「Farewell, My Lovely. シリーズを”NEVER GO BACK”にしてしまった罪深き続編。」ジャック・リーチャー NEVER GO BACK たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
Farewell, My Lovely. シリーズを”NEVER GO BACK”にしてしまった罪深き続編。
元ミリタリーポリスのはぐれもの、ジャック・リーチャーの活躍を描くアクション・サスペンス『ジャック・リーチャー』シリーズの第2作。
友人、スーザン・ターナー少佐に会うため久々にワシントンD.C.へと戻ってきたリーチャー。しかし、訪れた憲兵隊本部に彼女の姿はなかった。
ターナー少佐がスパイ容疑で逮捕された事を知ったリーチャーは独自に捜査を開始するのだが、何者かが彼らの命を狙う…。
○キャスト
ジャック・リーチャー…トム・クルーズ(兼製作)。
原作は「ジャック・リーチャー」シリーズの第18作目「Never Go Back」(2013)。
前作には『アウトロー』(2012)というヘナチョコ邦題がつけられていたが、今作は原題の通り。そのせいでどっちが前でどっちが後なのか、というかそもそもシリーズなのかどうなのかすら傍目からはわからないというグダグダした事態に陥ってしまっている。…まぁ特にお話は繋がってないから観る順番を間違えても大した問題ではないんだけどね。
前半はレイモンド・チャンドラー、後半は平松伸二という訳分からん構造で我々観客を驚かせた前作に比べると、本作はとてもわかりやすいアクション映画になっている。
前半と後半とでまるで違う映画になってんじゃねーかっ!!という事もなく、悪の組織とMP、その両方から追われることとなったリーチャーたちの逃走劇、そしてそこからの一転攻勢をスリリングに描く。
前作がガタガタの砂利道だとすると、本作は綺麗に均された舗装道。確かに一本筋の通ったサスペンスアクション映画になっており、そこを指さして「完成度が高まった」と褒めることは出来る。
しかし、ガタガタの未舗装道路をドライブする愉しさや喜びといったものは間違いなく存在しているわけで、前作はそこが魅力の一つになっていた。ハードボイルドさや悪党を皆殺しにするのも辞さない荒唐無稽さをスポイルしてしまった結果、どこにでもあるただのアクション映画に成り下がってしまった、というのが正直な感想である。
『ウルヴァリン』シリーズ(2009〜)や『マイティ・ソー』シリーズ(2011〜)、『ジュラシック・ワールド』シリーズ(2015〜)など、とかくヒーローは血の繋がらない少女と親子関係を結びがち。ジャック・リーチャーも御多分に漏れなかったわけだが、これを2作目でやってしまうというのは時期尚早だったのでは?
ウルヴァリンなんかは初めてスクリーンに登場してから17年という時間が経っているからこそ、『LOGAN/ローガン』(2017)での擬似親子関係に感動したのだが、ジャック・リーチャーとは付き合いが浅い。まだ1作しか観ていないのに「孤独なオレにも心の拠り所が…」とかやられてもなんの感慨も湧かないのである。
本エピソードが原作小説では18作目にあたることからもわかるように、これはガッツリとジャック・リーチャーの人生を積み上げて初めて描くことが出来るもの。長編映画2作目でやって良い内容じゃない。
本作の興行成績が不発に終わった事を受け、本シリーズはこれにて”NEVER GO BACK”となり、その後はアラン・リッチソン主演のテレビドラマとしてリブート(2022〜)されることとなった。
トム・クルーズとしては手痛い敗北という事になるのだろうし、もう少しトムが演じるジャック・リーチャーを観てみたかった気もするが、ぶっちゃけ本作の内容は『ミッション:インポッシブル』シリーズ(1996〜)と大差ない訳で、それなら『M:I』シリーズに注力すれば良いよね、とも思ってしまうのであります。