸引力は必然としてあったのだが、「複製された男」については、「ミステリー」と「タイトル」で、その映像表現と省略、という名の「プラス」の演出がハマったと思う。
オレが「ボーダーライン」を評価していないのは、メキシコの現実の「設定」の上で十分成り立っているのに、余計な映像表現や暑苦しい音響効果でが煩わしく、映画が乗っていないからだった。
省略を「プラス」の演出と見るオレにとっては、「過剰」に「過剰」を重ねたわりに、根っこの味が定まっていない、という印象。
果たして今回はどうか。
「メッセージ」
・
・
・
結論から言うと、本作も全くその通りの映画だった。
よくよく睡魔が襲う、退屈、とかいうレビューが見られるが、全くその通り。それは君たちの問題ではない。
単純にいびつなのだ。
そもそも、宇宙船、宇宙人とのファーストコンタクト、言語解読、という、このミステリアスなSF設定でなぜ睡魔に襲われなければならないのか。
無駄に不安をあおる音響、暑苦しい映像が、全く機能していないからだ。
ストーリーのダメさについても、後半に至っては、宇宙船への攻撃をするかしないか、のサスペンスもびっくりするほど、キレがないし、ラストの愛の告白なんても、あんたら、いつそういう関係なの?
変わることのない未来を受け入れることと、隣にいた同僚を愛するのとは違う。
今年暫定1位のSF映画。原作読むとさらに発見あり
まず、構成が巧み。言語学者のルイーズが異星人とのコンタクトを試みる話に、彼女の娘を中心とする家族のエピソードが時折挿入され、終盤に相互の関係が明らかになって「なるほど!」となる。家族のエピソードはルイーズ自身の変化に関わっていて、異星人の「目的」にもからんでくる仕掛けだ。
原作小説を読むと、ルイーズたちが調査する宇宙船で起きる危険な出来事や、ある外国政府がもたらす危機的状況とルイーズらの対応など、ストーリー上のサスペンスと映像的なスペクタクルをもたらす要素の多くが映画オリジナルであることにも感嘆させられる。
接近遭遇、コミュニケーション、人類の進化など、過去の代表的なSF映画に登場した要素も多いが、緻密な構成とセンスの良いVFXのおかげもあり、知的好奇心と情緒を刺激するオリジナルな傑作に仕上がった。SF好きを自認する人なら見逃してはならない。
難解な原作を分かりやすくしようとしたら
映画を観て、いくつか納得いかない点があったので、
原作「あなたの人生の物語」(邦訳)を読んでみた。
邦訳を選んだのは、英語版より安かったからという理由でしかなかったんだけど、日本語でよかった。
言語学と物理学の話が難しくって、
日本語で読んでも難解なんだから、
英語だったらチンプンカンプンだっただろう。
ともあれ
「フェルマーの原理」(最小時間の原理)が鍵だ
というのは分かった。
「光は、進むのにかかる時間が最小になる経路を通る」
という原理である。
それは光という無機質の存在が
「通ったら結果的に最小時間だった」というのではなく、
まるで意志あるごとく
「最小時間になることを知ってからそこを通っている」
かのように見える、というもの。
これが、この作品の核心であったはずなのだが、
映画では、そこに触れることはなかった。
その結果、
物理学者が登場する必然性もなくなり、
イアン(ジェレミー・レナー)の「仕事」が、
ネタバレしないと言えない「あのお仕事(いやむしろ本能?)」を除いて、なくなっちゃった。
それから、
音声によって時系列で語られる言語と
そうでない言語について――
英語という
表音文字しかない文化に支配されてる感じが
原作にも否めないんだけど、
映画ではそれが、より強くなってる気がする。
音声の時系列に支配されない文字
という点では、
(地球では)漢字がその最たるものだと思うんだが、
それに言及しないというのは
間が抜けてる。
あと、
原作では結局「それ」の目的が不明だったのに対し、
映画では目的を持たせた。
そうでないと客が面白がらない、と思ったんだろう。
でもなんだか安っぽい感じを否めず。
