「立てなくなる映画」アベンジャーズ エンドゲーム てっぺいさんの映画レビュー(感想・評価)
立てなくなる映画
超豪華キャストはもちろん、笑いも涙もあり、映画史に名を残す要素てんこ盛りのブラックホール的映画。シリーズ完結を叩きつけられるラストに、“アベンジャーズロス”でもう席を立てなくなる。
◆概要
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)第22作、「アベンジャーズ」シリーズ第4作。監督は前作に引き続き、アンソニー&ジョー・ルッソ兄弟。出演は「シャーロック・ホームズ」シリーズのロバート・ダウニー・Jr、「gifted/ギフテッド」のクリス・エヴァンス、「ルーム」のブリー・ラーソン、「グーニーズ」のジョシュ・ブローリンら。マーベル史上初の3時間上映。吹替収録にモザイクなど、厳重過ぎる緘口令もしかれた笑
◆ストーリー
前作で、宇宙最強の敵サノスに立ち向かうも、ヒーローたちを含めた全人類の半分を消し去られたアベンジャーズ。残されたメンバーたちで再結集し、再度戦う姿を描く。
◆感想
3時間もの上映のあと、疲れるどころかまだ見たい、席を立ちたくないと思った映画は初めてかも知れない。内容はもちろん盛りだくさん、涙も笑いもあれば、この映画がこの映画単でなく、シリーズとしての終わりを体で感じるからこその感情なのだと思う。
自分はマーベル映画歴はまだ長いとは言えないものの、この得も言われぬ脱力感。マーベルのコアファンならこのアベンジャーズロスがエゲツないレベルで起こっていると思ってしまう。
ネタバレ前にまずは俯瞰の話から。この映画ほど長期に渡って露出を目にした例はなかった。FilmarksなどのSNSやウェブ媒体はもちろん、テレビに雑誌にもちろん映画館でも山ほど。調べると、投じた広告費は220億円でマーベルとしてもディズニーとしても過去最高。映画の歴史上もおそらく稀に見る額なはずで、そんな額を投じられるほど肥大化したマーベルの、本作はまさに本気の本気を叩きつけた最終のアウトプット。同時に「アバター」や「タイタニック」などがタイトルインする世界歴代興行収入史におそらく名を残す、歴史的な作品を自分は目の当たりにしたのだという認識です。震える。
◆◆以下ネタバレ◆◆
サノスが冒頭であっさり消える、逆にこの映画が何か奇をてらう事をしようとしている前半の暗示感。タイムトラベルというある意味映画の禁じ手を使う流れに少し不安を感じた中盤が、その事を目一杯活用した超贅沢で内容てんこ盛りな後半で払拭。アイアンマンやブラック・ウィドウなどの犠牲もあり、全てがハッピーエンドでありきたりなアメリカ映画にならなかったことも満足。
そして何よりも震えたマーベルオールキャストのバトルシーン。大も小も人も怪物も交わる「レディ・プレイヤー・ワン」を超えるカオスの中、各キャラのファンを満足させるきちんとした個々の活躍。ブラックパンサーが放つ大群衆に巨大化アントマン、大洪水から場を守るドクター・ストレンジ。シビれまくる流れから、空から宇宙船を破壊して登場したキャプテン・マーベルに、悲の感情でも喜の感情でもない、どこかから湧き上がって止められなくなる不思議な涙を体験したのは自分だけじゃないはず。その後の女性ヒロインの集合カットの迫力もすごかった。
個々の活躍で忘れてはいけないのが、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーチーム。「アホ?」「ええ」のくだりと、「こいつと木の二択しかなかった」にはおおいに笑わせてもらった笑。シリーズラストにしてアベンジャーズでのお笑い担当の座を確固たるものにした笑
タイムトラベルものは数あれど、過去の自分と戦ってしまう映画も中々ないのでは。キャプテンアメリカvsキャプテンアメリカの肉弾戦もアツかったし、ネビュラvsネビュラで過去ネビュラが撃たれても今ネビュラが消えなかったのは…まあご愛嬌笑
マーベルお決まりの、エンドロール後の何かを予感して席を立たなかった、自分も含めた映画館の観客に、何事もなくあっさりつきはじめた館内灯。エンドゲームが本当にエンドゲームなんだと現実を叩きつけられたラストだった。
“金字塔を打ち立てる”なんてよく言います。金字塔という言葉の語源はピラミッドなのだとか。金の字はピラミッドの形を表現しているらしい。この映画の激しく長いエンドロールに見るスタッフの多さ。その無数のスタッフ達が支える、文句なしの豪華出演者たち。そんなピラミッドが作り出す輝かしい頂点であるこの映画というアウトプットを自分は体験したわけで、前述した興収の話とそんなピラミッド的二つの意味でまさに、本作は映画の歴史に金字塔を打ち立てる作品だと言っても過言ではないはず。
エンドロールの最後に響いた、金を打つ音。あえて言わせてください。あれは本シリーズの立役者であるアイアンマンが金を打つ音であると同時に、それこそ金字塔を打ち立てる音なのだと。
ヒーローものが実は食わず嫌いだった自分を、ガッツリのめり込ませてくれて、映画の楽しさをグッと広げてくれたこのシリーズとマーベルに感謝したい。Avengers...Assemble!あと3000回はヒーロー映画を見たい!
◆独り言
ここまで肥大化したアベンジャーズというシリーズとマーベルという組織。シリーズを本当に完結させるには、次の“何か”が見えていないとその組織として誰も納得して行動できないはず。今回の完全なシリーズの完結は、むしろ次の何かが相当巨大なものだという暗示なのでは。その何かに、是非とも期待したい。