ブランカとギター弾き

劇場公開日:

ブランカとギター弾き

解説

写真家として活躍する長谷井宏紀がイタリア製作映画として手がけた監督デビュー作で、フィリピンを舞台に、孤児の少女と盲目のギター弾きの旅を描いたロードムービー。マニラのスラムに暮らす孤児のブランカは、母親を金で買うことを思いつき、盲目のギター弾きピーターと旅に出る。ピーターから得意な歌でお金を稼ぐことを教わったブランカは、レストランで歌う仕事を得てお金を稼ぎ、計画は順調に進んでいるかに思えた。しかし、そんな彼女の身に思いもよらぬ危険が迫っていた。長谷井の第一回長編監督作品となる本作は日本人初となるベネチア・ビエンナーレ、ベネチア国際映画祭の出資で製作され、第72回ベネチア国際映画祭でソッリーゾ・ディベルソ賞、マジックランタン賞を受賞。

2015年製作/77分/PG12/イタリア
原題または英題:Blanka
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2017年7月29日

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映画レビュー

4.0少しずつ、少しずつ幸せになっていく

2020年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

最初、チープな仕上がりに見えた映像の中から、次第に美しさが滲み出てくるかのような、そんな映画でした。しかめ面で小銭をくすねていたブランカが、徐々に愛らしく、美しい笑顔をみせるようになる様を、じんわりと味わう、そんな心地の良い映画だったと思います。

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猿田猿太郎

4.0スラムを舞台にやさしさ描く、瑞々しい作品

2017年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

フィリピンのスラムを舞台にした作品だが、悲惨さを感じさせない。前向きでやさしいエネルギーに満ち溢れた作品。同日公開の「ローサは密告された」もフィリピンのスラムを描いているが、麻薬に汚染されるシビアな視点を持ったあちらとは対称的だ。

孤児のブランカはお母さんを金で買うことを思いつき、盲目のギター弾きのピーターとともに路上で歌って金を稼ぐ。本当に欲しいのは愛や信頼。それをお金で買えるかどうか。お金はなくてもピーターと親子のような絆を結べていること自体が、ひとつの答えになっている。

ブランカ役のサイデル他、出演者がどれもリアルで素晴らしい。ストリートで暮らす男の子2人も実際にスラムで暮らす少年だそうだ。

瑞々しさとストリートの雑多なパワーに溢れた美しい作品だった。さすがカメラマン出身の監督だけあって絵心もある。

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杉本穂高

3.5透明感あふれる映像に浮かび上がる信頼と絆

2017年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ファーストカットから路上の臨場感が伝わってくる。その雑踏に小さく少女を見つけた瞬間、ああ彼女が主人公なのだなと確信した。可愛らしさとともに何か別の言いようのない切実な感情を胸に抱いている彼女。それが何なのかは自分自身、わかっていない。おそらくこれはその想いや欠けたものを探す旅なのだろう。

一方の盲目のギター弾きは、彼が現れた瞬間、その正体は神様なのではないか、と感じてしまうほど不思議な存在に思える。彼はそのやわらかな存在で少女ブランカを常に肯定してくれる存在。二人が公園のベンチで、ギターの音色と歌声を調和させる時、夕暮れ時の路上に穏やかな風が吹いたように思えた。

どこにでも罠がいっぱいで、悪い奴らもいっぱいいる。それもまた路上の日常。だが、そんな過酷な環境にあったとしても、本作は自ずと信頼や絆といったものを丁寧に、優しく浮かび上がらせていく。その描き方にとても好感が持てる作品であった。

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牛津厚信

5.0この映画の「カリノサ」を世界中に広めたいな。

2023年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

幸せ

萌える

とっても切なくなる、それでいて心に灯がともるような、温かくなる歌です。
 夜空に耳を澄ませながら聞いていたいです。
 子どもにも聴かせたいです。NHKのみんなの歌でも取り上げてほしいけれど、タガログ語だと子どもに歌詞が伝わらないですね。

