海よりもまだ深くのレビュー・感想・評価
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日常のあまりの自然さにニヤニヤする
是枝監督の映画は、
いつも見始めて数分で、
「あぁ、こういう人いるいる」
「いやぁそうそう、そういう時あるー!!」
の連続で、
どこでこんなにごく普通のありふれた家庭の一コマを
切り取ってきたんだろう、と感心するくらい
そこにみんなの日常が凝縮されている。
主人公のヘタレ具合や、
でもその中に自分の一部を重ね合わせてしまうところ。
そんな周到な演出になっているから
派手さはないのに多くの人を惹きつける作品に
なっているんだろう、と思う。
幸せになるには、
何かを手放さなきゃいけない、か。
じんわり、耳に痛いお言葉です。
やっぱり
なにもないのが
さすがです。
んー深いね
「あれ」、「これ」が映画の核心
負けるもんかー
初見の感想です。
感受性が強いもので、製作委員会のかたがたに、「君たちこの映画に共感するでしょ、でも人生捨てたものじゃないから。ままならないこともあるけど、幸せ見つけて今を大事に、前を向いて歩こう、ねっねっ」と言われたような気がして、
余計なお世話じゃバカやろう!あたしゃビックになるぜ!ったくよう!
と力が湧いてきました。
いや。ほんとに、実は好きじゃないです。
なんか余計な手垢がつきすぎてというか、是枝監督の「市井の人演出」が心なしかその路線でクドくなってきたような気がしました。
抑圧された場面が続き、台風一過ですっきりするという構成は爽やかなんだけど、これをメジャーでやる意義は…とか考えると、お偉いさんにうまく使われたのではという邪推が生まれ、正直純粋に楽しめませんでした。
女優樹木希林は相変わらず持っていきますが。小林聡美も。
実家に帰ったような懐かしさ
覚えてるよ、忘れないよ。
派手な映像や二転三転するシナリオで惹き付ける映画
というのも当然好きなのだけど、映像も物語もシンプル
なのにスクリーンに釘付けにされる映画ってのが
世の中にはある訳で、それって大予算組んで制作
された映画よりも物凄い事かも知れないと時折思う訳で。
本作もそんな映画。
巨大宇宙船がアメリカ東海岸全域を破壊している間、
こちらはカチカチに凍ったカルピスシャーベットを
スプーンで砕く事に苦心してるてな具合のスケール感。
昨年の同監督作『海街diary』もハデな映画とは
到底言い難いが、本作はさらに小規模だ。
にもかかわらず、上映中こちらの目は釘付けにされてしまう。
それは何故かと考えたら、この映画に登場する人々に
シンパシーを抱かずにはいられないからだと思う。
彼等の行き先が気になってしようがないからだと思う。
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「どうしてこうなっちゃったんだろう?」
色んな人物がそう口にした。
大人になった自分は、もっと立派な人間に、
もっと良い人間になってると思ったのに。
大きな夢を抱く事は誰でも出来るけど、
それを実現できるのはほんの一握り。
大成する人は才能だけでなく、日々の努力を
惜しまぬ精神と運とを兼ね備えた人だったりする。
主人公リョウタのように多少の才能があってもうまく
いかないし、大抵の人はそんな才能すら与えられない。
モーツァルトになれずとも毎日努力さえすれば
サリエリくらいにまでにはなれるかもだが、
『1日1日を大切に』だなんて啓蒙じみた言葉を
何百何千回と聞いてきても、リョウタと同様、
やっぱり流されるままに生きてる日常。
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だがそのことをそんなに深刻に考えなくても、
これこうして僕らは生きている。むしろリョウタの
母のように、下手に執着し過ぎないから生きられる。
「あたしは海よりも深く人を愛したことなんか
ないけどさ、それでも楽しく生きていけるのよ」
そう語った彼女の言葉は真を突いていると思う。
“愛してる”だなんて、そんな大袈裟に言うものでも
思うものでもないのかも知れないし、始終そんな
重い心を抱えていたら、自分が生きてゆけなくなる。
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だけど、
あの母でさえも“楽しく生きて”見えない時があった。
どうしてこんなことになっちゃったのかね?と、
息子の嫁に声を震わせながら語ったあの瞬間だ。
ふだん忘れていても、“愛してる”という気持ちは、
ちょうど塗り重ねられた油絵の具のように、
時々ふっとその顔を覗かせる。
息子の離婚に心を痛める母、
息子の本をほうぼうに自慢していた亡き父、
本の話の時だけほんの僅かに表情の和らぐ妻、
そして、現在進行形で息子を愛するリョウタ。
公園の大ダコ。あの大ダコはあの夜、海の底にいたのだろう。
深さを測れる方法は無いけど、リョウタは息子を深く愛してる。
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けど、ごく当たり前の話、人間はいつか消える。
どれだけ大事に想っていた、大事に想われていたと、
後から気付こうが気付くまいが、人は消える。
もうすぐ私は死ぬだろう。
そんな言葉を、いつも冗談ばかり言っている
親から聞くと、何だかドキッとしてしまう。
それで笑って誤魔化す。バカなこと言うなよと。
当たり前に思えるものが信じられないほどあっさりと
消えてしまう事を、頭の中では誰もが理解している。
だが、それを本気で考える事は無意識に避けてしまう。
だって、それってものすごく怖い事だから。
それでも時にはその事実を痛感させられる時があるのだ。
当たり前のように思っていたものが、自分の前から
消えかけてしまっていることに気付く瞬間があるのだ。
終盤、階上から手を振る母の姿に、目が潤むのは何故だろう。
並んで去っていく妻と子の姿を見つめ続けるのは何故だろう。
この瞬間を目に焼き付けねばと強く願うのは何故だろう。
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日々の生活に流されながらも、
「これは忘れてはいけない瞬間だ」と気付く時がある。
それなら、メモでも何でもいい。心に留めておかなくては。
覚えてるよ、忘れないよ。
優しいエンドロールの歌声に、
僕の覚えている事は、忘れたくない事は、
一体何だろうかと考える。
<2016.05.21鑑賞>
どこで人生狂ったのか…
死から始まる物語、終わりは無い
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