淵に立つのレビュー・感想・評価
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セリフをそぎ落とした、カットの間もいい
一人娘をもつ平穏な家族の中に、ムショ帰りのひとりの男が住み始めて、痛ましい傷跡を残して去っていき、その後の家族の成り行きを描く。 多くを語らないセリフ、映像の間、画角いずれも意図を感じられて、引き込まれる。 浅野忠信、筒井真理子といった俳優の演技も卓越しているけれど、その演技も含めて、不気味なひとつの世界観に統一されているところが監督の手腕を感じる。
映る家族
家族を描く日本映画は沢山ある
この映画は前半と後半で全く同じだが、全く違う家族が描かれる。
前半で映る写真を撮る3人の家族と1人の男は、ラストで全く違うものにみえる。
淵に立つ崖っぷちの家族はこれからも変わり続けるのである。
映画を見終わった後も話は続いていく、映る物の面白さや怖さ、それが自分の人生にも関連しているように感じさせる映画だと感じた。
シーツのシーンはどのホラー映画よりも怖さが残る。
そうか、「絶望の」
変なタイトルな映画。「淵」って何だろう。田淵とか長淵とか人の名前でしか聞かない漢字。あれ、ひょっとして「ブチ」か?猫? そうか、絶望の淵に立つ。 所々にその「絶望」があった。 八坂は約束が絶対。約束の為なら殺人も犯す。彼の絶望はアキエとの「密約」だと思っていた。トシオがいないその時に掌を返された。絶望した彼も覚悟し掌を返した。 アキエは常に「淵に」立っていた。彼女は神様に縋っていたが、次第に自分しか信じられなくなり、最後は道連を選ぶ。 そんなアキエを道連に向かわせたのはタカシだった。彼の絶望はアキエに言われた一言。彼はそれを受け容れようとする。そんな覚悟ない、と言い切られてしまうが、彼はあの人の息子。でもあの人とは違う覚悟があった。 トシオは絶望には鈍感。八坂が現れ居着かれても、アキエに八坂との過去がバレても、八坂がその後見つからなくても、絶望とまでは思ってなかった。そんな彼に訪れる「絶望の淵」は余りにシンドイ。 ホタルは絶望しても、自力で何とかする。 それがラストに現れる。 河辺で八坂のトシオへの一言が、劇中で八坂の心情が見られる唯一のシーンだが、そのセリフが戦慄。 セリフも少なく、ナレーターもテロップも無い作品で、フランス映画っぽいなーと思ったら、フランスとの合作でした。 決して楽しい話ではないが、「面白い」作品でした。
全てを分かりやすく語ることもなく、こちらに預けてくる感じは気を休め...
全てを分かりやすく語ることもなく、こちらに預けてくる感じは気を休めずしっかりと向き合わせてくれた。 かなり印象的な作品になると思うので星4にした。
不快で、無駄に長い映画。
不快で、無駄に長い映画。浅野忠信主演ということで期待してしまった。八坂は実は無罪、とのことらしいがそんなことはあまり重要ではないように思えるくらい長い。カンヌである視点部門受賞作というが、僕には全く評価できない。タイトルの意味はラストシーンで判明する。ストーリーも不快だが、浅野忠信の役がとにかく気持ち悪い。
背筋ぴーん
白のワイシャツに黒のスラックスの着こなしだけで不穏さが漂う。普通に着てもこうはならない。8年後の筒井真理子のお尻のボテっとした感じにその年輪が刻まれる。 後妻かと見紛うよそよそしい朝食シーンから、8年後の馴染んだ雰囲気へと。子は鎹といえども、罪のない子供に重荷を背負わせ、八坂の子供に詰め腹を切らせるような展開は、子供を罪悪感を演出する道具にしているようにも思え、受容れ難いものもあった。
『よこがお』は傑作。こちらは。