結局、映画は
「分かりやすい面白さ」を目指したがゆえに
穴だらけの中途半端になっちゃった、
という感じ。
画像と音響の醸し出す雰囲気は
よかったんだけどねぇ。
残念。
その「人生の物語」は、誰のものか
原題は『ARRIVAL(到来・到着の意味)』
原作は現代最高のSF作家テッド・チャン『あなたの人生の物語(Story of Your Life)』
監督に『ブレードランナー2049 』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
【ストーリー】
ある日、世界各地に、宇宙船が到来する。
それらはすべて同型で、中には七本足の巨大な知的生命体が生息していた。
その姿からヘプタポッド(七本足)と名づけれらた彼らは、宇宙船を出ようとはせず、待望の地球外知的生命体との接触にもかかわらず、人類はそこからなんら進展を得られないでいた。
言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、彼らとのコミュニケーションを確立すべく政府から要請を受け、現地におもむく。
軍隊がものものしく展開する中、ヘリを降りたルイーズに、おなじく調査によばれた物理学者イアン(ジェレミー・レナー)と合流し、ヘプタポッドとの対話を重ねてゆくが……。
なんでこの作品評を書くの忘れてたんだろう。
何回も見て、ほかの方の評価も読んでたので、とっくに書いたつもりになってました。
テッド・チャン好きとしてはありえないポカですね。
原作はハヤカワSF文庫の短編集『あなたの人生の物語』に収録された同名中編小説。
七本足の巨大な知的生命体との第五種接近遭遇(知的存在との対話)と、その解析にたずさわる言語学者ルイーズと、彼女をサポートする物理学者イアン、二人の人生が語られます。
途中にさしこまれる、いくつもの断片的なフラッシュバック(過去回想)&フラッシュフォワード(ストーリーが進行したあとの映像)、それらがラスト十数分でパズルを組みあげるようにつながる衝撃。
圧倒的アハ感。
「あ。あー、あーそうなのか……そうなのか!」
絵が完成した音が脳内でスコーン!
ってなります。
ただバラバラにされてるというだけではなく、物語の中核である「時間」をあつかう言語からティップス(断片)にされてるって強烈に考えぬかれた構成なんですよ。
ぐえー。
傑作だ……。
原作本もすごくて、他に収録された短編群いずれも好編、傑作ぞろい。
せっかくだから、原作者の紹介などを。
作者テッド・チャンは台湾系アメリカ人。
寡作で、本国アメリカでも中短編集がたった二冊しか出版されていません。
原作本『あなたの人生の物語』は、デビュー中短編集。
15歳から小説を書き、ずっと創作をつづけていましたが、才能が開花したのはクラリオン・ワークショップという創作合宿に参加してから。
アメリカにはこの手の創作小スクールがたくさんあって、そこからデビューしたプロ作家もおおく、そのなかには、アル中治療のために作家活動するなんて変人(RAラファティとか)もいるとか。
クラリオン・ワークショップは六週間の創作プログラムなんですが、講師はプロ作家で、その一人だった『いさましいちびのトースター』『いさましいちびのトースター火星にゆく』のトマス・ディッシュもいました。
ディッシュに見い出され、中編小説『バビロンの塔』を編集者に見せたのが、テッド・チャンの作家キャリアのはじまり。
というかどんだけいさましいちびのトースター書きたいんだトマス・ディッシュ。
二冊目でてるのしらなかったよ。買わなきゃ。
ちなみにデビュー作となった『バビロンの塔』、『あなたの人生の物語』の冒頭に載ってます。
これが高評価をうけ、作家選出によるSF賞のネビュラ賞1991年中編小説部門を受賞。
ネビュラ賞はヒューゴー賞とならぶ、アメリカSF界の超巨大な賞。
日本ではSF大賞にあたる賞で、ネビュラ賞から名前をとった星雲賞は、読者投票でえらばれるヒューゴー賞にあたります。
そこ、アメリカくん!ややこしいよ!
