「I'm starting with the man in the mirror. まさか万人橋に泣かされるとは…😭」レゴバットマン ザ・ムービー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
I'm starting with the man in the mirror. まさか万人橋に泣かされるとは…😭
レゴブロックの世界で巻き起こる大騒動を描いたアドベンチャー・コメディアニメ『レゴ(R)ムービー』シリーズの第2作目にして、前作の登場キャラクター・バットマンを主人公に据えたスピンオフ作品。
自己中でナルシストなスーパーヒーロー・バットマンと、そんな彼に執着する宿敵ジョーカー。いつものように追いかけっこをしていた2人だが、バットマンの不用意な発言がジョーカーの嫉妬心に火をつけてしまう…。
バットマンの執事、アルフレッド・ペニーワースの声を演じるのは『ハリー・ポッター』シリーズや『007』シリーズの、レジェンド俳優レイフ・ファインズ。
バットマンに固執する宿敵、ジョーカーの声を演じるのは『ハングオーバー!』シリーズや『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のザック・ガリフィアナキス。
ゴッサムに蔓延るヴィランの1人、キャットウーマンの声を演じるのは『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のゾーイ・クラヴィッツ。
バットマンがライバル視するスーパーヒーロー、スーパーマンの声を演じるのは『ホワイトハウス・ダウン』『ヘイトフル・エイト』のチャニング・テイタム。
スーパーヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」のメンバーの1人、グリーン・ランタンの声を演じるのは『ナイト ミュージアム2』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のジョナ・ヒル。
バットマンの日本語吹き替えを担当するのは山寺宏一。
まず初めに。
本作は『LEGO(R)ムービー』(2014)の主要人物であるバットマンを主人公に据えたスピンオフではありますが、物語上の繋がりはありません。前作を観ていなくても全く問題なし。
ただ、『LEGO』のバットマンは性格がかなりファンキー…というか超問題児。結局本作でバットマンがやってるのは自分の起こした失態の尻拭いですからね。ほんまコイツいい加減にせえよ…😡
他作品でも大概要注意人物として描かれるバットマンだが本作は別格。バートン版やノーラン版、DCEU版しか知らない人がいきなり本作を観たらかなりビックリしちゃうかも知れないので、やはり前作を観ておくに越したことはない。
なお、レゴブロックのバットマンが活躍する映画には、本作に先行して『LEGO(R)バットマン:ザ・ムービー <ヒーロー大集合>』(2013)というものがありますが、どうやらこれは本作とは繋がりのない作品の模様。観てないからわかんないけど。
レゴのアニメは色んな種類の作品が滅茶苦茶たくさんあって、どれとどれが繋がってるのか正直よくわからん💦
レゴブロックのアニメ化、しかも題材は「バットマン」。こう聞くと完全に子供向けのアニメだと勘違いしてしまうが、本作の内容はバリバリにハードコア。
「脱構築」という言葉はこの作品の為にある!と言い切って良いほど、とにかく既存のルールをガン無視した問題作である。
圧倒的な情報量が画面に詰め込まれている上、怒涛の如くメタネタが投入されている。さらに、誰も知らないであろう超マニアックなヴィラン&バットマンとは全く無関係なワーナー作品のキャラクターがどしどし登場してくるので、観客はとてつもなくカオティックな映像体験を強いられることになる。
まさか伝説の「バットサメ避けスプレー」が再びスクリーンに甦るとは…。バットマンvsヴォルデモートも見られるし、世の中何があるかわからない。
はちゃめちゃなコメディアニメなので子供も楽しめるだろうが、実はバットマンオタクの大きなお友達向けに作られている本作。私はまんまと楽しんでしまいましたよ♪
バットマン&ロビンによる〈ダイナミックデュオ〉の活躍、映像作品ではかなり久しぶりに観た気がする。
この2人が協力して戦うとき、効果音が文字になって飛び出してくるのが最高にアガる!やっぱりバットマンと言えば「POW!」だよね。
飛び出す効果音やメタネタの数々、圧倒的な画面情報量から、鑑賞中何度も『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)のことが頭をよぎったが、実は本作の方が『スパイダーバース』よりも先なんですよね。両作品ともハリウッドが誇るダイナミックデュオ、ロード&ミラーがプロデュースしているのだから似ていて当然っちゃ当然なのだが、その評価には随分と差がある気がする。
何だか『スパイダーバース』のことばっかり持て囃されるけど、この作品のこともちゃんと評価してあげてほしい。じゃないとそのうちバットマンがむくれちゃって、「スパイダーマンのば〜か」って言い出しちゃいますよ!