まず、過去設定の浅野忠信の殺人事件の動機とか経緯をどうして描かないのかがよく分からない。 いや、描けない理由はよく分かるのだが。浅野忠信、古舘寛治ともに本当のことを言ってるのか嘘を言ってるのかがよく分からないキャラクターにしてあるのだ。だから仮にどちらかに真相を語らせた所でそれが本当か嘘か分かりようがない。古舘氏をもっと分かりやすいキャラクターにするしかなかったんだと思うんだが。 よく分からない設定にモヤモヤしながら物語が進んでしまう。 浅野忠信の息子がなぜ工場で働くことにしたのか、彼が言ってることが彼の知っている真実なのかも謎のまま。話が進む毎にこの辺のモヤモヤが溜まっていってしまう。
心がズタボロになる
先日DVDで「よこがお」を鑑賞し深田監督に興味を持ち この作品を鑑賞 観ていくうちに心が映画のタイトルと同じく 淵に立たされ心の奥深く暗く苦しい闇の中に引き込まれ 身体さえも重だるく倒れそうになった 作品としては人間の心の奥底を見せてくれる作品なので 評価は4だが他人に薦めるのはためらう こちらも「よこがお」と同じく筒井真理子が出演している 普通に生きているどこにでもいそうな平凡な主婦が 昔の夫友人演じる浅野忠信の出現により 観るのも恐ろしい信じたくない光景が次から次ヘと 描かれる 「よこがお」も「淵に立つ」もやはり 最初に真実に勇気をもって立ち向かっていれば こんな状況にはならなかったかもしれない 観ていて心がぐさぐさ切られ疲れた
勝手に考察!
語られていない部分を勝手に考察! 山形。庄内地方のキリスト教系孤児院に育った八坂。特定の宗教は持たないものの、原始の信仰心のようなもの(神との契約に応える義理)が身に付いている。そこでオルガンも習った。 ヤクザ風情の男は、約束絶対主義者の兄貴肌。女にゃめっぽうモテるが、自分の内なる幸せを拒む性質から、どんな女とも刹那的な関係しか築けない。 「はみ出し者」「壊れかけそうなもの」。彼はその余情そのものである。 八坂の子を一人で生んだ女は、母親としての役目を果たさなかった。息子のタカシに生きる喜びを教えてやらず、命の尊さを否定させた。 一方。 甘ちゃんのトシオは、工場を営む父親に反抗的な態度を取りながら、流されるままの人生を送っている。自立した知性に全く欠けている。保身という利欲に聡い人間は義理に疎い。 そして、敬虔なクリスチャンのアキエは、神の御心に全てを委ねる生き方に甘んじている。弱き者への「無自覚な上から目線」。自分の人生への「無自覚な無責任」。 この夫婦の共通点は、自発的に目の前の問題に対峙しようとする潔さを一切持ち合わせていないところだ。 そんな両親に、神が試練を与える。ホタルの受難によって、二人は強制的に「心」を動かざるを得ない状況に落とされた。 殉教者の証である「赤い」ドレスを受け取った瞬間に、神の制裁は下っていたことが恐ろしかった。
白シャツ姿の浅野忠信
予備知識なしで鑑賞。 冒頭からただならぬ不穏さが漂う浅野忠信登場シーン。敬語で喋る姿勢のいい姿、それが逆に空恐ろしい。予感は当たりどんどんとヤバい方向へ… 中盤辺りから苦しいくらいなヘヴィな展開で見るのが辛かった。終わってしばらく放心状態に陥った。重く救いの無い物語で、タイトルも含め観客に問いをぶつけるタイプの映画。 役者はみな良いが、やはり悪魔的な存在感の浅野忠信が特に素晴らしい。 観る時は覚悟する必要がある映画です。
誰もが淵に立つ可能性あり…
この家族にこの男が現れなかったら、彼らの人生はこうはならなかったかもしれない。 殺人という罪を背負ってしまった事実から、誰も逃れることはできないのだ。 「これは俺らにとっての罰だと思う」というようなセリフがあったが、確かに共犯なのに名乗り出なかった夫、何も知らずに殺人者に心を許してしまったプロテスタントの妻。 八坂はなぜ2人の娘を殺めようとしてしまったのか。2人に対しての嫉妬なのか。 幸い命は助かったが、障害を負った娘。そして、何の運命の間違いか、八坂を父に持つ息子を雇い入れることになる。 結局、どこかで人生の歯車を掛け違えてしまった男は、全てを失うのである。そこに人間としての生き方を問うているようでもある。自分の過ちを隠し、人生をやり直そうとしても、必ずどこかで裁きがあるということか。また、宗教を信仰していても、何の神の御加護はなかったということになる。