この作品を見て言語学に興味をもたれた方は、ポッドキャストの『ゆる言語学ラジオ』あたりから、楽しんでみてはいかがでしょう。
脱線しまくりですね。
SFっていいよね!
ご清聴ありがとうございました。
運命では無く意志をもって
抑制の効いた映像がとても美しく台詞も無駄が無く、ノイズレスで物語に浸れる。
アボットは辛い未来を知りながら地球へ旅をした。
ヘプタポッドたちと交流し言葉を解析する中、ルイーズはイアンに「彼らの言語で夢を見る?」と問われ、「思考が言語によって影響を受けるという仮説は知っている。幾度か彼らの言語で夢を見た。しかし仕事に影響は無い」と答える。
ヘプタポッドの言語は、短文では平面に近い円環状の意匠のようにも見えるが、イアンは多数のパーツで構成される複雑な構文を3Dモデルで解析し意を読み取った(完全に理解するためには4D思考が必要なのかもしれないけれども、とにかく推理する)
ルイーズはヘプタポッドたちとの最後の交流で自分が持つ“武器”が何であるのかを理解する。
そして彼らが去った後、ルイーズもまた悲しみが待つと知る未来へ歩を進める決意をする(イアンには同情する。彼は知らなかったのだから。)
疑問:ルイーズはシャン上将への架電の事実もその内容も記憶していなかった。どうして?
映画では時点の異なる出来事を垣間見る瞬間が幾度も描かれている。知らなかった何かを知って影響を受けないはずはない。
もしかしたら未来も過去も既定ではなく、ウロボロスサークルのような無限ループでもなく、互いに干渉し合いながら変化してゆくものなのかもしれない。
過去も未来も数多くありそこへ至る経路もまた無数にあるのなら、深く考え意志的にプロセスを進む事で最善の結果に到達することができるのかもしれない。
・だけどなんで you wanna make a beby? を「赤ちゃんを作ろう」に訳しちゃったんですか。これは主題への小さな裏切りだよなっ(ぷんすか)
・設定も人柄も原作とはかなり違う。でもそこもまた面白かった(本にも映画にもまんぞく。)
未来の記憶
突如世界の12か所の上空に飛来した異星人の宇宙船。彼らの目的はいったい何なのか。彼らとコミュニケーションを図るために言語学者のルイーズが呼ばれる。
彼らの使う文字は円環構造を有していてその解読は困難を極めた。その解読の間にも世界大戦の危機が迫る。はたして彼らの真の目的は。そして彼らの使用する言語の意味とは。
人類を圧倒的に凌駕するはずの科学技術の持ち主である異星人とのコミュニケーションになぜここまで苦労を強いられるのか。実はこのコミュニケーションを図ることこそが彼らの目的であった。コミュニケーションを図ることにより人類に彼らの言語を学ばせ彼らの思考力を身に着けさせることこそが彼らの真の目的であった。
彼らの思考、それは彼らには時間という観念がないということ。彼らの中には時間の流れという観念が存在せず常に過去、現在、未来という時を同時に生きる存在であった。
数千年後の未来に彼ら異星人は地球人類の協力を必要とした。その時を見越しての人類との今回の接触。世界の複数個所に偏在したのは人類の可能性を探るためであった。
同じ地球人という種族同士であっても言語の違いや価値観の違いで争いが絶えない人類。異星人間であってもコミュニケーションを惜しまず互いを理解しようと努力すれば必ず理解し合える。それこそがいまだ世界中で常に紛争が絶えない人類に対する彼らが与えたメッセージだった。
彼らの言語を解読し彼らの思考力が身についたルイーズは中国海軍との世界大戦阻止に成功する。彼女も彼らと同様に時間に対する観念が変化し自身の未来が手に取るようにわかるようになった。
異星人の言語解読の最中にもルイーズに頻繫に訪れたフラッシュバック。そこに映し出されるのはいつも同じ少女の姿。この少女はいったい誰なのか。それはルイーズが生んだ娘ハンナだった。正確にはルイーズがこれから生むはずである娘。そして幼くして病で命を失う娘。