本作で掘り下げられるのはバットマンとジョーカーの共存関係について。ジョーカーはバットマンが居なければ成り立たず、バットマンもジョーカーが居なければ成り立たない。殺伐とした世界感だから見逃しがちだけど、基本的にこの2人はトムとジェリー、ルパンと銭形とおんなじようなもんなわけです。
それを提示しただけでもかなり攻めた姿勢だと思うんだけど、この作品はそこから更に掘り進める。
バットマンが足を踏み入れた鏡の間は、彼の鏡像をジョーカーとして映す。とどのつまり、バットマンとジョーカーはブルース・ウェインという1人の人間が分裂した姿であることが指し示されている訳です。
心の底では家族を求めながらも他者を寄せ付けないよう素顔を仮面で隠すバットマンと、傷つきやすいナイーブな心を狂気というメイクで覆い隠すジョーカー。鏡に映されたように、似ているが正反対な2人は共にブルース・ウェインの心の弱さが具現化した存在なのである。
この2人が手と手を取り合い和解するクライマックスシーンは、自己の弱さに向き合いそれを受け入れたということに他ならず、そのことが分裂する世界を繋ぎ止める=アイデンティティを確立する唯一の方法であると示唆している。
しかもバットマンとジョーカーはお互いのことを「嫌いだ」と告白しあう。自分の嫌いなところを無理に好きになる必要はない。嫌いなものは嫌いなまま受け入れる、それで良いんだという作り手からの優しいメッセージについつい涙腺が緩くなってしまった…😢
やってることは「魁!!男塾」の万人橋と一緒なんだけどね。まさか万人橋で泣く時が来るとは思わなかった…。
バットマンとジョーカーの和解という、「バットマン」で絶対にやっちゃいけない事をやり切った本作。もうこれ最終回じゃん!!
バットマンという凝り固まった世界観を脱構築し、その上で一つの回答めいたものを提示してしまった本作。先にも述べた通り、本作は終始バットマンが自分の尻拭いをする物語である為、中盤ちょっと「今これ何を観させられてるの?」と言いたくなったりもするのだが、それを補って尚余りある強いメッセージ性とシンプルな面白さ。バットマン映画としては『ダークナイト』(2008)以来の傑作だと言い切って良いと思います!✨
※最後に日本語吹き替えについて一つ。
バットマンを演じるのは前作から引き続き山寺宏一。言うまでもない事だが、山ちゃんの演技は言う事なし。コメディシーンの多い作品であるからこそ、山ちゃんのコメディアンとしての才能が光る!見事!!
前作とはキャラこそ違うものの、ヒロイン枠は引き続き沢城みゆきが担当。こちらも安定感抜群である。
問題はロビン。担当声優はまさかの小島よしお💦キャスティング担当は何考えてんだ…。
とは言え、実は演技自体は嫌いじゃない。ロビンのウザいけど純真みたいな性格に小島よしおの演技はマッチしていた。良い意味で、本業声優じゃ絶対に出来ない演技だと思った。
ただ…。合間合間に挟み込まれる小島よしおの持ちギャグ、「オッパッピー」とか「そんなの関係ねぇ」とか、が耳障りすぎて…。何度音声を切り替えようと思った事か。山ちゃんボイスのバットマンが観たいから頑張ったものの、もし山ちゃんじゃ無かったら速攻切り替えてた。
これは小島よしおが悪いのではない、悪いのはギャグを挟み込めば面白くなると思い込んだバカな日本語版台本を書いたやつ。今回の吹き替え翻訳したやつはヘビピエロに襲われてしまえ!💢