ホント人生の淵
ごく普通の家庭に1人の男が現れ、進んでいくお話。 各主演者に無頓着さがある男性、二面性がある男性、プロテスタント性を魅せる女性など、個々に性格がある俳優を用意。 秘められた人間性が絡み合い、徐々に共演者を人生の淵に追い詰める。 浅野忠信という圧倒的演技俳優もいながら、使い倒そうとせずにあくまで映画のアクセントとしているのは、深田監督さすがである。 映画らしい謎や描写(八坂の服装の色、なんだかんだ言いつつ利雄のラスト頑張る行動)も残しつつエンド。 疑問点ありつつ終わるが、タイトル通りの映画を楽しめた。 宗教性でも無い。善悪の価値観でも無い、何かを訴える映画でも無い。 言えるのは誰もが隣にあり得る世界観。 私は「映画」という枠の作品としては個性があって好きです。
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自宅(CS放送)にて鑑賞。後を引くビターな物語で、オルガンの音色がオープニングとエンディングで用いられている。あくまで写実的で現実のみを写した前半と対照的に八年後となる中盤~(特に)後半にかけて、幻想的なショットが増え出し、やや間延びした感がある。特に水中からのショット以降は微妙。起承転結で云えば、いきなり八年後に舞台が飛ぶ「転」がピークを成し、展開を含めやや尻すぼみな印象で残念な思いが残る。唐突に迎えるラストに限らず、詳細を意図的に省略したと思われる作りをどう捉えるかで評価が分かれる。65/100点。
・突き放した様な遠景が多く、その分表情が読めるアップが意味有り気に映える。食事時に交わされる犠牲と罪を説く蜘蛛のエピソード、しがみ付く猿と銜え運ばれる猫と暗喩的に宗教論がちりばめられており、深読みが出来る内容となっている。
・浅野忠信演じる“八坂草太郎”をメインに書くと態度を一変させる際、露呈させるアンダーシャツと幻想に登場するシャツの色、篠川桃音の“鈴岡蛍”を初めて見掛けた際に後ろ姿で揺れるランドセルと発表会用のドレス、“鈴岡章江”の筒井真理子と赤い花の下での初めてのキスシーン等、赤色が先に起こる不吉な暗示であり、不気味な記号として用いられている。
・潔癖症に陥った八年と云う歳月を10数キロと云う体格変化で表現した“鈴岡章江”の筒井真理子、“八坂草太郎”の不気味な微笑みと存在感、どこにいても所在無げでありつつ含みのある古舘寛治の“鈴岡利雄”、一見礼儀正しく誠実乍ら本心が見えない父親の一面を彷彿させる太賀の“山上孝司”と作り込まれたキャラクター設定とそれに応える演者達により本作は成り立っている。
・鑑賞日:2018年2月24日(土)
古館寛治
鈴岡利雄(古館寛治)とクリスチャンの晃江(筒井)の夫婦には小学生の娘・蛍(篠川桃音)がいる。八坂(浅野)が突然訪問し、突然の雇い入れ。誰にでも敬語を使い、親子にも溶け込めた感じの八坂。蛍にもオルガンを教えたりする。過去に犯した罪や収監されていたことも正直に話す八坂に対し、晃江は次第に好感を抱き口づけを交わす仲に・・・蛍が友達のところへ行くと言って外へ出てから事件が起きた。蛍が高架下で血を流して倒れていて、近くに八坂が呆然と立っていたのだ。