ともに解読に携わったイアンとの間にできた子供だった。彼ら異星人との接触でルイーズは自分の運命を見通せるようになっていた。
愛する娘を授かり、そしてその娘を失う運命を見てしまった彼女は果たしてどうするのか。あえて哀しみを受け入れるのか。あらかじめ知らされたその運命をあえて受け入れるのか。
たとえ失われる命であっても彼女は娘を生むことを決心する。たとえ短い命であっても娘はその生涯を生きた、そして彼女はその娘を愛した。すでに体験した未来。彼女はそれを受け入れる。例え哀しみを背負うこととなろうとも娘を授かることの幸せを味わうため、短いながらも命の限り生きた娘とその喜びを分かち合うために。
それはすでに経験していた未来だからこそ彼女はそれを受け入れられたのかもしれない。娘のHANNAHという名にこめられた意味、ヘブライ語で恵みという意味を持ち同じ円環構造を持つその名前。すべての物事には始まりがあり終わりがある。今までもこれからも未来永劫繰り返されるであろう人のいとなみ。だからこそルイーズはそれを受け入れる。
人の人生には必ず終わりが来る、どうせ終わりが来る人生ならば始まらなければいいなどとは誰も思わない。終わりが来るからこそ、その人生の一瞬一瞬を嚙み締めて生きたい。生きる喜びも悲しみも同じように嚙み締めてやがて終わりを迎えるであろう一度きりの人生を生きていきたい。
SFというジャンルでありながら人生の普遍的な意義を問う珠玉の作品。間違いなく人生五本の指に入る作品であり、心の中にずっとしまっておきたい名作。
面白すぎる
将来を受け入れ、瞬間を慈しむ
構成、ストーリー、どれを取ってもあっぱれ。
すぐに理解できないところが難儀、、
時系列
エイリアン→未来予知(別れること、子供が死ぬことを予見しながらも結婚)→ルイーズとイアン結婚→子供→未来予知で離婚する未来と離婚する未来を相談→離婚→子供亡くなる。
言語の現象学
「今」を大事にしよう
シンプルなのに やたらと難解
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品ということと、第89回アカデミー賞8部門ノミネートで音響編集賞授賞ととても評価されている作品ということで鑑賞。
うーん、登場人物が少ないし限られたシーンのみのシンプルな構成なのだが、真のところはやたらと難解。
そして終始暗めの映像と不安を掻き立てられるような不穏な音響は、何となく心がざわついてしまい疲れてしまう。確かに音響編集賞を受賞するだけあって、とても印象的な音使いのだが…。
全体を通して全く退屈さは感じないのだが、かといってなんだか面白味に欠ける。この感じは、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督らしさといえばらしさなのかも知れない。結構好みが分かれる作風なのだろう。
評判通り良い作品だとはいうことは節々でわかるのだが、個人的にはあまり観応えを感じられなかったかな。
最後のルイーズの決断に感動
よくある宇宙人との接触ものかと思いきや、予想外の展開にビックリ。回想シーン=過去の先入観に騙され、未来の光景だとは疑いもしなかった。冒頭から娘の死でトラウマを抱えた主人公の話だと錯覚させられる。
最後のルイーズの決断に感動。辛い未来を知ってでも受け入れて進む、ルイーズの姿勢は私には真似できない。私だったら子供が死ぬと分かってたらイアンとは結婚しない道を選ぶかもしれない。
どんでん返しがあるとは聞いてたけど、斜め上の形で感動系の終わり方に持ってたのが良かった。
こういうの好きだけど一点だけ…
宇宙もので時制を超えた展開好きです。
インターステラーとかね。
これは間違ってDVD借りて2度目の鑑賞なのだけど。
一個だけ疑問が。
将来、ルイーズが自分の出版記念パーティー?で将軍と会う時、
将軍に電話したこと自体覚えてないのはなぜ?
