淵に立つのレビュー・感想・評価
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歓待
ほとりの朔子のときもそうだったけど、相変わらず水と緑と白の使い方や画の構図が美しく、それなのに、それでいて、全体の雰囲気は不快指数100%。
これはもう職人芸に近いと思う。
古舘寛治の薄ら寒さ、浅野忠信の薄気味悪い威圧感、太賀の浅はかなウザさ、これらもある意味職人芸に近いと思う。
とにかく色々引っ掛かりまくる映画だった。
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役者の無駄遣い
筒井真理子の熱演に引き込まれました。
しかし、そこだけなんですよ。
何なの?この監督。
この作品の前に同時上映された『鳥』という作品も含め。
もうこの監督の作品は2度とお金を払ってまで見たいとは思いません。
何、このストーリー。
誰得?
誰目線に立っても寄り添えられない。
ものすごく味のある演者さんたちの、素晴らしい演技力を、このような作品のために浪費して欲しくないと思いました。
脳内処理にかなり時間が掛かった特別で初めての作品
演者さんの力もさることながら、深田監督の独自の感性と飾らない演出、そして音楽もマッチして良い作品である。
そして自分に置き換える事が出来る事象。
間違いなく観たほうが良い。
観てから暫くモヤモヤするのは覚悟しておきましょう。
家族
この映画の主題は、
ある人の罪を、その家族が背負わなきゃならないのか、って事なんじゃないかと思った。
母グモは、子供のために犠牲になることを美しいと言う。
子供は、母グモを犠牲にしてまで生きたくないと言う。
父グモはどうなのか?
父グモである利雄は、殺人事件の共犯者でありながら、自分だけ罰を受けなかったのみでなく、妻と娘に囲まれて客観的には幸せに暮らしていたが、彼なりには罪の意識に苦しんできた。
だから、母グモが共犯者と不倫をするように仕向けることで、自分の罪の意識を軽くした。
そのせいで、共犯者は子供を暴行し、子供が重度障害者になってしまった。
父グモは、母グモと子供が不幸になることを、犯罪者である自分に対する罰だと言い、
自分のせいで娘が重度障害者になってしまったことを「安心した」とまで言う。
罪の報いを受けることで、自分の罪が軽くなった気になるのはわからなくもないけど、
それは、本来なら無関係なはずの家族が背負わなければならないのか?
始終、他人事のように飄々としている利雄に、胸糞悪くなる。
しかし、最終的に母親は子供の命を奪おうとし、
子供は、母親を犠牲にしても生きようとする。
父親は、どこまでも傍観者…
罪と購い
2016年最後の鑑賞作品を飾るには余りにも深い内容であった。まるで明治時代の私小説のような文学性が高いストーリーである。
夫の結婚前の殺人共犯の罪。男を愛してしまう妻。しかし、すんでのところで交わりを断られた男は、あろうことかその夫婦の年端もいかない小さい娘に暴行を加え、死ぬ手前の身体的麻痺に追い込んでしまう。そう、総てはすんでの『淵』の所で家族はしがみつく人生を男に背負わされてしまうのだ。後半出てくる男の息子も又、そのすんでの家族と共に父親の罪の意識に苛まれる。こうしてまた男のせいで『淵』に立たされる人間を産んでしまう。生と死の淵を弄ぶかの様に男の亡霊が家族を追い詰め、淵から踏み外す妻。娘を道連れに心中を図ろうと淵から堕ちた母娘は、しかし一歩で又助かってしまう。しかし娘はその死からこちらに戻るのかそれとも堕ちていってしまうのか、父親の必死の救助と共にエンディングを迎え、その顛末を見据えることは観客はできず、淵を漂い続ける。そんな重厚な作品だ。
浅野忠信の切れている演技もさることながら、やはり古館寛治の煮え切らない演技は大変秀逸であり、注目していた役者としてとても満足する演出である。
哲学的なメッセージも含めた本作品の深遠な闇が、まるでコールタールの様に纏わり付き、引き摺られるようなそんな気持ちを深いため息と共に映画館を後にした内容であった。
こわかった。
筒井真理子がよかったです。