ブランカ(演じているのはYoutubeの歌姫)の声がいい。ピーターが奏でるギターがいい。
 そして、監督が作詞したという詩がいい(日本語字幕にも流れるし、この映画の公式サイトにもアップされている)。
 この映画に貫かれているテーマ?がつまっているように思います。

「なんで大人は子どもを買えて、子どもは大人を買えないの?」
 さまざまな社会問題の核心をついた一言。
 親ガチャ。子どもは親を選べない。親・大人によって、子どもの生きざままで決まってしまうやるせない世の中。

そんな中で、少しでも幸せになろうとするブランカ。
 紆余曲折あり、ブランカが他人に対してやったことが自分に跳ね返ってくるようなこともあり、”危険”の中に身をゆだねそうにもなり…。
 その途中で知り合うピーター、セバスチャン、ラウル、他の人々。
 ピーターの生き方、ラウルの生き方。
 ブランカの、セバスチャンの望み、決断。
 過酷な環境を嘆き流されるだけなのか、それとも…。

柔らかいベッド、お腹を空かせる心配をしないでよい環境、清潔な衣服。
自分にそっと寄り添ってくれる人。”仕事”としてではなく、”ペット”や”アクセサリーやトロフィー”のようにではなく、”私”を”私”として、他に取り換えられない存在としてみてくれる人。
「お金で買えないものもあるんだよ」
 本当に…。
 そして、その人と一緒に自分を信じて夢をみれば、そこはオアシスになる。

フィリピンをはじめとして世界各国には、ブランカやセバスチャン、ラウルのようなストリート・チルドレンはたくさんあふれています。
 けれど、これは別の国の話? 日本にも、ブランカたちとは状況は違いますが路上にたむろする子どもはたくさんいて、「子ども食堂」を必要とするほど、ピーターのような存在が欠けている。

Unicefでの試写会で鑑賞。
 上映後の、監督と難民の方々への取材を続けていらっしゃる方とのティーチインでは、映画の話や、監督やもう一方の方が訪れた国やら様々なお話がきけました。
 仕事や生き方への感覚の違いなんかも語られていました。日本人が失ってしまったものと、失うくらい働いたから今の繁栄・(安心ではなく)安全があるのだろうなと、よく言われることですが、改めて思いました。
 欲張りだから本当は全部欲しいけれど、ブランカのように、本当に自分にとって大切なものを得るために捨てなきゃいけないものがあるのだと思います。
 監督がどうしてもピーターに言わせたかったという「盲人ばかりだったら戦争なんて起こらない(思い出し引用)」とともに、心に刻まれました。

そんな風に、細部や、この映画の背景・向こう側にまで目を凝らすと、いろいろと詰まった映画。
 けれども、予告に使われている評のように”おとぎ話”のような、あったかくなる映画。
 監督の、バックパッカーとして旅した国々や、長年フィリピンのスラムでスラムの人々と暮らした思いが詰まった映画。ピーター氏はあてがき。この人がいなければ映画にならないと、1か月以上探し回って出演してもらったとか。だからリアル。安易でドラマチックな解決策を描きません。それでもの、彼らにとっての”灯り”が描かれます。ラウルに対しても、愛おしむ視線にあふれています。その目線が温かい。

ブランカを演じたサイデルちゃんが魅力的。
 最初、世をひがんでいる表情から徐々に変わっていく姿がまぶしい。大変失礼なことに最初は、彼女も、ジョマル君(セバスチャン役)やレイモンド君(ラウル役)のように路上でスカウトされたのかと思ってしまったくらい迫力がありました。

さらに、ピーター氏の存在感がすごい。公式サイトによるとピーター氏はモテたとありますが、この映画を見るとわかる気がします。
 いつまでも彼のギターが聴きたかったです。ピーター氏に合掌。安らかに。

加えて、映像がきれいです。さすがは写真家。

オレンジ色を身にまとってください。
きっと、心に、ほどよい太陽が灯ります。

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とみいじょん

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