その成果が周囲にも伝わらないと携帯で電話したこと自体罪に問われるわけだし。
でも繰り返すけどこういう映画嫌いじゃない。
文字を用いた地球外生命体との交信を描く異色作
ある日、突如宇宙からアメリカ、中国、ロシア、日本等、世界の12ヵ所に巨大な宇宙船が出現。言語学者のルイーズは、過去に軍で翻訳の仕事をした実績を買われ、物理学者のイアンらと共に、宇宙人が地球に来た目的を探る事になる。宇宙船に招かれたルイーズらは、地球外生命体“ヘプタボット”と交信し、彼らの使う文字を解読する作業が始まった。
監督は『ブレードランナー2049』『DUNE/砂の惑星』シリーズの鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴ。原作はテッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』。
原題は「来日、到着」を意味する“Arrival”だが、邦題の“メッセージ”は本作の本質を的確に表現した素晴らしいタイトルだったように思う。
また、日本ではヘプタボットの乗る宇宙船の形状が米菓子の“ばかうけ”のようだと話題になったが、見れば見るほど黒い“ばかうけ”にしか見えなくなってくるから面白い(笑)
侵略目的ではない宇宙人との遭遇、彼らの使う文字の解読、ヘプタボットの特徴的な7本足やヒトデのような手のひら、宙に描かれる墨を吐き出したような文字と、あらゆる面で独特な世界観が展開される。宇宙船の佇む野原の昼夜様々な景観、霧に包まれたような宇宙船内と画的な魅力も素晴らしく、静謐で美しいSF作品に仕上がっている。
ルイーズ役のエイミー・アダムスは流石の演技力で、パートナーとなるイアン役にはジェレミー・レナー、米陸軍大佐ウェバーにフォレスト・ウィテカーと脇を固める俳優陣も豪華。
脚本の構成による、終盤のどんでん返しが見事。
冒頭から展開される、ルイーズと幼い愛娘ハンナとの思い出。病院で赤ん坊のハンナを抱く様子や、成長し共に遊ぶ様子、小児癌を思わせる重病と抗生物質の副作用による頭髪の抜け。奮闘敵わず、幼くして愛する娘を失ったルイーズの悲しみは、過去の出来事にしか見えなかった。そこから間髪入れずに大学での講義に向かう姿は、“娘を失った悲しみを背負って仕事に励む女性”と勘違いさせるには十分な演出だった。「あなたの物語は、あの日から始まったと思っていた」というモノローグや、父親の姿や名前が登場しない様子に僅かばかりの違和感こそあれど、「余程、旦那さんとは上手くいかなかったんだな」と自然と解釈してしまっていた。
ヘプタボットとの交信を繰り返す中で、ルイーズ度々娘の夢を見る。それは、娘を失った辛い記憶のフラッシュバックで、娘と過ごした日々の中に彼らとのコミュニケーションの鍵を見出しているように映った。
ところが、彼らの目的を知らなければ、中国をはじめとした世界各国が宇宙船へ軍事攻撃を開始してしまうという瀬戸際で、宇宙船でヘプタボットのコステロに、ルイーズは「この子は誰?」という強烈なインパクトの台詞を放つ。「ルイーズは未来を見る」と告げるコステロによって、ルイーズが今まで見てきた娘との記憶全てが、未来視によるものであった事が判明する。そして、娘の父親となるのが、共に解読作業に当たっていたイアンだったのだ。だから父親の名前や素顔が明かされなかったのかと分かった瞬間の気持ち良さは抜群だった。彼が何気なく放った「独身のままだ」という台詞の意味も回収される。
ラストでイアンのプロポーズを受ける際、ルイーズは「この先の人生が見えたら、選択を変える?」と問う。それに対して、イアンは「自分の気持ちをもっと相手に伝える」と答える。
この回答が素晴らしい。恐らく、この台詞を受けたルイーズは、未来視したイアンと離婚する未来には辿り着かないのではないかと思う。ルイーズの未来視では、未来が見えるが故に、イアンを傷付け離れてしまった様子だった。しかし、「未来が見えるなら、ちゃんと相手に気持ちを伝える」と答えるイアンによって、ルイーズは未来が分かった上で、限られた時を大切にすると、彼と共に歩む決心をした。ならば、この瞬間に未来は僅かながらも確実に姿を変えるのではないかと思う。“イアンと結婚してハンナを産み、彼女を病気で失う”という未来は変わらない。しかし、その未来を満たしているのは、本来の未来よりも愛という“メッセージ”に溢れたものだろう。ハンナを失うその日も、ルイーズはイアンと共に悲しみ、さらにその先の人生も彼と共に歩んで行けるのではないかと思う。