8年前の隠し切れない色香と、
8年後の罪悪感と介護疲れが前面に出た容貌とのギャップたるや。
すでに50代半ばで、どんだけ色っぽいねん、震えるわと思いました。
河原でヤサカと連れ立って、夫と子供が見えない場所へ行くわけですが、
絶対なんかあるやろという妖しい予感が漂っており、
ヤサカの腕がアキエに伸びた瞬間、ほらみたことかーと心の中で叫びましたよ。
怖い映画です。
ヤサカと共犯者のトシオがどういういきさつで誰を殺したのかがわからないですが、
まあ、それは主題からそれるわけですから、なくてもいいのですが、
ヤサカの真意が全く見えないことが怖くて怖くて、震えます。
もしかするとヤサカは本当のことしか言っていないかもしれません。
もしかするとトシオへの復讐に来たのかもしれません。
蛍は何をされたのでしょう。
もしかするとヤサカではないかもしれません。
でも状況からして十中八九、ヤサカが手をかけた考えるのが自然でしょう。
ヤサカの息子であるコウジくんがトシオの工場に働きに来るっていうのは、
やりすぎちゃうんかいと思いました。
わたしは、家族とか夫婦とか親子とかに存在するといわれる愛ってものは、
おおよそハリボテだろうと思っています。
なので、いまさらいわれなくても知ってるよ、という気持ちで見ていました。
冒頭からトシオとアキエと蛍の食卓は、すでに心が離れているな、
と思ってみていたのですが、どうやらあれは幸せだった家族の1コマと
捉える方が多いとか。
そっか、私には娘出産後はセックスレスになり、既に関係が終わっている夫婦に
見えていたのだけど、見たいものに近づけて解釈しているのですね。
それはさておき、夫とは没交渉であり、自然とあった信仰をアイデンティティの
柱として自認しており、それ以外の汚い欲望などはあまり見つめないようにして
普通に妻で母であることに納まっていたが、ヤサカに気を許し、秘めていた欲望が
もれ出てくるわけです。でも、一線は越えなかった。
アキエの中途半端な欲望の発露と拒絶が、ヤサカの欲望を蛍への暴力(?)へと
転嫁させる一因になったかもしれない。一人娘の前途が大きくゆがめられたことの
悔恨で、アキエは病的に潔癖症になる(男が汚いと思っている?)。
トシオはヤサカが蛍に何かしたから、はっきりと彼を憎めてちょっと喜んでいるようにも見えました。
自分の罪を隠してもらっている罪悪感の方がより居心地が悪そうでした。わかるかもと思いました。
隠したい気持ちがあるからこうじくんをどう捉えるかも違う訳で。
いろんな解釈ができて、重層的と言いましょうか。
とにかく不穏に震えつつも見入ったのでした。
ラストは蛍とこうじくんだけが死んで終わっている夫婦だけが生き残ったのだとすれば、ちょっと酷すぎよと思います。どっちかわからなかったのですがね。
重たい…
ハリウッド好きとしては、とても重たい作品だけど…浅野忠信さんの裏と表の強弱が素晴らしかったし、筒井さんの色気と生活臭の強弱も素晴らしかったです。筒井真理子さんってこんなに演技が上手くて綺麗だっけと思いましたよ。なんつーか、やましいことをしたらいけないよ。って言う作品だ。
淵レベルじゃない
妻にそっけない夫と寄り添おうとする妻。
旧友が住み込みで働く事すら相談しない夫に腹を立てる妻。
子供が旧友と仲良くなり、妻は旧友と会話を重ねると共に、家庭内の空気も明るくなる。
重苦しい空気が軽くなる。
理想の家族の形に見えてくる。
そして事件が起こると空気はもちろん変わる。
そして最初と真逆になる。
明るい夫と笑顔も見せずやつれる妻。
この真逆になる流れがとてもリアルだった。
家族の空気なんて簡単に変えられる。
何かがきっかけで簡単に変わる。
大きな事件はなくとも新しい風を入れることで家庭内の環境は変わる。
そう感じさせられる作品だった。
家庭の絆の脆さとどこか危険な香り。
そしてあの曲が頭から離れない。
人には勧められないけど観ておいてよかった。
じわ、じわ、じわっと寄ってくるカメラ、じわ過ぎてその効果が必要かどうか疑問。
全編、異様に長く感じさせられました。もう少し短くできないか?というプロデューサーさんはいなかったのか?