8年後、蛍は障がい者となっていて、工場も若い山上孝司(太賀)を雇っていた。仕事中、孝司が突然、「八坂は父親です」と告白する。折しも、鈴岡夫妻は8年前に何が起こったのか知りたいがために、あの日以来行方不明となっていた八坂のことを興信所に探してもらっていたのだ。
利雄は晃江に「八坂の共犯者は俺だ」と告白する。蛍が障がい者となったのも、不倫してた晃江と共犯者である自分に対する罰だったんじゃないかと語る。そんな時、興信所から八坂らしき男を発見したと報告があり、どうでもいいと思いかけてた鈴岡だったが、孝司を連れて彼を探しにドライブに出かけるのだった。晃江は「孝司くんを連れてきたのは、八坂の目の前であなたを殺すつもりだったから」などとうそぶく。しかし、見つけたそれらしき男は八坂とは全くの別人。晃江は蛍を起き上がらせて一緒に橋の上から飛び降り自殺。孝司とともに利雄は2人を救助するが手遅れ・・・
蛍を負傷させたのは八坂だったのかどうなのかも不明瞭のままだし、最後に利雄は人工呼吸をするものの、蛍、孝司は助からなかったのかどうなのか?晃江は息を吹き返していたのはわかるのだが・・・
無表情な浅野が適役!!
初っ端から危うい雰囲気がプンプンしていますが、浅野の無表情な感じが役にぴったり合っていました。妻がモーションをかけすぎて、「ウォーキング・デッド」の思わせぶりな妻を思い出しました。後半は仕切り直して盛り上がるという事もなく、息子が来たのは無理がありますが、それをやるなら奥さんに言い寄るまでがセットだと思います。ラストはシュールなギャグかと思いました。全員が一行で説明できるくらい、キャラクター描写が薄いです。
罪と罰を背負って生きることはこんなにツラいのか
・母親が男を拒んだゆえに娘が暴行にあう流れが鳥肌がたつほど恐ろしいと思う初めての体験 ・日本映画ながら、静かな入りから急な展開にズシンとくる重い内容からミヒャエルハネケ作品と同じ手触りを感じた ・事件から8年経った時間経過が演技演出で非常にうまく引き込まれた、母(筒井真理子)のくたびれ具合が圧倒的なリアリティ ・ラストがイメージシーン多目ですこしファンタジーも混ざっていたのがちょっぴり拍子抜け
いままでとは違う家族の描き方
いつ崩壊するかわからない日常 加害者と被害者のように 対峙するもの この映画に登場する人物は皆 何かの淵に立っているのではないか 映像美というよりも 演出美な印象 さらにはキャスティングと脚本が良い 説明するのではなく 観客に感じ取らせる
悪魔じゃない。神だ。
この浅野忠信は悪魔のような存在に見える。 だがしかし、そうではない。 彼は悪魔ではなく、神なのだ。 神は人の原罪を炙り出す。 彼の所為で人は自分の原罪に真正面から向き合わされる。 そして、身悶えるのだ。 原罪に家族とか親子とかは関係がない。 原罪は自分の原罪であって、家族だろうが親子だろうが何ら関係がないのだ。 人は自分の原罪に身悶える。 身悶えは何年も何年も続く。 この映画にはその苦闘が描かれている。 身悶えに逃げずに立ち向かった、監督と役者さん達。 賞賛の拍手を送りたい。 傑作だ。
本心なんて誰にも分からないから怖い…。
皆、ギリギリのラインで生きている感じ…。 淵すれすれで、ゆらゆらと不安定な心情が続いています。 なんとも言えない作品。 カンヌの「ある視点」に出店しただけあって、独特な救いようのない焦燥感に苛まれました。 気を許していた男に裏切られる悲しみ、そして悲しみに塩を塗るかのようにやって来た1人の少年。 年月を重ねてジワジワと苦しめて行く家族に、「救い」という言葉はどこにもありません。 神様への祈りも虚しく、絶望的なラストに茫然としました。 浅野忠信さんの含みたっぷりな演技と、太賀さんの好青年演技。 相対する2人が印象的です。
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