この微妙に、しかし確実に姿を変えたであろう未来を予感させる美しいラストに胸が熱くなった。
また、本作は未知へ対する恐怖心から陰謀論に走ったり、過激な行動に出る人間の愚かしさも描かれており、それらを排して“繋がろう”というメッセージもある。ヘプタボットの言う「3000年後に人類の助けが必要になる」という未来がどんなものかは想像もつかないが、それまで人類という種が“繋がり”、存続し続けているよう祈りたいものだ。
物理的時間と心理的時間のトピックを組み合わせた時間をめぐるドラマ
時間は物理的時間、肉体的・生理的時間、心理的時間に大別される。
物理的時間は時計で測れる過去から未来へと流れる時間、肉体的・生理的時間とは体内時計等の時間、心理的時間とは「楽しい時間はあっという間だが、退屈な時間は延々と長い」と感じる時間のこと。
例えば、今でもファンの多い『ある日どこかで』は物理的時間と心理的時間を組み合わせたタイムトラベル映画で、行きたい時代の品物を身に付けて自分に催眠術をかければ、実際にそこに行けるというほのぼのとした映画だった。
原作を読んでいないので詳細はわからないが、本作も物理的時間と心理的時間に関する次のようなトピックを組み合わせてドラマ仕立てにしていると思われる。
①循環的時間と流れる時間
物理的時間の認識形態をみると、古代人の時間意識は生命を左右する作物の収穫、天空の動きとともに形成され、そこでは季節とともに生命が死に絶えるが、新たな季節とともに再び生命が甦るという循環的な時間認識が形成されていた。その後、科学の発達とともに時間は過去から未来へ不可逆的に流れるものだという認識に変容した。
②ラプラスの悪魔
宇宙にあるすべての物質の質量と運動量を知っているものは、宇宙を未来まですべて予言できるという仮説。現在では量子力学により否定されているが、本作では異星人は3,000年先まで予知できるという設定である。
③言語によって左右される時間意識
人間は言語によって思考するが、言語によって異なる時制があるように、言語が異なれば時間意識が変容する。それを本作はSF的に予知能力にまで大幅に拡大している。
本作は基本的な構図としては、SFによくある異星人とのファーストコンタクトもののうち、「いい異星人」との接触パターンである。
言語学者が異星人の言語を習得した瞬間、予知能力を身に着けて、地球人と異星人の戦いを未然に阻止するというだけの単純なストーリーなので、作り方が難しいところだが、冒頭から何度もヒロインの未来のシーンを挿入することで、重層的なイメージを作り上げている。
ただ、ここには好みの問題も入ってきて、「未来がすべてわかってしまうのは味気ない」と考える小生にとって、最後は「ちょっとなあ」と首を傾げざるを得なかった。
ハードSFの金字塔
いろいろ書きたくてめちゃくちゃ長くなるので、内容が伝わるかは置いといて羅列することにした。
ちょこちょこインサートされる娘とのシーンは、最初過去の出来事だと思って観ていたが、次第に未来の出来事だと気付き、さらにループしていて過去でもあるが未来でもある事に気づいた。あれは連続している。
宇宙船は最後ふわーっと消えたが、あれは去ったのではなく、初めからそこに居ないのであり、同時に今も居るんだと気がついた。去ってはいないし、来てもいない。
前後が存在しない世界では時間の概念が無い。いずれ死ぬが死なない。
宇宙船もヘプタポッドも12体現れたが、同時存在なので実は全て同じ1体が同時に多重存在している。
と、ここまで来ると勘づくが量子論が科学の原理原則に栄えたら多分、ヘプタポッドのワールドになると思われ、我々三次元の上の世界は時間を操れるんじゃなくて、時間が無い次元で後先も無いから仏教の哲学で説かれる色即是空空即是色なのがきたる未来なんではないか?と。
僕は神さまと思われる人物?と合って話しをしたことがあるが、間違いなく言えるのは、一瞬で背後に居て、一瞬で居なくなったから、自空をコントロールしているってこと。自分の体験からメッセージはあながち只のSFでは済まない気がしている。
静けさ溢れていて薄暗い霧の中にずっといるような映画
疲れたけどおもしろかった!