かといって綿密丁寧とも思えず、金属加工の場面と蘇生措置の作りもの感が特に際立ちました。
筒井さんが特にすばらしく、浅野忠信さんの役作りもさすがで古舘寛治さんの胡散臭さもいつも通りだっただけに残念。
観る人に何を伝えたかったのか、どんなことを感じてもらいたかったのかわからなかった。
この期に及んで
深田監督『歓待』『さようなら』も面白かったけど、本作、肚を据えた感じがして、すんごく面白かったです。
家族とか、友情とか、そういう共同体を一切信じてない感じが振り切ってて良かったです。
一切信じてないというより、信じてないのに共同体が成立しているように振る舞う気持ち悪さ…例えば古舘寛治さんのセリフ「おれたちは本当の家族になれた」…などを描いているのが面白かったなあと。
古舘寛治さんホントに気持ち悪かったですが、家族のかすかな絆を探る太賀さんは気持ち悪くなかったです。彼は本気で探しているわけだから。そういう強弱が良かったです。
妻役の筒井真理子さんが走り出すシーンが印象的で。あそこは、子どものためでも夫のためでも信仰のためでもなく、ただ単に好きな男が見つかったかも…と走り出す。恋のせいでどん底に落とされているのに。
この期に及んで、恋かよ。と思いました。
その筒井真理子さんが美しかったです。アンナ・カレーニナとか、『浮き雲』のゆき子とか、そういう古典を彷彿とさせるような美しさでした。
傑作だ
傑作なんだよ。でも、どこがどう良いのか解かんないの。そこが凄いよね。
浅野忠信があんな感じで家に来たらさ、そりゃ筒井真理子じゃなくても惹かれるよ。そして筒井さんの恋する女っぷり。自分の存在で、あんな風になってくれる女の人がいたら嬉しくなっちゃうね。
後半はズドーンと来て「ここに主題があるんだ」と思って、なんか解った気もするけど、解かんないの。そこが凄いよね。
心に響かなかった・・・
「寅さん」が出演者全て「善い人」なら本作は全て「悪い人」か。(蛍は別)
それがテーマかも知れぬが・・・救われない後味、特にラスト。
心に響かなかった理由
(1)予測不可の展開もあったが先が読めるシーンが所々あり残念
(ミエミエの伏線布石はあざとい)
・序盤蛍の後ろ姿をジッと見る八坂・・・この娘に何かやる
・必要以上に八坂に近づく章江・・・この二人に何か起こる
・孝司が描く蛍の画の妙な色使い・・・蛍に何かやる
(2)共感=「あるある」「わかるわかる」だがそれが無い
・いくら夫の旧友とはいえ現れた日から同居させる?
・いかにも「ムショ帰り」の所作(歩き方、礼、食べ方)は不自然
・八坂似の写真、鮮明なのに後姿だけ?せめて横顔くらい撮れるハズ
あげく追跡しピアノを教える姿までソックリの演出はやり過ぎ
(3)そもそも八坂(と利雄)の前科内容は?それによって二人の見方がかなり違ってくる。(利雄の「足を押さえていただけだ」など無意味なセリフ)
※8年後の蛍役の女優に障害者だけ演じさせず章江の空想シーンで健常な姿を映したのは監督の気配り? などと余計な気を回させる演出不要
※観賞後書店で原作を見かけたのでラストの4,5ページサッと目を通したが
映画とは全く異なる展開にビックリ!
この通りのほうがまだ良かったのに、と感じたがもちろん作者は了承したのでしょうね・・・
もう淵に立ちたくない
とてもホラーな一本
そしてとてもシュールな一本
中盤からドキドキが止まらない。疲れます。
まさにずっと淵に立たされてる様な、不安感、恐怖感がつきまとう。
浅野忠信怖いわ。
筒井真理子の演技凄い。
絶望の淵。
一見平凡で平和に暮らしていたはずの家族が、ある男の出現
によって徐々に破壊されていく。冒頭から居心地の悪さだけ
強調された不穏な描写が続くが、男の素性が明らかになった
瞬間に見せる浅野の表情がエラく怖い。夫が事情を明かさぬ
まま勝手に居候させることに異を唱える妻も娘も、やがて男
の礼儀正しく親切な術中に嵌り、その後の不幸を呼びよせる
ことになるのがやるせない。もし自分が妻の立場だったなら
どうしただろう…と後悔先に立たずの精神疲労と老いぶりが
見事な筒井の化け姿に背筋が凍る。これは耐性ホラー映画だ。
男の目的は最初からそういうことだったのだろうか、或いは
元々の潜在的要素なのだろうか、様々な思いが脳裏を巡って
どうかこれ以上…と思う後半も意外で容赦のない展開が続く。
観客まで絶望の淵に立たされてしまう不条理を味わえる作品。
(夫の過去、妻の秘密、何をどうすれば良かったんでしょうか)
娘の「行ってきます」に応えるお父さん。妻の「行ってきます」には無反...
娘の「行ってきます」に応えるお父さん。妻の「行ってきます」には無反応な夫。
特別幸せそうでも特別不幸でもなさそうな平凡な家族の中に、殺人罪で服役していた夫の古い友人がザワザワって感じで入ってきた。
少し穏やかになったと思ったら突然嵐になって悲惨な爪痕を残して去っていった。それでも家族の日常は過ぎていく。もしもあの時って後悔と罪と罰、 復讐を背負って。
とにかく重たい内容だけど、役者陣が見事に演じてます。特に筒井真理子の歳の取り方がリアルで気持ちの変化が痛いほど伝わりました。役作り凄いです。
筒井真理子を観る映画。
重い。
しかも観終わった後、
消化するのに
かなり時間がかかるくらいに
重い。
誰も救われないエンディング。
間違っても気軽に
観に行ける映画ではない。
「怒り」のレビューにも書いたが
「怒り」は
「観て欲しい」とは思えない映画だったが
「観てよかった」と思える映画だった。
「淵に立つ」はどうだろう。
正直、どちらでもない。
でも心の中の
奥の方をぎゅっと
握りしめられる
そんな映画だった
オープンングの
オルガンの音と
メトロノームの音。
その音に合わせての
タイトル表示。
オルガンは
その音色と主に
鍵盤を押す打鍵音まで
聞こえてくる。
そこが妙に生々しかった。
浅野忠信。
この人の演技って
上手いんだろうか?
下手ウマっていうか。
感情を殺したような演技。
抑揚もあまりなく
棒読みに近い。
でもそれが
八坂を表しているのか?
白と赤の対比。
言わんとしてることは
わかるのだが。
ちょっと露骨過ぎないだろうか?
古舘寛治。
この人の声がすごく好き。
台詞回しも好き。
リーガルハイでの
頼りないコメディっぽい演技しか
知らなかったから
驚きつつ楽しめた。
太賀。
この人の演技もすごく好き。
だけど、どうしても
「ゆとりですが何か?」
のうざい後輩役がチラついて(^^;
最後まで良い奴で安心した。
もし、八坂から送り込まれた
第二の刺客だったらどうしようと
最後までハラハラした。
利雄ににいきなり
平手を食らうシーン。
監督の真意に関係なく
思いっきり爆笑してしまった。
多分演出の真意とは
違うんだろうけど。
観客4人全員爆笑してた(^^;
そして何と言っても
筒井真理子。
この映画はこの女優さんに尽きる。
かなり以前から
ドラマやCMでお見かけしていては
「綺麗な人だなぁ」と思ってた人。
この人が出てなかったら
この作品はあと
星2つくらい少なかった。
妖艶な魅力はさることながら
カメレオンばりの役作りには驚いた。
3週間で体重を13キロ増やしての
時間経過の表現。凄い。
「あれから8年後・・・」
なんてテロップは全く必要なかった。
家族みんなで行った川辺。
八坂と二人っきりになった
森の奥でのキスシーンは
今までの映画のキスシーンの中で
トップ3に入るくらい
リアルで綺麗で、猥褻だった。
後ろから八坂が
躊躇いながら近づく。
一瞬ビクッとなるが
瞬間的に八坂を受け入れる章江。
このシーンがひどく生々しくて
今も脳裏に焼き付いて離れない。
映画は最近見始めた私。
基本はテレビ大好きの私。
そんな私にとって
いつもテレビに出てた
気なる俳優さんを
スクリーンで発見できる。
そんな喜びを再確認できた
映画でした。
浅野忠信ではなく
筒井真理子を観る映画です。
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