映画の空気感自体はずっと静けさに溢れていて、薄暗い霧の中にずっといるような映画でした。
各国が戦争を仕掛けるか…!?というピリピリバタバタはやはり流石にあるものの結構落ち着いて見れる作品です。
実際に宇宙人がきたらたしかに言語学者が解明していくんだろうなあという感心と、一歩一歩宇宙人の言葉を解き明かしていく過程がパズルを解くようでおもしろい作品でした。
学術的にはこういうアプローチになるのねえみたいな知的なおもしろさでした。
過去、未来、現在が同軸に存在するという世界観も私には新鮮で楽しかった。ああなるんだな〜。ああなると自分の選択に意味がなくなりそうで、決められた未来しか歩けなそうでなんかちょっと怖いな。
あとは宇宙人ものなのでいつ殺されるのか?なんか不穏な映像も挟まるぞ?とずっとヒヤヒヤソワソワして気を張ってたのでとても疲れた!
また、一兵卒が爆弾仕掛けるあたりとかの作りは唐突で雑だったりと、ところどころおや?とは思ったり。
でも基本的には楽しく見れました。
人生をどのように紡ぐか、についての映画
宇宙人ヘプタポッドの言語を解読するというストーリーに、フラッシュバック的に差し込まれる女の子の映像に戸惑いながら鑑賞するも、ラストになって全貌が明らかになるにつれ、深い感動が込み上げてきました。
ヘプタポッドの言語を理解することで未来を見通すことができる主人公ですが、そもそも未来という時間概念は西欧近代に限られたもので、そう言えば、日本では、正月が来るとすべてがリセットされるという円環の時間概念がまだ生きているような気がします。(とは言え、過去、現在、未来、という一直線の時間概念がすっかり身についていますが。)
未来を見通すことができる人間がどのように人生を選択するのかという問いは、まさにひとりひとりの人生の物語だと強く感じました。
ヘプタポット語学びたい
ざっくりまとめると
言語は思考を形成する
→エイリアンの言語を学べばエイリアンの思考のエキスが入る
→今回のエイリアンは未来が見える奴らだったので同じ感覚になれた
(正確には過去現在未来を認識していない)
僕もヘプタポッド語を学んで未来を見てみたいな
多分将来は5教科に国語算数理科社会ヘプタになるんだろうな
ヘプタポッドの授業は筆ペン使うんだろうな
ヘプ検準二級とか取っときたいな
ヘプタポッドの単語カードとか発売されるんだろうな
国際ヘプタポッド大学とか青山あたりにできるんだろうな
ヘプタポッド学ぶために語学留学したいけど受け入れてくれるホストファミリーいるかな
余談
宇宙船がモノリスっぽくてアゲ⤴️
最近黒くて無機質の直方体が全部モノリスに見える
録画レコーダーとか触んの一瞬躊躇しちゃう
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